社員の不妊治療を支援するために必要なこと

2024.11.27

日本の出生数が減少する中、政府や企業は不妊治療を受けやすい環境整備や制度づくりを進めているが、現実には仕事と不妊治療の両立は簡単ではない。
不妊治療は先の予定が立てにくく、さらにプライベートな問題を職場にどう伝えるかというナーバスな部分も多い。
そこで、厚生労働省「不妊治療と仕事の両立について」から、仕事と不妊治療の両立支援のために必要なことを考えてみたい。

半数以上の企業が、不妊治療を行なっている従業員の把握ができていない

【企業アンケート調査結果】

• 半数以上の企業が、不妊治療を行なっている従業員の把握ができていない。
• 不妊治療を行なっている従業員が受けられる支援制度等がある企業は26.5%。
• 不妊治療を行なっている従業員が受けられる支援制度等がある企業のうち、最も多く導入されているのは「不妊治療に利用可能な休暇制度」で47.8%。
(出典:令和5年度 厚生労働省 不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査

不妊治療をしている・過去にしていた方へヒアリングした際、「子どもができなかった時のことを考えると、不妊治療をしていることを会社には言えない」という意見をもらったことがある。
また、企業側にヒアリングした際、福利厚生として不妊治療を支援する制度を導入しても、不妊治療を受ける従業員側のプライバシーの問題がある。さらに、福利厚生サービスを利用した実態を企業側にどこまで伝えるかという課題もある。
そんな中、不妊治療のための制度として、「不妊治療に利用可能な休暇制度」が最も多く導入されている。
不妊治療が原因で2割弱が転職・退職している。不妊退職による経済損失は、国内で2,083億円というデータもあり、不妊治療の際に必要な休暇や働き方ができる環境づくりが求められている。

不妊治療と仕事の両立について、従業員への普及活動を実施していない企業は95.7%も!

【企業アンケート調査結果】

• 不妊治療と仕事の両立に関する従業員への普及啓発を実施していない企業は95.7%。
• 不妊治療を行なっている従業員を対象に、相談や面談の機会等を設けていない企業は78.9%
(出典:令和5年度 厚生労働省 不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査

不妊治療をするにあたり、検査や排卵のタイミング、卵子・子宮の状態を確認するため、定期的に病院へ通う必要がある。
そのため、会社を休んだり、仕事の調整をする必要があるため、職場の周囲の理解がないと、不妊治療を続けることは難しい。
職場のメンバーにそういった事情を理解してもらう必要があるが、企業ではほとんどそういった普及啓発を実施していない。不妊治療の平均期間は、平均約2年間とも言われるが、上司を含めた一緒に働くメンバーへの理解が不足しているのが現状である。

不妊治療をしたことがある人のうち、10.9%は退職し、7.4%は雇用形態を変更している

【労働者アンケート調査結果】

• 不妊治療をしたことがある、もしくは、予定している人は14.5%
• 不妊治療をしたことがある人のうち、半数以上は仕事を両立しているが、10.9%は退職し、7.4%は雇用形態を変更している
• 不妊治療をしていることを職場で一切伝えていない(伝えない予定の)人は47.1%。職場でオープンにしない理由は「伝えなくても支障がないから」「周囲に気づかいをしてほしくないから」が多い
(出典:令和5年度 厚生労働省 不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査

不妊治療をしている女性の声

出典:筆者作成

不妊治療をしている女性たちにヒアリングした際にも「不妊治療で仕事を休んだりしているが周りに言えず、自分のわがままと思われている気がする」という話しがあった。厚生労働省の調査でも、「周囲に気遣いをしてほしくないから、職場で伝えていない」方が33.0%となっており、現状では「周囲に知られずに不妊治療を続けること」が求められている。

まとめ:社員の不妊治療を支援するために必要なこと

【労働者アンケート調査結果】
不妊治療と仕事を両立する上で利用した(利用する予定)制度の上位3項目

• 年次有給休暇:31.5%
• 短時間勤務、テレワークなど柔軟な勤務を可能とする制度(勤務時間、勤務場所):18.7%
• 通院·休息時間を認める制度:16.3%
(出典:令和5年度 厚生労働省 不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査

不妊治療と仕事を両立する上で、従業員が会社や組織に希望する制度は、不妊治療に利用可能な休暇制度や、現状の有給休暇を取りやすい環境づくりである。
有給休暇に柔軟性を持たせること。例えば短時間単位(時間や半日単位)の有給休暇取得や、フレックスタイムや在宅勤務など勤務体系の柔軟化が、不妊治療を続けるうえで、企業に求められているひとつである。
「不妊治療休暇」というようなわかりやすいネーミングでは、「不妊治療を周囲に知られなくない」という従業員のニーズにはマッチしない。柔軟な制度の整備が、従業員の大きなニーズになっている。

著者
木村 恵
Femtech Community Japan理事。NewsPicksトピックスオーナー。 経営学修士(MBA)

フェムテックという分野が、女性(Female)が抱える問題をテクノロジー(Technology)で解決するために作られたように、あすか製薬は、女性(Female)が抱える問題を知識(knowledge)として世に広める活動に力を入れています。そして、私たちが伝えた知識を生かして、より良い明日のために行動変容することに対しても貢献したいと考えています。

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