2025.03.31
企業が従業員に提供する福利厚生には、「法定福利厚生」と「法定外福利厚生」の2種類があります。法定福利厚生は法律で義務付けられているもので、企業は必ず負担しなければなりません。一方、法定外福利厚生は企業が独自に導入する制度で、従業員の働きやすさや満足度向上を目的としています。
本記事では、法定外福利厚生の具体的な種類や課税のポイントについて詳しく解説します。
企業は、従業員とその家族の生活や働き方を支えるために福利厚生を設けています。ここでは、法定外福利厚生と法定福利厚生の違いを整理しましょう。
法定外福利厚生とは、企業が自主的に提供する福利厚生のことです。法定福利厚生と異なり法律で義務付けられていないため、その内容や範囲は企業ごとに異なります。例えば、住宅手当や特別休暇、健康支援、レジャー施設の割引などが挙げられます。これらの福利厚生は、従業員のモチベーション向上や定着率の向上に役立つでしょう。
最近では女性の健康課題を解決する「フェムテック」など、新しい技術を活用した福利厚生も注目を集めています。
前述した通り法定福利厚生とは、法律で定められた企業の義務として提供される福利厚生のことです。
以下に主な法定福利厚生の種類を説明します。
• 健康保険:病気やケガなどで治療が必要な場合に、従業員の医療費負担を軽減するための医療制度です。
• 介護保険:40歳以上65歳未満の従業員は必ず加入します。介護が必要となった高齢者や家族を支えるための保険です。
• 厚生年金保険:従業員全員が加入する公的な年金制度です。国民年金に上乗せする形で年金が支給されます。
• 雇用保険:従業員が失業した場合に給付し、再就職を支援する制度です。
• 労災保険:従業員が業務中に病気やケガをした際に費用を給付する制度です。
• 子ども・子育て拠出金:子どもや子育て支援に必要なお金を事業者の負担によって集める制度です。
これらはすべて社会保険制度の一部であり、企業が従業員の社会的な保障を支えるために負担しています。法定福利厚生は、企業にとってコスト負担が大きいものの、従業員の生活の安定には欠かせません。
企業が法定外福利厚生を導入する目的は多岐にわたります。ここでは2つの目的を説明します。
1つ目は、健康経営の推進です。現代社会はストレス社会とも呼ばれており、従業員の心身の健康を増進・維持することは事業者の課題となっています。従業員が健康状態に不調をきたすと、本人の家族への負担になるだけではなく、組織の生産性低下を招く要因になり得ます。そのため健康経営を推進し、従業員の健康を増進・維持することは企業にとって大切なのです。
2つ目は、企業イメージの向上です。福利厚生を充実させることにより、求職者への訴求にもつながります。近年、女性の健康課題に対する社会の意識が高まり、フェムテックを福利厚生として導入することで、採用時に女性へのアピールにつながる効果が期待できます。
法定外福利厚生には、さまざまな種類があります。企業がどのような制度を導入するかは、従業員のニーズや企業の方針によって異なります。
ここからは、法定外福利厚生の主な種類を解説します。
従業員が安心して暮らせる住環境を整えるため、住宅に関するさまざまな制度を設けています。
• 家賃補助、住宅手当
毎月の給与に一定額の家賃補助として支給する制度です。
• 社宅の提供
企業が所有または借り上げた住宅を従業員に提供する制度です。企業の近くに社宅を用意することで、通勤時間を短縮し、ワークライフバランスの向上につながります。
• 住宅ローン利子補給
持ち家を購入する従業員向けに、住宅ローンの利息の一部を企業が負担する制度です。
従業員の健康管理のサポートを行います。身体的にも精神的にも健康が支えられることで、従業員は安心して働き続けることができるでしょう。
• 健康診断、人間ドックの補助
健康診断の費用を会社が負担することで、従業員の健康維持を促進します。
• フィットネスジムの利用補助
ジムの利用料の一部を企業が負担し、運動習慣をサポートします。
• メンタルヘルスケア
ストレスチェックやカウンセリングサービスを提供し、メンタルヘルス対策を行います。
