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企業における健康相談とは?相談窓口の役割やメリットを解説

2025.06.18

日本では労働人口が年々減少しており、厚生労働省のデータによると中小企業の7割が人手不足に直面しています。今後は、従業員に長く安心して働いてもらうための企業の取り組みがより重要になってきます。
中でも注目されているのが「健康相談窓口」の設置です。心や体の悩みを相談できる場所を社内に設けることで、従業員の健康を守りながら企業全体の生産性向上にもつながると考えられています。
本記事では、健康相談窓口の目的や役割、法的な観点、導入メリットなどをわかりやすく解説していきます。

企業内における健康相談とは?

企業における健康相談とは、従業員の心身の不調や生活習慣、仕事の悩みなどに関する相談を受けるための体制を指します。ここでは、企業内における健康相談の目的や内容について、詳しく解説します。

企業内における健康相談の目的

健康相談窓口の設置は、従業員が安心して働ける環境を整えるうえで重要な取り組みです。従業員の健康に配慮する姿勢を示すことで、職場への満足度や信頼感が高まり、離職防止にもつながります。
近年は、企業の健康に対する意識も高まり、一部の企業では喫煙者の採用を見送ったり、勤務中の喫煙を禁止したりといった取り組みも見られるようになっています。これらも従業員の健康を守るための環境整備の一環です。
健康相談窓口は、こうした取り組みをさらに具体化する手段として有効であり、職場全体の健康意識の向上に役立ちます。

出典:厚生労働省「健康寿命をのばそう!アワード

「健康相談窓口」で相談できる内容

健康相談窓口では、体調不良やメンタルヘルスに関する相談をはじめとして、職場の人間関係やストレス、生活習慣の悩みなど、幅広い内容を取り扱っています。中には、長時間労働や業務負担の重さに関する相談も可能です。
日本では、過労死や長時間労働が深刻な社会問題として取り上げられています。こうした問題を未然に防ぐためにも、従業員が気軽に相談できる環境づくりが求められます。
また、労働基準法をはじめとする各種法令でも、従業員の安全と健康に対する配慮が求められており、相談体制の整備は重要なポイントのひとつです。

出典:厚生労働省「過労死等防止対策
   「労働基準関係法令違反に係る公表事案
   「長時間労働削減に向けた取組

従業員向けに「健康相談窓口」を設置するのは企業の義務?

健康相談窓口は、従業員の心と体の健康を守る大切な役割を果たします。
ここでは、法律で定められている企業の責任や、相談体制の整備が求められるケースについて解説します。

従業員の健康に配慮することが労働安全衛生法によって定められている

企業には、従業員の安全と健康を確保する責任があります。これは、労働安全衛生法によっても明確に示されています。
たとえば、同法第69条第1項では「事業者は、労働者に対する健康教育及び健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置を継続的かつ計画的に講ずるように努めなければならない」とされています。
つまり、健康相談窓口の設置そのものが義務というわけではありませんが、従業員の健康を守るための体制をつくる努力は、法律上でも求められているのです。従業員が安心して働ける環境をつくる一環として、健康相談窓口の整備は有効な手段といえるでしょう。

出典:「労働安全衛生法 | e-Gov 法令検索

従業員が50人を超える事業所において産業医の設置やストレスチェックなどが義務化されている

法律上、従業員が50人を超える事業所では、産業医の選任が義務づけられています。ここでの「事業所」とは、企業単位ではなく、実際の勤務地単位で判断されます。
また、同じく従業員50人以上の事業所では、年に1回のストレスチェックを実施することも義務化されています。この制度は、従業員のメンタルヘルス不調を早期に発見し、対応するためのものです。
これらの措置と併せて健康相談窓口を設けることで、心身両面から従業員を支える体制が整います。単に法律を守るだけでなく、従業員の働きやすさや会社への信頼にもつながるため、積極的な導入が望まれます。

