2024.08.07
「フェムテック」という言葉をテレビやメディアで耳にする機会が増えてきました。
女性特有の健康課題を解決させ、性差による不利益を減らすためにも、フェムテックによる商品の開発やサポートの発展が必要だと考えられています。
では、実際に現代社会においてフェムテックはどの程度認知・普及されてきているのでしょうか。この記事ではフェムテックの利用状況やフェムテックで解決できる内容について詳しく解説します。
前回の記事で紹介したように、フェムテック(Femtech)とは女性(Female)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた造語で、女性特有の健康課題をテクノロジーで解決する商品やサービスのことを指します。
女性が抱えるさまざまな健康上の悩みを解決することで、女性が生きやすい生活環境をサポートすること、また社会全体の経済損失を減らすことができると考えられています。
内閣府でも女性が抱える健康課題を解決するためにフェムテックを活用することを推奨しており、2025年には市場規模も5.5兆円になることが見込まれています。
(出典:経済産業省 経済産業政策局 経済社会政策室「経済産業省のフェムテック推進について」)
矢野経済研究所が2023年9月に行ったフェムケア&フェムテック市場に関する消費者アンケートの調査(対象:全国の20代〜60代の女性10,079人)では、国内におけるフェムテックの認知度は依然として低いという状況が明らかになりました。
(出典:株式会社 矢野経済研究所「フェムケア&フェムテック(消費財・サービス)市場に関する消費者アンケート調査を実施(2023年)」)
以下に詳しく解説していきます。
2年前からフェムテックを知る割合は徐々に増えており、認知度は高まりつつあるようです。しかしながら、2023年時点のデータでは、フェムテックの言葉の意味を知っている女性の割合は1割に満たず、8割以上の人が「聞いたことはあるが、言葉の意味はわからない」「知らない」と回答しています。国内のフェムテックの認知度はまだまだ低いことが分かります。
2023年時点では、まだまだ幅広い年代でフェムテックという言葉を知らない人が多い状況ですが、年代ごとに傾向が出ています。特に、言葉の意味を知っている人の割合は30代と40代で特に多く、60代で一番少ない現状にあります。
フェムテックのなかでも、購入・利用率が高いのは生理系や妊娠産後ケア系のアイテムです。なかでも妊娠時のスキンケアアイテムやノンポリマーの紙ナプキン、生理管理アプリなどはフェムテックを認知している5割以上の人が購入しています。
利用者が継続して利用しやすいものもあり、生理管理アプリでは2020年以前に購入したものを現在も使用している人が多いようです。
(出典:株式会社 矢野経済研究所「フェムケア&フェムテック(消費財・サービス)市場に関する消費者アンケート調査を実施(2023年)」)
2022年3月にSOMPOひまわり生命保険株式会社が行ったフェムテックに関する調査(調査対象者:全国の女性1000人)から、現在社会における女性のフェムテックに対する認知や期待、利用率などが明らかになっています。
(出典:SOMPOひまわり生命 健康応援リサーチ「日本のFemtech(フェムテック)市場の可能性に関する調査」第3回)
調査結果をふまえながら、フェムテックに関するさまざま疑問について解説していきます。
女性がフェムテックによって解決を期待している悩みは、主に「生活習慣管理(生活習慣のコントロール)」「精神的ストレス」「更年期・年齢によるホルモンのゆらぎ」です。
また、20代・30代は「月経・生理に関する悩み」、40代・50代は「ホルモンのゆらぎ」と「生活習慣管理に関する悩み」で特に解決を期待する傾向にあります。
働いていて困った経験は、生理や妊娠・出産、更年期障害にまつわる悩みが特に多く、周囲に相談したり、理解を求めたりすることが難しい現状にあるようです。
具体的には、「生理痛がひどいときは通勤や勤務が辛い」、「立ち仕事が多いと切迫早産が心配だ」、「更年期になると、ホットフラッシュや不安にかられることがある」などがあるようです。
全国の女性でフェムテックのサービスをすでに利用している分野は、「月経・生理にまつわる身体的な悩み」が特に多いようです。また、有料サービスは、「体型管理」「生活習慣管理」「精神的ストレス対策」などの分野で利用率が高い傾向にあります。
(出典:SOMPOひまわり生命 健康応援リサーチ「日本のFemtech(フェムテック)市場の可能性に関する調査」第3回)
