2025.02.24
近年、多くの企業が従業員の健康に注目し、積極的に取り組むようになっています。その中でも特に注目されているのが「健康宣言」です。
この記事では健康宣言とは何か、健康宣言は従業員と企業それぞれにどんな効果があるのか、詳しく解説していきます。
健康宣言とは、「従業員の病気予防・健康づくりに取り組むことを事業所や組織自らが宣言すること」を指します。
従業員の健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践することを「健康経営」といいます。健康経営に取り組む事業所などが、従業員や求職者、関係企業や金融機関等から評価を受けられるよう、経済産業省では「健康経営優良法人認定制度」の推進を開始しました。
健康経営優良法人認定を受けるには、事業所が「健康宣言事業」に基づき健康宣言を行う必要があります。
昨今、健康宣言が注目されるようになった理由としては、大きく以下の二つが挙げられます。
経済産業省の試算では、2020年から2050年にかけて日本の総人口は20%減少し、生産年齢人口は30%以上減少することが見込まれており、労働人口の減少はもはや避けることはできません。
さらに、高齢者の増加や平均寿命の延びを踏まえると、日本経済全体が健全に長く成長を続けるためには、「健康寿命を伸ばすこと」が欠かせません。そのためには、事業所側も従業員の健康へ目を向けた健康経営を行なっていく必要があります。
近年は、労働者の高齢化や生活・就業スタイルの変化などに伴い、会社の健康管理体制が経営に大きく関係しています。企業が健康づくりに積極的に取り組むことで、社員が元気に働けるようになり、健康経営は結果的に生産性の向上だけでなく、企業イメージの向上にも大きく貢献するでしょう。
前述のとおり、健康宣言は健康経営優良法人認定の要件の一つとなっており、一定の項目を必ず盛り込む必要があります。以下で解説していきます。
健康経営優良法人を目指す企業は、健康経営を目指すための経営理念として、健康宣言を社内外へ発信していく必要があります。
下表のように、大規模法人部門と中小規模法人部門では健康宣言の必須項目に違いがあります。
部門 | 大規模法人部門 | 中小規模法人部門 |
---|---|---|
必須項目 | ・健康宣言の社内外への発信 (アニュアルレポートや統合報告書での発信) |
・健康宣言の社内外への発信 ・経営者自身の健康診断受診 ・加入している保険者が実施している健康宣言事業への参加 |
出典:「健康宣言事業」の実施に向けたご協力のお願い (経済産業省)(2025年1月13日利用)
中小企業の会社が健康経営を進めていく際には、自社の所属している保険者(健康保険事業の運営団体)を確認し、保険者が健康保険組合の場合はその組合が所属する健保連都道府県連合会にて実施している健康宣言を行なっていく、というのが一般的な流れとなります。
健康宣言事業を公表している「協会けんぽ愛知県支部」の健康宣言事業を例に挙げると、以下の項目が必須項目として定められています。
生活習慣病は、早期には自覚症状がなく症状が現れた時にはすでに進行しているというケースが少なくありません。そのため、健康診断を受けその結果から必要に応じて自身の生活習慣を見直し、改善に取り組むことが必要となります。
協会けんぽ愛知県支部の健康宣言事業における健康宣言では、社員の健診実施率100%を目標としています。
健康診断の結果、生活習慣病の発症リスクが高く、生活習慣病の予防効果が大きく期待できる方を対象に健康サポートを行います。協会けんぽ愛知県支部の健康宣言事業における健康宣言では、健康サポート利用率についても100%が目標です。
労働安全衛生法により、事業主は労働者に対して健康診断を実施することなどが義務付けられています。法令に基づく労働者の健康管理を徹底しています。
出典:健康宣言始めましょう(全国健康保険協会 愛知支部)(2025年1月13日利用)
健康宣言を行うことで従業員の健康意識が高まり、健康に意識を向けた考え方が定着しやすくなります。その結果、従業員個人への直接的な効果はもちろん、企業全体にとってもプラスの効果が生まれやすくなります。
従業員への直接的な効果としては、以下が挙げられます。
心身の良好な健康状態の維持は集中力の向上にも直結しやすく、業務効率化やミスの軽減など、仕事のパフォーマンスに良い影響を与えます。その結果、事業の安定化や業績の向上に貢献します。
従業員の心身が健康な状態に保たれていることで、病気やメンタルヘルス不調による離職リスクを軽減できると考えられます。実際、従業員の健康維持・増進に積極的に取り組んでいる企業は、そうでない企業と比べて離職率が低い傾向にあることが分かっています。
企業全体への効果としては、以下が挙げられます。
従業員の健康維持は、総じて保険料率の抑制に繋がります。つまり、様々な病気の早期予防により、医療費削減への効果が期待できるといえるでしょう。
健康を損なうことによる従業員の離職は、企業の安定的な経営を脅かす大きなリスクのひとつです。そのため、職員の健康管理は離職防止の観点からも重要なリスクマネジメントとなり得ます。
従業員に対する配慮を示すことで、企業イメージは高まります。結果、企業としてのブランド価値の向上に繋がり、求職者からの人気も上昇するでしょう。そうなれば優秀な人材の確保もより容易になると考えられます。
最後に、健康宣言の導入の参考のために協会けんぽの健康宣言事業に参加している企業の健康宣言による取り組み事例を紹介します。
【事例】
食料品業界の会社 従業員 約80名 事業内容 卸売業
健康宣言 | 「メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)または予備群と判定された対象者に特定保健指導を受けてもらい生活習慣病の保有率を低下させます。」 |
---|---|
健康課題 | ・メタボ社員が多い ・運動不足の社員が多い ・社員の健康意識が低い |
取組内容 | ・事業主自らがトレーニングジムに通う ・健康増進活動を行った従業員に対して補助金(会社が認める運動施設の利用料に対して1人あたり月額¥3000)を支給 |
取組の成果 | 運動施設の利用者が増加し、社員の運動不足解消に繋がっている |
今後の抱負 | 今後は適切な働き方に向けた業務効率化を図り、週1回のノー残業デーを導入したい |
他社へのメッセージ | 「従業員が定年まで健康で安心して働ける職場環境を整えることが重要なことだと思います。」 |
出典:健康宣言取り組み事例集(全国健康保険協会)(2025年1月13日利用)
健康経営優良法人の認定取得は、長期的に見れば従業員と企業の双方にいくつものメリットがあります。少子高齢化が進む昨今、より長く健康に働ける環境が増えることは企業の将来を考える上でも非常に重要な意味を持つと言えるのではないでしょうか。
ぜひ、健康宣言事業に参加して健康経営優良法人の認定取得を目指しましょう。
本記事では健康宣言について、従業員と企業それぞれにとっての効果を実際の実例も交えつつ解説しました。健康経営優良法人認定取得を目指すのであれば、健康宣言事業に参加し健康宣言を行なう必要があります。より働きやすい職場環境を従業員に提供することは、それ自体が企業価値を高めることに直結すると言っても過言ではないでしょう。
また、働きやすい環境というのは「男女共通の認識」でなくてはなりません。男性だけでなく女性も働きやすいと感じる職場環境を提供するためにはフェムテックの商品やサービスを活用するのがおすすめです。ぜひ一度、検討してみてはいかがでしょうか。
監修者
大迫 鑑顕
千葉大学大学院医学研究院精神医学 特任助教
Bellvitge University Hospital, Barcelona, Spain
医学博士、精神保健指定医、日本精神神経学会認定精神科専門医・指導医、日本医師会認定産業医、公認心理師
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