出典:厚生労働省「産業医について
   「ストレスチェック実施義務対象 「常時50人以上の労働者を使用する事業場」

「健康相談窓口」を設置するメリット

健康相談窓口は、法律上の設置義務があるわけではありませんが、従業員にも企業にもさまざまなメリットがあるため、実際には多くの企業が自主的に導入を進めています。
ここでは、従業員側・企業側それぞれの利点について詳しく見ていきます。

従業員側のメリット

健康相談窓口は、従業員が心身の不調を気軽に相談できる場所です。相談しやすい環境が整っていると、働きやすさの向上にもつながります。

周りに知られずに相談できる

健康やメンタルの悩みは、周囲に知られたくないと感じる方が多いです。しかし、労働安全衛生法や刑法では、産業医には守秘義務が課されており、正当な理由なく個人情報を漏らした場合には罰則が設けられています。
そのため、安心してプライベートな相談ができる環境が整っており、気兼ねなく話すことができるのは大きな利点です。

出典:「労働安全衛生法 | e-Gov 法令検索
   「刑法 | e-Gov 法令検索

社内事情に詳しい人間に相談できる

社内に設置された健康相談窓口では、担当者が業務内容や職場環境にある程度精通しているため、実情に即した具体的なアドバイスが可能です。
一方、社外の相談窓口では業務内容まで把握していない場合も多く、実情に合った助言が得られにくいことがあります。社内だからこそ可能な「現場感覚のある対応」が、従業員の安心感にもつながります。

病院よりも気軽に相談できる

「少し疲れているけれど、病院に行くほどではない」と感じる場面でも、健康相談窓口なら気軽に相談できます。病院を受診するには時間や費用がかかるため、つい後回しになりがちですが、窓口での相談はそのハードルを下げてくれます。

こうした気軽な相談の機会が、重大な体調不良の予防や早期対応にもつながります。

結果にもとづくアドバイスがもらえる

年に一度の健康診断を受けた後、「気になる数値があるけれど、どうしたらいいかわからない」と感じる方もいるでしょう。そのようなときに相談窓口があれば、すぐにアドバイスを受けられます。
また、ストレスチェックの結果に応じて、必要があれば産業医と面談する機会が得られるのも大きな利点です。結果に基づいた具体的な対応が可能になる点も、相談窓口の魅力といえるでしょう。

継続した相談ができる

社内の相談窓口では、基本的に同じ担当者が継続して対応することが多く、長期的なフォローがしやすいのが利点です。産業医の選任数も法律で定められており、一定規模までは同じ医師が対応します。
さらに、専門部署が設けられている企業では、希望すれば毎回同じ担当者が対応してくれるケースもあります。これにより、一人ひとりの状況に応じた継続的なサポートが可能です。

出典:厚生労働省「産業医について

企業側のメリット

健康相談窓口は、従業員のためだけでなく、企業にとってもさまざまなメリットをもたらします。ここでは、企業側にとっての導入効果を見ていきましょう。

従業員の健康意識を改善できる

相談窓口を整備することで、従業員の健康意識が高まりやすくなります。
「体調が悪いときは早めに相談する」「普段から体調管理を意識する」といった行動が自然と根づくのです。
このように、企業全体で健康への関心が高まることで、欠勤や退職のリスクを減らし、働きやすい職場づくりにつながります。

生産性向上につながる

健康状態が良好な従業員は、業務への集中力や作業効率も高くなり、反対に体調不良やストレスを抱えている従業員は、生産性が低下する傾向があります。
健康相談窓口を設置することで、従業員の不調を早期に発見し、改善に向けた支援が可能です。これにより、企業全体の業務効率や成果にも好影響が期待できます。

