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プレコンセプションケアの必要性は?概要や目的・実践方法も紹介

2025.05.07

近年、妊娠前からの健康管理を重視する「プレコンセプションケア」が、社会全体の健康向上にもつながるとして注目されています。
プレコンセプションケアは女性個人の健康管理にとどまらず、就業継続やキャリア形成にも好影響を与えるため、企業のサポートも拡大しています。
本記事では、プレコンセプションケアの概要や目的、実践方法について解説し、その重要性を具体的に紹介します。

プレコンセプションケアについて

プレコンセプションケアが注目された背景には、アメリカや世界保健機関(WHO)による推奨に加え、日本国内での取り組みの拡大があります。
2015年には国立成育医療研究センター内に「プレコンセプションケアセンター」が開設され、妊娠前から健康管理を行うことの意義が広く認識されました。
ここでは、プレコンセプションケアの基本的な考え方や目的について、具体的な事例を交えながら詳しく解説していきます。

プレコンセプションケアとは

プレコンセプションケア(略称:プレコン)とは、妊娠前に行う健康管理のことで、生活習慣の見直しや栄養管理、疾病の予防・治療が含まれます。対象は女性だけでなく、妊娠を希望するカップルにも広がっており、食事の調整や基礎疾患の治療計画の確立が重要視されています。
医療機関では、BMIや貧血の有無、慢性疾患の影響、生活習慣を評価し、一人ひとりの健康状態に応じた管理方法を提案しています。例えば、流産や早産対策として禁煙外来での支援が推奨されています。
妊娠前から栄養状態や健康状態を管理しておくことで、妊娠・出産の負担を軽減し、より安心できる環境で子どもを迎えやすくなります。
若い世代の健康維持や生活習慣病の予防にも役立つため、自治体や企業が健康支援を強化し、医療機関と連携したプログラムを提供する動きが広がっています。

出典:「プレコンセプションケアセンター

プレコンセプションケアの目的

プレコンセプションケアの目的は、若い世代の健康状態を向上させ、生活の質を高めることです。将来的な生活習慣病の予防や慢性疾患の管理を進めることで、妊娠・出産時の合併症を減らし、次世代の子どもの健康を維持しやすい環境を整えることも含まれます。
例えば、食事の栄養バランスを整えることで、貧血や低血糖の症状が軽減され、仕事や学業で集中力を維持しやすくなります。また、高血圧や糖尿病を管理することで、妊娠中の合併症の発生率が下がることも報告されています。

出典:「Hypertension Complicating Diabetic Pregnancies: Pathophysiology, Management, and Controversies

これらの取り組みを進めることで、低出生体重児の割合が減り、アレルギーや生活習慣病の発症率が、一定程度抑えられることが期待できます。社会全体としても、医療費の削減や母子保健制度の充実につながることが期待されています。

プレコンセプションケアの必要性

プレコンセプションケアは、妊娠はもちろん、次の世代の健康を守るためにも重要視されています。以下で、その必要性について解説します。

妊娠には準備が必要

厚生労働省の「国民健康・栄養調査」によると、20代女性の約20%が低体重(BMI18.5未満)に該当し、出生体重2,500g未満の低出生体重児は1980年代から増加傾向で、2005年以降は約9%で横ばいが続いています。一方で、BMI25以上の肥満女性は、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群のリスクが高まります。医療機関では、痩せすぎによる無月経や排卵障害、肥満による合併症のリスクを考慮し、妊娠前からの体重管理が推奨されています。葉酸摂取が不足すると神経管閉鎖障害のリスクが上昇し、鉄分不足は貧血や胎児の成長遅延につながるおそれがあるため、食事の見直しが必要です。
プレコンセプションケアでは、BMIの管理や減塩、糖質制限、適度な運動が勧められています。1日6g未満の減塩や、糖質摂取量を1食あたり40~50g程度に抑えることで、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病のリスクを下げる効果が期待されています。妊娠後期に急激な体重増加が起こると、分娩時の合併症や産後の体調不良につながるため、妊娠前からの生活習慣の見直しが重要です。

出典:「令和5年   国民健康・栄養調査結果の概要
   「葉酸とサプリメント ‐神経管閉鎖障害のリスク低減に対する効果
   「若い世代の健康づくり~プレコンセプションケア~

低いヘルスリテラシーによるハイリスク妊娠の増加

日本の性教育は国際的に見て遅れていると指摘されており、HPVワクチンの接種率が低いことや、がん検診の受診率が低いなどの問題が生じています。性感染症や子宮頸がんを予防する知識が不足したまま成人期を迎えると、適切なワクチン接種の機会を逃してしまいます。
また、妊娠中の喫煙やアルコール摂取を軽視する傾向があり、ハイリスクな妊娠につながりやすいともいわれています。

 

こうした背景を踏まえ、プレコンセプションケアの観点から、医療機関や自治体の啓発により、若い世代が早期に検診やワクチン接種を受ける取り組みが進められています。
実際に、学校教育で性教育を受ける機会がなかった人が、就職後の健康診断で自身の健康リスクに気づき、予防策を講じる事例も報告されています。例えば、健康経営を推進するある企業では、定期健康診断後に保健師による個別面談を全従業員に実施し、セルフケアの向上や疾病の早期発見・早期予防を支援しています。 
このように、ヘルスリテラシーを高めることは、ハイリスク妊娠の減少だけでなく、生まれてくる子どもの健康リスク低減にもつながります。