育児や介護は多くの人にとってライフステージの中で直面する可能性のある出来事です。従業員が安心して育児や介護をしやすいようにサポートを行います。
• 社内保育園・託児所の設置
社内に保育園を設置し、育児中の従業員が働けるようにサポートします。
• 育児休業制度の充実
法定の育児休業よりも長い期間の休業を認めたり、復職しやすい環境を整えたりする企業もあります。
• 介護休暇・介護サービス補助
高齢の親族を介護する従業員向けに、介護休暇の取得支援や介護サービスの補助を行います。
健康経営の観点から、従業員の健康を食事面からサポートします。
• 社員食堂の設置
安価で栄養バランスの取れた食事を提供することで、従業員の健康を栄養面からサポートすることができます。
• 食事補助(チケット・クーポン)
コンビニやレストランで使える食事補助チケットを提供する企業もあります。
従業員のキャリアアップや自己啓発のサポートを行います。
業務に必要な知識を従業員が取得し現場で発揮することで、組織の生産性向上にも直結します。
• 資格取得支援
業務に必要な資格の取得費用を会社が負担する制度です。
• 研修・セミナー費用補助
社外の研修やセミナーへの参加費を補助し、スキルアップを支援します。
社内イベントやサークル活動を通じて、ワークライフバランスの充実をサポートします。
• 旅行補助
従業員の旅行費用の一部を会社が負担する制度です。
• サークル活動、親睦会
業務以外の場で交流をすることで、社内のコミュニケーションが活性化します。
従業員の住宅から職場までかかる交通費を資金サポートします。
• 通勤手当の支給
公共交通機関を利用する従業員以外にも、自転車やマイカー通勤でも距離に応じて手当てが支給されることもあります。交通費を全額支給したり、定期券の購入費用を負担したりする企業もあります。
近年、女性の健康課題に対する意識の高まりとともに、フェムテックを活用した福利厚生の重要性が増しています。しかし、現状では企業の導入率は18.2%にとどまっており、まだ十分に普及しているとは言えません。
一方で、「フェムテックに関する福利厚生を充実させてほしい」という要望は93.2%に達しており、多くの人がより充実した支援を求めていることが明らかになっています。
出典:「もっと話そう! Fem&」プロジェクト、「フェムテックに関する意識調査」リリース(2023年4月)(宝島社)(2025年2月18日使用)
女性の健康課題をテクノロジーで解決するフェムテックを福利厚生に導入することで、女性が働きやすい環境を整えることにつながります。
法定外福利厚生の中には、一定の条件を満たせば給与所得として課税されない(所得税がかからない)扱いとなるものがあります。具体的には個別の判断となりますが、主な条件は以下のとおりです。
• 全従業員に公平に提供されていること
• 既定のある項目について上限を超えていないこと
• 福利厚生にかかる費用が社会通念上、妥当な範囲であること
• 現金や換金性の高いもの以外の経済的利益であること
例えば、社員食堂の食事補助や健康診断の補助は、全従業員に公平に提供される必要があります。また通勤手当やレクリエーション旅行や研修旅行などは、上限額が設定されているため超えないことが重要です。
法定外福利厚生は、企業が独自に導入できる福利厚生制度です。住宅支援や健康サポート、育児・介護支援など、多様な種類があります。
福利厚生で女性の健康課題をテクノロジーで解決するフェムテックの導入を望む声は少なくありません。この機会に、フェムテックの導入を検討してはいかがでしょうか。
監修者
大迫 鑑顕
千葉大学大学院医学研究院精神医学 特任助教
Bellvitge University Hospital, Barcelona, Spain
医学博士、精神保健指定医、日本精神神経学会認定精神科専門医・指導医、日本医師会認定産業医、公認心理師
あすか製薬 フェムナレッジでは、女性従業員の活躍を推進するサービスを導入したい企業の皆さまや今後女性特有の健康課題に関する取り組みを検討されている企業の皆さま向けに動画研修サービスをご提供しております。
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