前述のとおり、多くの女性は生理や妊娠・出産、更年期障害など女性特有のさまざまな悩みを抱えながら働いています。
これらの悩みはフェムテックの活用により、どのように解決できるのか、詳しく解説していきます。
生理痛やPMSなどの心身の不調、また経血の漏れやナプキン使用による肌トラブルなど、働く女性の多くが生理にまつわる悩みを抱えています。これらの悩みを解決する手段として、さまざまなフェムテックの製品やサービスが開発されています。
例えば、生理痛やPMS(月経前症候群)などの辛い症状で仕事や日常生活に支障をきたしてしまうという方は、ピルを服用することで症状の緩和が期待できます。
最近では、忙しくて婦人科を受診する時間がとれない、婦人科を受診することに抵抗がある、という方でも利用しやすいオンラインピル処方が注目を集めています。オンラインピル処方を利用すれば、ビデオ通話で医師の診察を受けた後、自宅にいながらピルの処方・受け取りが可能です。
また、仕事中に頻繁にトイレに行く時間がとれない、経血量が多く経血の漏れが不安だという方は、吸水ショーツや月経カップなどの製品も非常に役立ちます。
他にも、自身の生理周期や体調を記録・管理できる生理管理アプリを利用するのも良いでしょう。生理管理アプリでは、次の生理開始日やPMSの時期を予測してくれるため、仕事のスケジュール調整がしやすくなるというメリットがあります。
妊娠・出産を希望する女性にとって、仕事との両立は決して簡単なことではありません。
不妊治療での通院のたびに仕事を休まなければいけない、つわりや切迫早産など妊娠中のトラブルにより自宅安静が必要になってしまった、そして出産後の職場復帰への不安など、多くの課題や悩みが存在します。
こういったさまざまな悩みを解決するために、産婦人科医や保健師、助産師などに相談できるオンライン相談サービスが提供されています。
不妊治療における超音波検査など、どうしても通院が必要となるケースは少なくありませんが、薬の処方や治療方針の相談などはオンライン診療ができることもあります。これらを活用することで、通院の負担を減らすことができるでしょう。
また妊娠中の体調を記録・管理できるアプリでは、妊娠週数における胎児の発育状況や母体の健康状態にあわせて、必要なアドバイスを提供してくれます。
他にも自宅で胎児の心音を確認できるデバイスとスマートフォンを連携し、遠隔診療できる胎児モニターの開発も進んでいます。
閉経前の5年間から閉経後の5年間の10年間(更年期)で、女性ホルモンの急激な減少によってほてりや発汗、頭痛、尿もれ、冷えなどの症状が起こることを更年期障害といいます。これらの不快な症状の緩和に役立つさまざまな製品の開発も進んでいます。
更年期障害では、上半身はのぼせたように暑いのに対して、下半身は冷えてしまう、という症状に悩まされる方も少なくありません。こういった方は、上半身は吸汗性・速乾性のあるインナーを着用し、下半身は保温性の高いショーツや下着に貼る温熱シートを利用する、という使い分けをするのも良いでしょう。
また、尿漏れ対策として吸水ショーツを使用することも推奨されます。吸水ショーツはショーツ自体に吸水力があるため、仕事中や外出時などの尿漏れの心配から解放されます。
他にも、更年期障害の症状を緩和させるためのサプリメントなど、さまざまな製品やサービスも開発されているため、ご自身の悩みにあわせて活用することで、少しでも快適な生活が取り戻せるかもしれません。
フェムテックは全国の認知度がまだまだ低いものの、生理系や妊娠産後ケア系のアイテムは認知している女性のなかで購入・利用率が高い傾向にあるようです。
さまざまな悩みを解決するためにフェムテックを使用したいと思っている女性も多く、今後の更なる発展が期待されています。
フェムテックの商品やサービスを利用して女性特有の悩みが解決できれば、日常生活や仕事の負担が減らせるかもしれません。
監修者
慶應義塾大学名誉教授 吉村 𣳾典
フェムテックという分野が、女性(Female)が抱える問題をテクノロジー(Technology)で解決するために作られたように、あすか製薬は、女性(Female)が抱える問題を知識(knowledge)として世に広める活動に力を入れています。そして、私たちが伝えた知識を生かして、より良い明日のために行動変容することに対しても貢献したいと考えています。
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