2025.04.23
近年は「女性も働きやすい社会になった」と言われるようになりましたが、本当にそうでしょうか。産休や育休の復職後に、キャリアを諦める女性は少なくありません。また、管理職に挑戦したくても、前例が少ないために難しいと感じる女性もいるのが現状です。女性の活躍は企業の成長だけでなく、社会全体の活性化につながる重要な課題です。
この記事では、女性の活躍が必要とされる理由とメリット、企業が取り組むべき施策について解説します。
女性の活躍が必要とされる背景には、以下のような日本社会の状況があります。
● 少子高齢化
● 女性活躍推進法の施行・改正
● 求められるジェンダー平等
以下で詳しく見ていきましょう。
日本の人口は、少子化に伴い減少し続けています。国立社会保障・人口問題研究所が、2070年には日本の総人口が9,000万人を下回るという予測を発表しました。
高齢化も進んでおり、団塊の世代が75歳以上となる2025年には、75歳以上の方が全人口の約18%になるとされています。さらに、2040年には人口の約35%が65歳以上、つまり人口の3人に1人以上が高齢者になるとされています。
労働力不足が、今後ますます深刻化すると予想できるでしょう。厚生労働省のデータによると、働く女性は増加しているものの、依然として管理職や専門職は少ない状況です。女性の就業率を上げることで、労働力不足を補い、経済の活性化につなげることが期待されています。
出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」
厚生労働省「働く女性の状況(令和5年)」
女性の社会進出を促進するため、2016年4月に「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(通称:女性活躍推進法)が施行されました。
女性活躍推進法の主な特徴は、企業に対して具体的な行動計画の策定と情報公開を求めている点です。
従業員101人以上の企業には、「事業主行動計画」の策定・届出、および女性の活躍に関する情報公表が義務付けられています。行動計画には、自社の女性活躍の状況把握・課題分析、数値目標の設定、取組内容と実施時期を盛り込む必要があります。これにより、企業が自社の状況を客観的に分析して、計画的に女性が活躍できる環境を整えることが期待されています。
同法は2022年4月に改正され、従業員301人以上の企業に対して、男女の賃金差異に関する情報公表が義務化されました。同一労働同一賃金の原則を徹底することで、男女間の格差是正を進めることが目的です。
出典:厚生労働省「女性活躍推進法特集ページ」
国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)には、「ジェンダー平等を達成し、すべての女性および女児のエンパワーメントをおこなう」という目標が掲げられています。女性の活躍推進は国際的な課題です。
そんな中、現在の日本は、ジェンダー平等の実現に多くの課題があります。世界経済フォーラムが発表した2024年度の「ジェンダーギャップ指数」において、日本は146カ国中116位でした。教育と健康は世界トップクラスですが、政治と経済分野での女性の進出が遅れていると指摘されています。
ジェンダー平等の実現は女性の活躍推進とも大きく関係しており、社会全体の課題として取り組む必要があります。
出典:男女共同参画局「男女共同参画に関する国際的な指数」
女性の活躍推進は、社会や企業に次のメリットをもたらします。
● 優秀な人材が確保できる
● 職場の活性化
● 経営の多様化
● イメージアップにつながる
具体的なメリットを詳しく見ていきましょう。
女性が活躍する企業は、優秀な人材を確保しやすくなります。女性が活躍する企業は、ワークライフバランスや柔軟な働き方が実現していることが多く、働きやすい職場環境が整っています。長期的に働き続けたいと考える社員も多くなるでしょう。
たとえば、ある金融・保険業の企業では、女性管理職比率の目標を設定し、女性社員のキャリア支援をおこなった結果、新卒採用者の定着率が向上しました。採用活動においても良い感触につながっています。
また、女性が活躍する企業は公平な評価基準を設けていることが多いです。社会的に「公正な企業」と認識され注目が集まり、幅広い層から優秀な人材を集められます。
優秀な人材の確保により、企業の持続的な成長と競争力強化が期待できるでしょう。
女性が働きやすい職場を作るには、制度の充実や多様な勤務体制の導入が必要になってきます。
制度の例には、育児や介護を抱える女性社員が仕事と両立をしやすくする在宅勤務制度や、短時間勤務制度が挙げられます。
産休・育休の取得を促進する取り組みや復職支援プログラムなどの施策も、女性が活躍する企業には必要でしょう。
多様な制度が整備されると、女性だけでなく全ての社員が安心して仕事を続けやすくなります。職場への満足度も上がるでしょう。モチベーションが高まることで、生産性の向上が期待できます。
社会情勢は日々変化しています。消費者ニーズも細分化し、外国人のニーズにも対応する必要がでてきました。価値観も変わり、社会的な平等や公平性に対する関心が高まっています。企業にも多様性が必要です。女性が活躍する企業は、男性と女性、両方の視点が入るため多様化する社会に対応しやすく、市場での競争力も高まります。
経済産業省の資料からも、女性役員比率が高い企業は、経営指標が良いことがわかっています。経営の多様化は、新たな市場開拓や商品開発、企業の持続的な成長を支える重要なポイントといえるでしょう。
