2025.04.23
現代社会において、女性の社会進出は重要なテーマの一つです。
女性の社会進出は労働力不足の解消や経済成長に貢献するだけでなく、企業にもさまざまな良い効果をもたらします。
一方で、仕事と家庭の両立の難しさや、管理職に占める女性の割合の低さなど、乗り越えるべき課題も少なくありません。
この記事では、女性の社会進出の現状と課題を説明し、歴史的背景も紐解いていきます。また、女性の社会進出を実現することによる効果や、企業ができる取り組みも紹介します。
「女性の社会進出」とは、女性が社会に出て活躍する機会が増えていくことを意味します。
性差のない社会や経済成長などの実現に、女性の社会進出は必要不可欠です。
ここでは、女性の社会進出における現状と課題を、厚生労働省の調査結果をふまえて説明します。
厚生労働省の「令和5年版働く女性の状況」によると、令和5年の女性の労働力人口は3,124万人で、労働力人口全体に占める割合は45.1%でした。
前年と比べて労働力人口数は28万人増加しており、働く女性の数が増えていることがわかります。
【働く女性の推移(過去4年間のデータ)】
女性労働力人口数 | 労働力人口総数に占める女性の割合 | |
---|---|---|
令和2年 | 3,063万人 | 44.4% |
令和3年 | 3,080万人 | 44.6% |
令和4年 | 3,096万人 | 44.9% |
令和5年 | 3,124万人 | 45.1% |
出典:厚生労働省「令和5年版働く女性の状況」
また、女性が働くことに対する意識も、大きく変化しました。
内閣府の「男女共同参画社会に関する世論調査(令和4年度)」で、「こどもができても、ずっと職業を続ける方がよい」と答えた人は59.5%と、過半数を超えています。
【女性が職業をもつことに対する意識】
「女性は職業をもたない方がよい」 | 0.7% |
「結婚するまでは職業をもつ方がよい」 | 2.6% |
「こどもができるまでは、職業をもつ方がよい」 | 7.7% |
「こどもができても、ずっと職業を続ける方がよい」 | 59.5% |
「こどもができたら職業をやめ、大きくなったら再び職業をもつ方がよい」 | 27.1% |
出典:内閣府「令和4年度男女共同参画に関する世論調査」
とくに30〜60代では「こどもができても働き続けるべき」と考える人が多いことがわかっています。
単に女性の社会進出が進んだからではなく、「仕事を続けるのが当たり前」という意識が広がったといえるでしょう。
女性の社会進出は進んでいるものの、昇進や雇用形態において、依然として多くの課題が残っています。
とくに女性管理職の割合が低く、非正規雇用の割合が高いのは、解決すべき課題です。
管理職に占める女性の割合を、データで見てみましょう。
項目 | 割合 |
---|---|
プライム市場上場企業の女性役員比率 | 13.4% |
G7諸国・OECD諸国の女性役員比率(平均) | 29.6%~38.8% |
前年は11.4%で増加はしているものの、女性役員比率は約1割にとどまっています。海外と比較すると、非常に少ない割合です。
出典:男女共同参画局「企業における女性登用の現状」
女性の社会進出が進む大きなきっかけとなったのが、1985年に成立した「男女雇用機会均等法」です。
男女雇用機会均等法は、以下において、女性であることを理由に男性と差別することを禁止しています。
● 採用
● 昇進
● 教育訓練
● 福利厚生
● 退職や解雇
たとえば、総合職と一般職のうちどちらかの性別のみを募集することや、昇進の条件を男女で分けることなどは禁止です。男女雇用機会均等法により、雇用管理のあり方が大きく変わりました。
さらに、2015年には「女性活躍推進法」が成立し、働きたい女性が存分に能力を発揮できる環境づくりを目的に、常用労働者が301人以上の国・地方公共団体・民間事業主に対し、以下の取り組みが義務付けられました。
● 女性の活躍推進に向けた行動計画の策定・公表(数値目標を含む)
● 女性の職業生活に関する情報の公表
その後、2019年の法改正により、対象が101人以上300人以下の事業主にも拡大され、2022年から施行されています。
また結婚や育児などのライフイベントは、女性の社会進出に大きく影響しますが、「育児・介護休業法」の改正も進められています。
【育児・介護休業法の改正内容(2025年4月施行予定)】
内容 | 詳細 |
---|---|
柔軟な働き方の実現 | 子どもの年齢に応じた働き方の選択肢を拡大 |
育児休業の取得状況公表義務の拡大 | 企業の育児休業取得率の透明化 |
仕事と介護の両立支援 | 介護離職を防ぐための制度を強化 |
改正により、子育てや介護をしながらでも働き続けやすい環境が整い、ライフステージに応じた柔軟な働き方が可能になることが期待されています。
女性が社会に出て活躍することは、経済の活性化や企業の成長に大きな影響を与えます。
本章では、女性の社会進出がもたらす効果として、以下にポイントを絞り解説します。
● 大きな経済効果がある
● 企業にも利益が生まれる
具体的にどのような効果があるのか、詳しく見ていきましょう。
