2025.04.23
生理痛(月経痛)やPMS、更年期症状や不妊治療など、女性特有の悩みや健康課題がいま、社会全体で大きく取り上げられ始めています。
これらの問題をテクノロジーの力で解決するのが「fem tech(フェムテック)」です。
近年、国や企業の支援も拡大し、利用者が急増しつつあります。
この記事では、fem techの具体的な意味や注目される理由、解決できる健康課題を詳しく解説します。
fem tech(フェムテック)とは、女性特有の身体的・心理的な健康課題を、テクノロジーの力で解決する商品やサービスのことです。fem techの詳しい意味や、フェムケアとの違いを説明します。
fem techとは、「Female(女性)」と「Technology(技術)」を組み合わせた造語で、女性特有の健康課題を、テクノロジーの力で解決する製品やサービスを指します。
月経や不妊治療、更年期症状、妊娠や産後ケアなど、女性が人生の中で直面するさまざまな課題に対応し、健康で快適な生活をサポートすることがfem techの目的です。
具体例として、以下のようなツールが挙げられます。
● 月経周期や症状を記録する月経管理アプリ
● 排卵日を予測するデバイスやAIを使った妊活ツール
● 更年期のホルモンバランスをチェックできるデバイス
● 母乳量を記録する産後ケアアプリ
fem techと似た言葉に「femcare(フェムケア)」があります。
明確な違いは定義されていませんが、一般的にfem techがデジタル技術を活用した製品やサービスを指す一方で、femcareはデジタル要素を使わない製品やサービスを指します。例えば吸水ショーツやオーガニックコットンの生理用品、デリケートゾーン用のケア用品などが該当します。
ここまで、fem techの概要を説明してきました。近年、このfem techが注目を集めています。その背景には、生理(月経)、不妊治療、更年期症状など、これまで十分に議論されてこなかった女性特有の健康課題が、社会で広く認識されるようになったことがあります。
とくに更年期ケアやセクシャルウェルネスといった分野が注目され、サプリメントや情報提供サービスなどの利用が増えています。
なぜ今、fem techが注目を集めているのでしょうか。注目される理由として、以下が挙げられます。
● 女性が声をあげやすくなった
● テクノロジーが進化した
● 企業や自治体でも導入が進んでいる
以下で詳しく説明します。
女性の健康課題に向き合う社会的な意識が広がり、女性が声をあげやすい環境が整いつつあります。
現在、SNSの普及により、生理(月経)や更年期症状、不妊治療など個々の悩みを気軽に共有できる機会が持てるようになりました。
誰にも相談できなかった状況から、自分一人で抱えるのをやめ、声をあげることで共感を求める女性が増えています。
また現在、厚生労働省による、女性の健康に特化した「女性の健康ナショナルセンター」の創設が進められています。
女性の健康ナショナルセンターには、妊娠や出産に伴う疾患に対応する医療や研究の拠点だけでなく、正しい情報提供や相談窓口の役割も果たすことが期待されています。
このような取り組みは、社会全体が女性の健康課題に向き合う追い風になります。社会全体の意識が、ますます変わってくるでしょう。今後さらに女性が健康課題について声をあげやすくなると予測できます。
出典:厚生労働省「『女性の健康』ナショナルセンター機能の構築について」
テクノロジーが進化したことも、fem techが注目を集める理由の一つです。例えば近年では、オンラインでの健康相談が可能になり、自宅にいながら専門家のアドバイスを受けることができるようになりました。
また、月経管理アプリや排卵日予測デバイス、ホルモン変化をモニタリングするウェアラブルデバイスなど、デジタルツールを使った健康管理が一般的になりつつあります。
医療機関で行われる対面診療や薬物治療のような従来のケア方法では対応しきれなかった部分をカバーし、個々の健康状態に合わせたサポートが進んでいることも、fem techへの注目が高まることにつながっています。
現在、fem techは国や企業からも注目されています。福利厚生として、月経管理アプリやオンライン診療サービスを導入する企業も出てきました。
fem techのイベントを開催したり、fem techサービスを導入したりと、女性の健康課題の改善に取り組んでいます。