参考:経済産業省「成長戦略としての女性活躍の推進」
優れた女性活躍の取り組みを実施している企業は、「えるぼし認定」「プラチナえるぼし認定」と呼ばれる厚生労働大臣の認定を受けられます。
えるぼし認定を受けると、認定マークを自社の商品や名刺、パンフレット、広告などに使用できます。女性が活躍できる企業としてアピールでき、社会的評価が高まるため、ブランド価値の向上が期待できます。さらに、厚生労働省のWebサイトに「えるぼし認定企業」として掲載されるため、知名度アップにもつながります。
また、えるぼし認定は、ハローワークの求人活動にも利用可能です。女性が活躍している企業とアピールできるため、キャリアアップを目指す意欲の高い人材の確保にもつながるでしょう。
出典:厚生労働省「女性活躍推進法特集ページ(えるぼし認定・プラチナえるぼし認定)」
女性の活躍を推進するためには、企業の積極的な取り組みが重要です。採用の機会を増やすだけでなく、女性が長期的に働きやすい制度や、キャリアアップの仕組みを整える必要があります。以下で具体的な取り組みを詳しく紹介します。
女性の活躍推進において、ロールモデルとなる女性管理職の登用や採用の強化は重要です。
たとえば、女性管理職が少ない企業では、キャリアアップを目指す女性社員が「自分には昇進のチャンスがない」と感じ、転職を検討する可能性があります。
一方で、積極的に女性管理職を増やしキャリアパスが明確に見える企業では、若手女性社員の大きな励みとなり、キャリアビジョンを描きやすくなるでしょう。
また、新卒採用でも、女性が応募しやすい環境を整備する必要があります。女性の応募者が少ない職種ではインターンシッププログラムを充実させたり、女性社員による学生向けセミナーを開催したりすることで、優秀な女性人材の確保につながるでしょう。ほかに、中途採用において女性を積極的に採用し、即戦力となるロールモデルを確保する取り組みも効果的です。
女性のキャリアアップを支援するためには、公平な評価制度の構築と企業側の支援が重要です。とくに、結婚・出産・育児・親の介護などライフイベントを経験する女性社員へのサポートは欠かせません。
評価制度の見直しでは「長時間労働=成果」ではなく、業績やスキルの成長度を総合的に評価する制度の導入が必要です。たとえば、時間あたりの生産性や質の高い業務能力を評価の指標とするなど、時間的制約のある社員でも公平に評価される仕組みづくりが重要です。
女性社員向けのメンター制度の導入も効果的でしょう。女性管理職が若手女性社員のメンターとなり、キャリア相談や業務上の悩みに対応することで、若手女性社員の離職率の低減にもつながります。
ライフイベントへのサポートとしては、産休・育休前後の面談制度や、復職支援プログラムの充実が挙げられます。復帰後にスムーズに業務へ戻れるよう、最新の業務知識を学べるリスキリングの制度を設けるのも効果的です。
なお、キャリアアップ支援では女性特有の健康課題へのサポートも重要です。生理痛(月経痛)による体調不良や更年期症状による疲れやすさなど、女性特有の健康課題が仕事に影響を与える場合が多くあります。
症状は個人差が大きく、痛みや不調があっても「我慢するべき」と無理をする女性は少なくありません。無理を続ければパフォーマンスも下がるでしょうし、心身に大きな負担がかかります。キャリアアップも難しくなるでしょう。
女性のキャリアアップを支援するには、健康課題にも配慮する必要があります。
出典:厚生労働省「職場における女性特有の健康課題」
女性が活躍できる職場環境を整えるには、柔軟な働き方を可能にする制度の拡充が不可欠です。代表的な取り組みとして、以下のような制度があります。
● 時短勤務制度:育児や介護をしながら働けるように勤務時間を短縮する
● フレックスタイム制:出退勤時間を柔軟に調整できるようにする
● テレワークの導入:通勤負担を減らし、家庭と仕事の両立をサポートする
● 復職支援プログラム:育休後などに最新の業務知識をリスキリングする機会を作る
● 健康支援制度:女性特有の健康課題(生理痛(月経痛)や更年期症状)に配慮し、適切なサポートを提供する
先にも少し触れましたが、健康支援制度は重要なポイントの一つです。女性特有の健康課題は、仕事に大きく影響します。また、ライフステージによって、ホルモンバランスの変化による体調不良を経験する機会が女性には多くあります。企業が健康相談窓口を設置したり、生理休暇の取得を促進したりすることで、より働きやすい環境を整えられます。
制度が拡充すれば、女性社員が長期的にキャリアを築きやすい環境が整い、企業全体の生産性向上にもつながるでしょう。
女性の活躍推進は、少子高齢化や労働力不足といった社会課題の解決に不可欠です。女性の活躍は、優秀な人材の確保、職場の活性化、経営の多様化、企業イメージの向上など、多くのメリットをもたらします。
企業は女性の採用・登用の拡大、キャリアアップ支援、柔軟な勤務制度の導入など、多角的なアプローチが重要です。女性が長期的にキャリアを築きやすい環境を整えることで、企業全体の生産性向上につながるでしょう。
女性の活躍推進を目指す上で、女性特有の健康課題に対する理解と支援が、長期的な活躍のサポートになります。
「フェムナレッジ」は生理(月経)や更年期症状などの女性特有の健康情報を提供し、自己管理をサポートするサービスです。女性の活躍を健康面から支える強い味方となるため、利用を検討してみてください。
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