次の世代の健康を守るために

妊娠前に母体の健康管理に努めることで、胎内環境が整うことで順調に成長しやすくなり、その後の人生において健康的に過ごせることが期待できます。
厚生労働省によると、妊娠前から適切な量の葉酸を摂取することで、神経管閉鎖障害の発症リスクが低下すると報告されています。母親の栄養状態が悪いと低出生体重児のリスクが高まり、新生児期の健康問題や将来的な生活習慣病の発症につながる可能性があるため、妊娠前からの食生活の改善や体調管理が重要です。

出典:「神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について

妊娠前から健康を維持し、妊娠中も適切な栄養を取ることで、産後の回復が早まり、育児負担の軽減にもつながります。こうしたメリットから、自治体や医療機関ではプレコンセプションケアの普及を進め、若い世代に向けた健康管理の啓発活動を強化しています。

プレコンセプションケアが社会に与える影響

ここでは、プレコンセプションケアが社会に与える影響を、3つの視点から解説します。

女性の活躍と経済成長

プレコンセプションケアの普及は、女性の労働市場への参加を促し、経済成長へとつながります。妊娠前から健康を維持し、出産後も復職しやすい環境を整えることで、女性のキャリア継続率向上につなげる動きもあります。
例えば、女性特有の健康課題への対策を推進する企業では、妊娠・出産・育児に関する健康相談を実施しています。ほかにも、女性の健康づくりの方針を定め、女性特有の健康課題に取り組み、離職防止や企業の人材確保、生産性向上につなげている企業もあります。
また、フレックスタイム制や在宅勤務を導入した企業では、従業員の満足度向上や優秀な人材の確保につながるとの調査結果もあります。

出典:「令和5年度「なでしこ銘柄」注目企業

社会全体の安定に貢献

少子化が進む中、健康的な妊娠と出産の実現は、人口減少を緩和する重要な施策とされています。プレコンセプションケアを実践することで、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病のリスクを低減し、母子ともに健康な出産が期待できます。これにより、新生児の合併症発生率が下がり、医療費の抑制にも貢献すると考えられています。
また、妊娠・出産時のリスクが軽減されることで、家庭内の負担が軽減され、育児環境の安定につながると考えられます。育児に伴う離職やキャリア中断が抑えられれば、共働き世帯の所得を維持しやすくなり、家計の安定と消費の活性化にもつながります。
政府は「性と健康の相談センター事業」を全国で展開し、性や妊娠に関する正しい知識の普及やプレコンセプションケアの推進を支援しています。

心理的安定で女性が輝く

プレコンセプションケアを受けることで、妊娠や出産に対する不安が軽減され、精神的な安定が得られる可能性が期待されます。
例えば、栄養指導や血液検査を通じて自身の健康状態を把握しておくことで、妊娠後の体調管理がスムーズになり「どの時期に何をすべきか」が明確になります。
近年、一部の企業では、管理栄養士や助産師とオンラインで相談できるサービスを導入し、従業員のメンタルサポートを強化しています。こうした支援を受けながら妊娠・出産を迎えた女性は、職場復帰しやすく、キャリアを継続する傾向があるとされています。妊娠中のストレス軽減にもつながり、母体の健康維持や胎児の発育にも良い影響を与えることが研究で示されています。
プレコンセプションケアの普及により、女性が自身のライフプランを前向きに考えられる環境が整います。これにより、出産後も安心して社会で活躍できる女性が増え、企業や社会全体の生産性向上にもつながることが期待できます。

プレコンセプションケアの実践方法

プレコンセプションケアを実践する際は、まず自身の健康状態を把握し、必要な改善を進めることが求められます。
国立成育医療研究センターが提供する「プレコンノート」では、既往症やワクチン接種歴を整理し、風疹・麻疹・HPVなどの感染症対策を確認できます。特に、妊娠中の感染は胎児に影響を及ぼすため、事前の接種状況の確認が必要です。
次に、生活習慣の見直しが求められます。睡眠時間を確保し、ウォーキングやストレッチなどの運動を習慣化することで、ホルモンバランスや代謝の維持につながります。食事面では、葉酸や鉄分を含む食品を取り入れ、妊娠前から必要な栄養素を確保することが推奨されています。特に葉酸は胎児の神経管閉鎖障害のリスク低減につながるため、厚生労働省も1日400μgの葉酸摂取を推奨しています。
喫煙や過度の飲酒は、卵子の質やホルモンバランスに影響を与えるため、医療機関の指導を受けながら減らしていくことが推奨されます。また、月経周期の乱れや急激な体重変化は、排卵異常やホルモンバランスの乱れにつながり、不妊や妊娠合併症のリスクが高まる可能性があるため、早めに医療機関を受診しましょう。

出典:「プレコンノート
   「神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について
   「女性の飲酒と妊娠

まとめ

プレコンセプションケアは、女性が妊娠前から健康管理を行うことで、自身や子どもの健康リスクを低減し、就業継続や社会参加を支える要素となります。生活習慣や栄養状態の改善により、職場の理解が得やすくなり、仕事の生産性維持にもつながります。

「フェムナレッジ」などの動画学習サービスを活用する企業が増え、女性特有の健康課題に関する知識共有が進んでいます。職場全体で支援体制を整え、安心して働ける環境が構築されることで、女性の活躍が持続しやすくなります。社会全体での支援を強化し、包括的な健康管理の実践が求められています。

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