2025.06.11
社員のモチベーション低下や離職率の増加は、企業の成長に直結する深刻な課題であり、この状況への対策として注目を集めているのが「フォローアップ研修」です。
フォローアップ研修は、単発の研修だけで終わらせるのではなく、継続的なサポートを行うことで社員一人ひとりの学びを確実に成果へとつなげていく施策です。
本記事では、フォローアップ研修の概要、目的、実施するタイミングや方法について詳しく解説し、企業が直面する人材育成の課題に対する解決策をご紹介します。
フォローアップ研修とは、入社時や初期研修で得た知識・スキルが実務でどのように活かされているかを振り返り、必要な視点や行動を再確認しながら実践力を高めていく研修です。
キャリア形成やビジネスマナー、コミュニケーションなどの各種研修後に一定期間をおいて実施され、参加者は自身の成長や課題を見直し、新たな目標を設定する機会を得られます。
現場での課題解決や行動改善に結びつける実践的な内容で構成されており、参加者同士の経験共有を通じて、職場内の連携強化や学びの定着にも効果が期待できます。
フォローアップ研修の目的は、日々の業務を振り返ることで、参加者自身が研修内容をどう応用しているか、またどの部分に課題があるのかを把握することにあります。
企業にとっては、研修内容が現場で機能しているかを見直す機会となり、次回の研修プログラムに新たな課題や改善点を反映させることができます。
フォローアップ研修は、単なる復習ではありません。
研修が実務に活きているかを見極めることで、社員一人ひとりの成長支援だけでなく、企業全体の人材育成方針の再設計にも役立ちます。
実際のフォローアップ研修は、新入社員から管理職、専門職、外国人社員や女性社員まで幅広い対象者を想定しています。
ここでは、対象者別に概要をご紹介します。
新入社員および若手社員を対象としたフォローアップ研修は、キャリア段階に応じて内容を設計し、モチベーションの向上や早期育成を目指します。
新入社員はビジネスマナーや基本業務の再確認を通じて知識の定着を図り、若手社員は実務経験を踏まえたスキルの見直しや、課題対応を通じて主体性を育てることが主な目的です。
いずれも、ある程度の実務を経験した後に実施されるため、体験と学びを結びつけPDCAを回しながら理解を深められることが期待できます。
中堅社員のフォローアップ研修は、管理職見習いとして、実務経験から見えてきた課題に対し、必要なスキルや知識を改めて強化することを目的としています。
研修では、専門性の深化、リーダーシップや育成スキル・マネジメント力の向上、他部門との連携方法などを学ぶことで、より広い視野を持って業務に取り組むきっかけを得られます。
こうした学びを通じて、自身の役割と責任を再確認し、組織への貢献の幅をさらに広げていくことを目指します。
管理職向けのフォローアップ研修は、昇進時の管理職研修後に実施され、マネジメントスキルや組織運営の知識を実践経験と結びつけて再確認し、定着を図ることを目的としています。
特に重視されるのは、リーダーシップ、コミュニケーション、コーチングといったヒューマンスキルの強化であり、戦略的な意思決定や変革管理に対応できる視点も養われます。
この研修で管理職は、自身のマネジメントスタイルを客観的に見直すと同時に、部下を導く立場としての役割を再認識し、さらなる組織全体の成果向上を目指します。
専門職向けのフォローアップ研修は、実務経験を持つ専門家が最新の知識や技術を習得し、専門性をさらに高めることを目的としています。
研修では、分野ごとの最新動向や技術のアップデートに加え、他社の成功例や失敗例を用いたケーススタディを通じて、実務で活かせる応用力や問題解決力、判断力を養います。
参加者同士の知識共有やスキルの向上を図ることで、継続的な学びが促され、組織や業界への貢献力を高めることを目指します。
外国人社員向けのフォローアップ研修は、日本語やビジネスマナー、企業文化への理解を深め、コミュニケーションのズレを減らすことを目的としています。
研修を実施する際は、言語サポートや文化的背景への配慮、個別対応、オープンなコミュニケーションの場づくりなど、充実したサポート体制の整備が必要となります。
この研修によって、外国人社員が日本の慣習を理解し、職場環境に対する不安を軽減するなど、丁寧なフォローにより、定着率の向上や人材の流出防止も期待されます。
女性社員向けの研修は、生理や更年期など女性特有の健康に関する理解を深める機会を提供するとともに、出産や育児といったライフイベントを見据えたキャリア形成を支援し、仕事とプライベートの両立やモチベーションの維持に役立つ具体的なアドバイスを目的としています。
この研修では、自身の価値観やライフスタイルに合った働き方を考え、将来に向けた現実的なキャリアプランを描く力を養います。ライフステージの変化に臨機応変かつ前向きに対応しながら、自分らしいキャリアを築いていく視点を身につけることを目指します。
フォローアップ研修の実施時期は、研修直後だけでなく、数カ月から1年程度おいて行うケースもあります。
ここでは研修から3カ月後、6カ月後、1年後に分けてご紹介します。
研修から3カ月後に実施されるフォローアップ研修は、前回の研修内容の振り返りが主な目的です。
特に新入社員を対象とした場合、入社から約3カ月目の業務にある程度慣れ始めたタイミングで実施されることが多く、初期研修で学んだ知識やスキルが職場でどう活かされているかを確認する機会となります。
