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ダイバーシティ&インクルージョンとは?日本の取り組みや課題・海外の現状

2025.01.22

ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)とは?

ダイバーシティ&インクルージョン(Diversity&Inclusion)とは、「多様性」を意味するダイバーシティと「包括・受容」を意味するインクルージョンを組み合わせた言葉です。性別、年齢、国籍、宗教などを含む、それぞれの個性や価値観を受け入れ、認め合い、生かしながら、公平な組織の中で活躍できる環境作りを目指すことを言います。
以下ではビジネスにおけるダイバーシティ&インクルージョンの考え方について解説していきます。

ダイバーシティ&インクルージョンの基本の考え方

ビジネスにおいてダイバーシティ&インクルージョンの考え方を3つにまとめました。

• イノベーション向上への貢献:多様な視点から生み出すアイデアや新たな価値
• 従業員のエンゲージメント向上:多様性を尊重し、個々の能力を最大限に発揮できる環境
• 社会における多様性の受け入れ促進:組織の取り組みから社会全体が多様性への理解で公平な環境を整える

以下に示す図は企業のダイバーシティ経営を促進する、経済産業省 経済社会政策室が作成したプロトタイプ「ダイバーシティ・コンパス」です。このコンパスでは、企業が目指すべき多様性のある経営の姿や、必要な行動指針を整理し、具体的な課題解決への道筋を示すことを目的としています。政府がこれまで以上にダイバーシティ経営の促進に力を入れていると言えます。

出典:ダイバーシティ・コンパス(経済産業省)

また、ダイバーシティ&インクルージョンは経済産業省のまとめる人的資本経営とも密接に繋がり、多様な人材を受け入れ、包括的な環境を提供することで、人的資本の質と量を最大化できます。これにより、企業や組織は経済的価値だけでなく、社会的価値も同時に創出できます。

なぜダイバーシティ&インクルージョンが求められるのか

なぜ今、企業においてダイバーシティ&インクルージョンが求められるのでしょうか。
その背景には社会的・経済的な課題と組織的な職場環境の変化が挙げられます。3つの視点で考えてみます。

人口減少と高齢化

日本を始め、イタリア・ドイツ・フランス・カナダなど主要国を中心に多くの国で現在少子高齢化が進んでいます。日本の場合、2024年9月現在で65歳以上の高齢化率は29.3%と年々増加しており、労働人口が低下していく中で外国人や高齢者など多様性の拡大が求められます。
出典:統計トピックスNo.142 統計からみた我が国の高齢者(総務省)(2024年12月27日利用)

性別・人種・LGBTQ+や障害者への配慮など格差や偏見の是正

人材の多様性が重要視される今日、企業が多様性を尊重し、包括的な環境を促進する姿勢は、社会や市場から高く評価されています。このように持続可能な成長の鍵として、多様な人種における格差や是正の取り組みが求められます。

イノベーションや市場の多様化による経済発展の基盤

異なる視点や価値観を活かし、新たなアイデアを生むことでイノベーションを促進します。また、消費者や市場の多様化に対応するためには、多様な人材を受け入れる組織が必要です。これらは経済発展の基盤となり、企業や社会の競争力向上に寄与します。

日本のダイバーシティ&インクルージョンの取り組み

日本でダイバーシティ&インクルージョンの取り組みはどの程度進んでいるのでしょうか。近年LGBTQ+の支援や障害者雇用は着実に進展しています。事例とともに見ていきます。

LGBTQ+の企業支援が増加

多くの自治体での同性パートナーシップ証明制度の導入が進み、渋谷区と特定非営利活動法人虹色ダイバーシティが実施している共同調査によると、導入自治体は22年6月には219自治体でしたが、2024年6月時点で459自治体までこの2年間で2倍以上に増え、人口カバー率は85.1%となりました。また、企業レベルでも、LGBTQ+のためのフレンドリーポリシーや啓発活動を進める例が増加しています。
出典:虹色ダイバーシティ全国パートナーシップ制度共同調査(特定非営利活動法人)

障害者雇用の増加

障害者雇用に関しては、障害者雇用促進法に「従業員が一定数以上の規模の事業主は、従業員に占める身体障害者・知的障害者・精神障害者の割合を法定雇用率以上にする義務がある」(43条第1項)と定められ、法定雇用率を満たす取り組みが進行中しています。障害者を雇用することは、法令で定められた義務という側面を超え、障害者が働きやすい環境を整備することで既存社員の働き方も改善され、企業の成長につながる重要な取り組みとなっています。

日本におけるダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の課題

これまで日本の取り組みを伝えてきましたが、国際的に見ると日本はダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の分野で遅れをとっていると言われています。
世界経済フォーラムが、経済、教育、健康、政治の分野毎に各使⽤データをウェイト付けしてジェンダー・ギャップ指数を算出していますが、総合順位で日本は146か国中118位と低く、特に政治、経済において、それぞれ113位、120位とジェンダーギャップの低さが浮き彫りになっています。

出典:Global Gender Gap Report 2024 (World Economic Forum) P.219翻訳

では、それぞれの国で実際にどのような取り組みが行われているのでしょうか。
上位を占める欧州では、男女の雇用機会・待遇の均等に関して、EU全体で法整備に取り組んでおり、社会全体としてジェンダー平等を受け入れる動きが活発です。また、アメリカでは企業の採用や昇進で「DEI (Diversity, Equity, Inclusion)」を標準化する取り組みがなされており、経済におけるジェンダー平等が推進されています。

※DIE:ダイバーシティ(Diversity)とインクルージョン(Inclusion)に加えて、エクイティ(公正性、Equity)を加えた、より公平で不均衡でない調整を意識した概念