また経済産業省が、「フェムテックを活用した働く女性の就業継続支援」として、企業のfem tech導入をサポートしています。具体的には、企業がfem techを導入するための費用を補助金制度でサポートします。このように国や企業が力を入れているのも、fem techが注目される理由です。
生理(月経)や更年期症状は、その程度により、女性の仕事やキャリアに深刻な影響を与える場合があります。
厚生労働省の資料によると、月経中の女性の75%が仕事の生産性に効率低下を感じています。また、1回の生理(月経)で平均5日間、年間で約2か月間、生活全般や仕事に影響を受けるとも発表されました。
更年期症状も仕事の生産性を低下させ、キャリア継続や昇進に影響を与える場合があります。女性の健康課題は、仕事や生活に、大きく影響を与えるといえるでしょう。
出典:厚生労働省「今、働く女性が求めている健康支援策とは?」
経済産業省の試算によると、女性特有の健康課題による経済損失は、年間で約3.4兆円にのぼります。
内訳は、更年期症状が約1.9兆円、月経随伴症と婦人科がんが、それぞれ約0.6兆円、男女双方の不妊治療が約0.3兆円です。
とくに更年期症状と月経随伴症は経済損失が大きく、更年期症状と不妊治療は離職や休職傾向が高まります。
女性が離職した場合、追加採用活動にかかる費用が約2,340億円になると推計されており、女性特有の健康課題による経済損失は大きいといえるでしょう。
また、月経随伴症は欠勤やパフォーマンス低下など、業務効率の低下に直結し、企業が対応を怠ると長期的な損失につながる可能性があります。
対策として、職場での健康研修や受診支援、相談窓口の整備が急務です。
これらの取り組みは、女性が健康的に働ける環境を提供するだけでなく、企業の生産性向上や経済成長を支える基盤にもなります。
将来的に企業の収益性向上につながる、重要な投資ともいえます。
出典:経済産業省「女性特有の健康課題による経済損失の試算と 健康経営の必要性について」
具体的に、fem techでどのような健康課題が解決できるのでしょうか。
解決する健康課題について、以下で解説していきます。
月経に伴う不快感やストレスを軽減するため、さまざまな製品やサービスが開発されています。
月経管理アプリは体調変化や月経日を予測し、生活や仕事の計画を立てやすくします。また、ホルモンバランスの変化による症状を記録し、医師の診断に役立てるツールもあります。
更年期には、のぼせ、不眠、気分の不調など多様な症状が現れます。
これらの症状を和らげるために、漢方薬やサプリメントを利用するほか、ウェアラブルデバイスを使ってホルモンバランスの変化をモニタリングするサービスもあります。
また、オンライン相談を活用して、医師や専門家に自宅から相談し、受診の心理的負担を軽減する方法もあります。
女性が活躍する一部の企業では、更年期ケアのためにfem techを活用した支援が注目されています。
こうした試みは更年期症状による離職を防ぎ、働きやすい環境づくりに貢献すると同時に、企業の生産性向上や持続可能な成長を支える施策となるでしょう。
不妊治療をサポートするfem tech製品には、排卵日を予測するアプリや、基礎体温を記録するデバイス、精子を検査できる郵送キットがあります。
これらを活用することで、妊娠のタイミングを把握したり、自宅で検査を受けることができ、治療の負担が軽減します。
オンライン相談サービスを利用すれば、専門家から自宅でアドバイスを受けられ、不安や疑問の解消につながるでしょう。
fem techの中でも、とくに注目されているのが、妊娠中や産後の女性を支えるサービスです。
オンライン相談サービスは、助産師や医師に自宅から相談でき、妊娠や育児の不安を軽減します。また母乳管理アプリは、授乳スケジュールを管理し、育児の負担を軽くします。
生理痛(月経痛)やPMS、更年期症状、不妊などの女性特有の健康課題は、個人の生活やキャリアはもちろん、社会全体にも大きく影響します。こうした健康課題を解決するfem techが、注目を集めています。
現在、社会での女性の活躍が求められています。女性だけでなく、企業も、本稿で紹介したfem techへの知識、女性の健康課題への正しい理解が必要です。
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