出典:「中小企業における労働生産性の損失とその影響要因

採用へのプラスにつながる

昨今では、就職活動時に企業の働きやすさや健康支援の体制を重視する人が増えています。健康相談窓口のような制度が整っている企業は、応募者から「従業員を大切にしている会社」という印象を持たれやすいです。
また、経済産業省が認定する「健康経営優良法人(※「健康経営」とは、従業員の健康を経営的視点で捉え、戦略的に実践していく取り組みのこと)」「ホワイト500」「ブライト500」などの認定を活用することで、対外的な信頼度も高まり、採用活動でも有利に働くことが期待できます。

出典:経済産業省「健康経営優良法人認定制度

企業が導入できる「健康相談サービス」の種類と特徴

健康相談の取り組みは、産業医の配置やストレスチェックだけではありません。企業の規模や体制に応じて、さまざまなサービスの選択肢があります。
ここでは、社内での相談体制や社外サービスとの連携など、実際に導入できる具体的な方法について紹介します。

社内相談窓口

多くの企業では、産業医の配置に加えて、健康相談に対応する専門部署を社内に設けています。たとえば、次のようなものを設置しています。

● 保健師や看護師が所属する専任の健康相談室を設置する
● 資格を持つ社員が健康相談に対応する窓口を設置する
● メールやで相談ができる社内システムを導入する

このような社内体制は、従業員にとっても「社内だからこそ気軽にアクセスしやすい」という利点があります。また、職場環境を把握している相談員が対応することで、より実情に即したアドバイスも可能です。

出典:厚生労働省「社内相談窓口を設置している企業の取組事例|こころの耳

社外相談窓口

特に従業員が50人未満の事業場では、産業医の配置が義務ではないため、社外の相談窓口と提携するケースも多く見られます。
この場合の主なメリットは、以下のとおりです。

● 社内の人に知られたくない悩みも安心して相談できる
● 24時間365日対応しているサービスもあり、忙しい従業員でも利用しやすい
● 状況に応じて医師や専門機関へスムーズにつないでもらえる

一方で、デメリットもあります。たとえば、外部の相談員が企業独自の業務内容や文化を把握していない場合、アドバイスが一般的な内容にとどまりやすい点です。また、契約や運用にコストがかかることも導入前に考慮すべきポイントといえます。
とはいえ、リソースの限られる中小企業や、複数の事業場を持つ企業にとっては、社外サービスを活用することで柔軟かつ専門的な相談体制を整えることができます。

従業員に「健康相談窓口」を利用してもらうための方法

せっかく健康相談窓口を整備しても、従業員に利用されなければ効果は半減してしまいます。相談窓口の存在を周知し実際に活用してもらうために効果的な方法を、下表で紹介します。

社内ポータルサイトに専用ページを設置する 従業員が日常的に見るポータルサイトに、相談窓口の情報をわかりやすく掲載しておくことで、自然と目に留まりやすくなる
事業所内にポスターや案内の掲示を行う 休憩室やエレベーター前など、目に入りやすい場所に掲示することで、視覚的に訴求できる
定期的な研修や説明会を実施する 相談窓口の使い方や、個人情報が守られていることへの理解を深めるために、定期的な研修を実施するのも効果的。特に新入社員に向けた導入研修に取り入れると、自然と定着しやすくなる

こうした工夫を通じて、相談しやすい雰囲気づくりを行うと、実際の利用促進につながります。

まとめ|健康相談できる体制を整えて安心して働ける環境を目指そう

労働人口減少が進む中、従業員の定着には健康支援が重要です。健康相談窓口は、従業員の心身の不調や悩みに対応し、安心して働ける環境を提供します。これにより、離職防止や生産性向上につながります。
設置は法的な義務ではありませんが、労働安全衛生法で健康相談といった努力義務が定められ、従業員50人以上の事業場では産業医の専任やストレスチェックが義務付けられています。

従業員が安心して働ける環境づくりには、心と体の健康を支える仕組みが欠かせません。フェムナレッジでは、女性の健康課題や活躍推進に役立つ動画研修サービスを提供しています。企業の取り組みの一つとして、ぜひ活用を検討してみてください。

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