厚生労働省の「女性の職業生活における活躍とマクロ経済」によると、日本人女性は、経済成長や社会福祉の向上を目的とした国際機関であるOECD(経済協力開発機構)の加盟38か国の中でトップクラスの学力です。
とくに、数学的・科学的リテラシーではOECD加盟国中1位であり、世界的に見ても高い能力を持っていることがわかります。
優れたスキルを活かし、女性がより多くの分野で活躍できれば労働の質が向上し、日本の経済効果を高める可能性があります。
また、人口減少により日本の労働力は減少しています。女性の社会進出が進めば、働き手の不足を補い、経済全体の安定につながる可能性があるでしょう。
出典:厚生労働省「女性の職業生活における活躍とマクロ経済」
女性の活躍は、企業にとっても大きな利益をもたらします。具体的には以下のような良い影響が見込めます。
● 多様な人材が加わることで、新しいアイデアやイノベーションが生まれる
● ワークライフバランスの充実により、従業員の定着率が向上する
● 女性の活躍推進に積極的な企業は、株式パフォーマンス(株価の動きや株主に対する利益の出し方を示す指標)が良い傾向にある
経済産業省の資料によると、とくに、女性役員比率が高い企業では、経営指標が良い結果を示すことがわかっています。
また、育児・介護支援に力を入れている企業では、何も対策をしていない企業と比べて、粗利益率が2倍以上高いというデータもあります。
女性が活躍しやすい企業ほど働きやすく、企業全体の利益につながっているといえるでしょう。
出典:経済産業省「成長戦略としての女性活躍の推進」
女性が社会で活躍し、企業にもプラスの効果をもたらすためには、職場環境の整備が欠かせません。
政府が推奨している「仕事と生活の調和推進のための行動指針」では、以下の3つの取り組みが重要とされています。
● 柔軟な働き方を実現する
● 職場の意識改革を行う
● 男性の子育てへの関わりを支援する
一つずつ、詳しく解説します。
女性が仕事を続けやすくするには、勤務時間や働き方の柔軟性を高める制度が必要です。
企業は、従業員がライフステージに応じて働きやすい環境を提供することで、長期的なキャリア形成を支援できます。具体的には以下のような取り組みが進められています。
● 短時間勤務制度で育児・介護と仕事を両立しやすくする
● フレックスタイム制度で始業・終業時間を柔軟に調整する
● テレワークを導入し、通勤時間の削減や家庭との両立を支援する
また制度を導入するだけでなく、実際に社員が安心して利用できる環境を整えることが重要です。
管理職への研修やガイドラインの策定など、制度の利用促進への企業の積極的なサポートが求められます。
柔軟な働き方の制度が整っていても、実際に活用されなければ意味がありません。
制度を利用したくても「職場の雰囲気が利用を許さない」「上司の理解が得られない」といった理由で、実際に利用できないケースもあります。
起こる問題例としては、以下のようなものが挙げられます。
● 短時間勤務のはずが、実際には残業が当たり前になっている
● テレワークを申請しづらい雰囲気がある
● 育児・介護支援制度を利用すると、昇進に不利になると感じる
こうした課題を解決するには、経営層や管理職が率先して制度を活用することが重要です。
実際に利用することで「制度を使っても問題ない」というメッセージを社内に発信できます。
また、評価制度の見直しも必要です。「働く時間が短い=評価が下がる」という考えをなくし、成果を適正に評価する仕組みを整えることが求められます。
制度の理解を深めるには、社内研修や説明会の実施がおすすめです。ぜひ、実施に取り組んでください。
男性の育児参加を促すための環境整備も進める必要があります。
育児は女性だけの役割ではなく、男女ともに関わるべきものです。
企業には男性が育児に参加しやすい制度を整え、利用を促進する取り組みが求められます。
厚生労働省の「若年層における育児休業等取得に対する意識調査」によると、育児休暇を取得したい男性が87.7%、半年以上の育児休暇を希望する男性は約30%にのぼります。
関心は高まっているものの「職場の理解が得られない」「キャリアに影響が出る」といった理由で取得をためらうケースが少なくありません。
企業が男性の育児参加を促すには、以下のような取り組みがおすすめです。
● 「パパ・ママ育休プラス」活用促進
● 地域のスポーツ活動や自然体験、文化活動への親子での参加を促す など
男性が子育てに参加するきっかけを企業が提供すれば、企業のワークライフバランスが向上し、結果として女性の社会進出につながっていきます。
働く意欲のある女性の増加や女性活躍推進法、育児・介護休業法などの制度の改正により、女性の社会進出は進みつつあります。
しかし、管理職や正規雇用の割合に着目すると女性の割合は少なく、依然課題が残ったままです。
女性の活躍を後押しするには、多様な働き方を実現するための制度の導入や職場の意識改革を進め、働きやすい雰囲気を作るなどの取り組みが重要になります。
こうした取り組みを進めることで、女性が活躍しやすい職場が増え、企業全体の成長にもつながるでしょう。
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