入社直後の忙しさの中では自分の成長や課題を客観的に捉えるのが難しいため、3カ月目という節目で学びを整理し直すことで理解が深まりやすくなります。
事前に設定した目標の達成度や現在の課題を確認し、知識やスキルの定着を図ります。
また、業務を通じて生じた疑問や悩みを同期と共有・解消し、不安を軽減することで早期離職を防ぐ効果も期待できます。
一般的に研修から半年が経過すると、初期研修で学んだ内容の活用状況に個人差が出始め、業務に慣れる一方でモチベーションが低下しやすくなる傾向にあります。
この時期にフォローアップ研修を実施することで、半年間の業務を振り返り、自分の成長や課題を客観的に確認できます。
初期に設定した目標の達成度を見直し、不足しているスキルや改善点を明確にすることで、次のステップに向けた行動につなげます。
半年後のフォローアップ研修は、新たな目標を設定し、自己成長への意識を高める再スタートの機会として活用され、モチベーションの再構築にも効果が期待できます。
研修から1年が経過したタイミングで実施されるフォローアップ研修は、これまでの業務経験を振り返るとともに、翌年に向けた目標設定の意識を高める大切な機会です。
この時期には、自己評価を通じて自身の成長や課題を客観的に見直し、今後のキャリアプランや必要なスキル・知識の整理が重視されます。
たとえば、1年間の実務を経験した若手社員は、業務の全体像を理解し、初回研修のときよりも具体的に自身の変化を把握できるようになっています。
また、後輩を支える立場を意識し始める時期でもあり、コミュニケーション力やチームマネジメントの基礎を学ぶ内容が、この時期の研修で求められることもあります。
さらに、同期との成果発表や意見交換を通じて、他者の成長や工夫に触れることで、自信を深めると同時に、新たな目標に向けたモチベーションの向上が期待できます。
ここでは、新入社員から若手社員を例に、フォローアップ研修で実施されるプログラム例を3つご紹介します。
ビジネスマナーのフォローアップ研修では、社会人として基本となる振る舞いや言葉遣いを再確認します。
身だしなみ、挨拶、電話応対、敬語など、初期研修で学んだ内容が現場で正しく実践されているかをチェックすることが主な目的です。
入社後は業務に追われ自己流の対応になりがちなため、一定期間経過した後にあらためて見直すことでマナーの定着を高め、より信頼される社会人としての振る舞いが身につきます。
フォローアップ研修では、報・連・相(報告・連絡・相談)やPDCAサイクルの実践方法、傾聴力、社内・社外の人とのコミュニケーションスキルなど、業務を円滑に進めるうえで欠かせない基本スキルを再確認します。
これらは初期研修で理解していても、日々の業務に追われる中で自己流になってしまうことがあります。
この研修を通じて、正しい手順やポイントを再確認し、同期や同僚との意見交換から実践的な改善策を見つけ、業務の質を高める場となります。
フォローアップ研修では、現在の業務やスキルを客観的に見直し、将来を見据えたキャリアプランを具体的に描く機会を設けます。
一般的に入社から1〜2年目は業務に慣れ始める一方で、自身の将来像が漠然として不安を感じやすい時期でもあります。
こうした段階でキャリアについて考える時間を設けることで、今後必要となるスキルや目指すべき目標が明確になります。
自身に期待される役割と現状の課題を照らし合わせながら、今後の成長に向けた意欲を高めることが期待できます。
フォローアップ研修をどのように実施するかは、企業の規模や研修内容によって異なります。
ここでは、他社の研修サービスを活用する方法と、自社で行う方法の2つに分けてご紹介します。
フォローアップ研修をより効果的に実施する手段として、外部の研修サービスを活用する方法があります。
これらのサービスでは、研修後のフォローアッププログラムや評価指標があらかじめ整備されており、受講者が現場でどのように学びを実践しているかを具体的に把握しやすくなります。
研修内容に応じて費用は発生しますが、自社で研修を企画・運営するノウハウが不足している場合には、外部機関への委託を通じて、より専門的かつ効率的に研修を進められます。
自社でフォローアップ研修を実施する際には、厚生労働省が提供する「職業能力評価基準」を活用する方法があります 。
この基準は、業種や職種ごとに必要なスキルや知識を整理しており、キャリアマップや評価シートの作成に役立ちます。
評価項目を客観的に設定できるため、従業員の成長を支援することが可能 です。
また、実際に導入して成果を上げている企業事例も厚生労働省のサイトで紹介されている ため、コストを抑えつつ自社に合った研修設計が可能です 。
出典:厚生労働省「職業能力評価基準 」
「キャリアマップ、職業能力評価シート及び導入・活用マニュアルのダウンロード 」
「企業等の取り組み事例について 」
フォローアップ研修は、研修後の学びを職場に定着させ、従業員のモチベーションを保ち、離職を防ぐ仕組みとして活用されています。
実施のタイミングや対象者に合わせた内容設計を行うことで、知識やスキルが実務にしっかりと結びつき、個人の成長と組織のパフォーマンス向上の両立が図れます。
フェムナレッジでは、従業員のモチベーション向上に効果的な施策として、女性社員のキャリア支援制度をはじめとする人材育成や働き方に関する実践的な動画コンテンツやコラム記事を多数掲載しています。
動画による解説や専門家によるコラムなど、現場で役立つ情報をわかりやすく提供していますので、自社の研修設計や課題解決の参考として、ぜひご活用ください。
Mint+ フェムナレッジについての
お問い合わせはこちらから