次の章では、日本の「女性の活躍」に絞り課題を考えていきます。

日本の女性活躍における現状課題とその解決策とは

2016年、女性活躍推進法(正式名:女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)が制定されました。国としても女性活躍を進める事で、世の中の情勢変化に対応できる社会の実現を目指しており、その強化は欠かせません。あらためて現状課題と解決策について考えていきます。

女性管理職比率は低水準

企業の女性管理職比率は増加傾向にはありますが、2022年時点で12.9%と、欧米諸国(40%前後)と比較すると低い水準です。また、就業者に占める女性比率は諸外国とほぼ同レベルとなっていますが、役員の女性比率も諸外国と比較して著しく低くなっています。

出典:ダイバーシティ経営の推進について(経済産業省)(2024年12月27日利用)

「女性活躍推進法」により、企業は女性の雇用促進に関する行動計画を策定することが義務化されました。女性就業者の増加という成果は出ている一方で、管理職における女性の割合はまだまだ低いと言わざるを得ない状況です。しかし、現実問題として女性は家事や育児の負担割合は高い傾向にあり、仕事との両立を困難と考える人も少なくありません。この解決にはジェンダー平等や女性特有の健康課題の理解を深め、女性が働きやすい環境作りに取り組めるよう企業全体でサポートする必要があります。

女性特有の健康や身体のサポートを望む女性従業員

日本の女性管理職比率は世界水準と比較すると低い状況ですが、管理職への昇進を目標とする女性社員も多く存在します。しかしながら、働く世代である20代~50代において、女性は女性特有の健康課題に関する様々な症状に直面します。(男性の場合、男性特有の病気は50代半ばから増加し始めますが、それまでは比較的少ない傾向があります。)今後の女性活躍と健康課題は密接に関係していると考えられ、企業全体の支援が求められています。

フェムテックが女性活躍にもたらす価値

フェムテックの導入でダイバーシティ推進を支援
働く女性が直面する健康課題のために、企業も様々な取り組みを始めています。その一つがフェムテック(Femtech)です。フェムテックとは女性が感じている健康上やライフスタイルの悩みをテクノロジーの力で解決する商品やサービスです。女性(Female)とテクノロジー(Technology)をかけ合わせてその名が付けられました。
オーガニックコットンの生理ナプキンや、ナプキンやタンポンを使用しない月経用吸水ショーツ、妊娠中や産後のQOL向上を目的としたアイテム、更年期症状改善のためのアイテムなどその需要は年々増加しています。
企業は女性がこれまで一人で抱え込んでいた不安や悩みについて理解を深め、共有しやすい環境作りに整えることもダイバーシティ&インクルージョンの取り組みの一つとなるでしょう。
出典:フェムテックとは?注目される理由や解決できる問題を紹介(フェムナレッジ)

企業のダイバーシティ&インクルージョンの取り組みで志望度が上がる

これまでダイバーシティ&インクルージョンの説明や課題、企業の取り組みについて説明してきましたが、学生はこの取り組みについてどう考えているのでしょうか。

学生のダイバーシティ&インクルージョン(D&I)に対する感心度は高い

株式会社学情が2024年3月卒業(修了)予定の大学生・大学院生を対象に実施した、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)をテーマとしたインターネットアンケートでは、企業のD&Iに対する取り組みを「意識する」と回答した学生が45.0%と過半数近くいて、実に6割以上の学生がD&Iに関する企業の取り組みを知ることでその企業に対する志望度が上がる、と回答しました。
志望動機として、企業の多様性を重視する学生は多く、投資家からの企業評価のみならず、学生からの企業を選択する基準としての関心も高まってきていることが分かります。
出典:大学生・大学院生を対象インターネットアンケート「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」に関して調査(株式会社学情 プレスリリース)

公平性(EQUITY)という新たな概念 ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)とは?

近年はダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の取り組みに公平性(Equity)という新たな概念が追加されDEI(Diversity, Equity, Inclusion)へとシフトされました。

女性活躍推進をはじめ、多様なジェンダー、年齢、学歴・経歴、障害の有無など、多様な背景や属性(Diversity)を持った人たちが、積極的に意思決定に関わったとしても(Inclusion)、マイノリティである背景・属性の人たちは、時にその視点を最大限に生かせないことがあります。
ここに、公平性(Equity)が加わることは、多様性の理解や人材の受け入れだけでは不足した取り組み、個々の背景・属性を活かし、本来の能力を発揮するため施策と言えます。一人ひとりの多様性に応じ、体験の質を揃えるための公平性の実現が新たな企業価値を生み出します。
出典:ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)とは?公益財団法人日本生産性本部

まとめ

ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)は、持続可能な社会や企業の発展に欠かせない要素です。日本ではLGBTQ+支援や障害者雇用が進む一方、ジェンダー・ギャップの課題が残ります。特に女性活躍では企業における女性の管理職登用や依然として遅れている現状があります。性別、人種、年齢、役職など自分が無意識のうちに持っているこうしたバイアスに気づき、それを日々の行動に反映させることは、より公平で包括的な職場環境を作り上げるための第一歩です。
これらの解決のためには、海外の成功事例を参考にした取り組みや、働きやすい労働環境の整備が重要です。また、女性特有の健康課題に寄り添い、企業全体がその理解を深めていく事で組織全体の成功に貢献することとなるでしょう。

監修者

profile

大迫 鑑顕

千葉大学大学院医学研究院精神医学 特任助教
Bellvitge University Hospital, Barcelona, Spain
医学博士、精神保健指定医、日本精神神経学会認定精神科専門医・指導医、日本医師会認定産業医、公認心理師

あすか製薬 フェムナレッジでは、女性従業員の活躍を推進するサービスを導入したい企業の皆さまや今後女性特有の健康課題に関する取り組みを検討されている企業の皆さま向けに動画研修サービスをご提供しております。

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