2025.06.04
「育休から復帰する方を支援するための制度や環境づくりは、どのように行っていけば良いのだろう?」とお悩みではありませんか?
育休から復帰後は、育児と両立して仕事も行わなければなりません。子どもが小さいうちは仕事を休むことも多くなり、働きづらさを感じる従業員も多いでしょう。仕事と育児を両立する難しさから、育休を経て退職を決断する方もいます。
本記事では、育休復帰者が働きやすい職場環境を整備するための方法や手続きについて、詳しく解説します。
育休(育児休業)とは、従業員が子どもを養育するために一定期間休業できる制度のことです。女性が取得するイメージがまだまだ強いかもしれませんが、「育児・介護休業法」にもとづき、男女問わず取得できるようになっています。
育休は法律で定められているものであり、対象となる従業員から申し出があった場合、企業側はこれを拒むことはできません。就業規則に育休に関する項目がなかったとしても、申し出があれば対応する必要があります。
育休中は「育児休業給付金」が従業員に支払われますが、これは雇用保険が財源となっているため、企業が金銭的な負担を背負うことはありません。
出産を経た従業員は、ライフスタイルの変化に不安を抱えていることが多いでしょう。そのため、企業側は育休復帰者に適切な情報提供や支援を行うことが求められます。
なお、「育児休暇」と「育児休業」という言葉は混同されがちですが、厳密には異なるものです。育児休業は育児・介護休業法にもとづく法定の休業制度を指し、育児休暇は法的な定義はなく会社独自の休暇制度の呼称としてよく使われています。
通常は、育児休業のことを略して育休と呼ぶのが一般的です。
従業員が育休から職場復帰する際、いくつかの手続きを行う必要があります。厚生労働省では「育休復帰支援プラン」の策定マニュアルを作成しているため、育休復帰後の手続きが分からない企業は、こちらも参考にしてみてください。
ここでは、育休復帰後に行うべき主な手続きについて6つ紹介します。
復職前面談は、育休復帰者がスムーズに職場へ戻るための重要なステップです。面談では、育休復帰者が希望する働き方や業務内容、勤務時間などについて話し合います。
育休復帰者が抱える不安や懸念点を解消する良い機会となるため、職場環境を整えたいと考えている企業は、必ず行いましょう。
面談のポイントとしては、復帰時期の確認、業務内容や職場環境の変化の説明、短時間勤務制度などの両立支援制度の案内が挙げられます。
加えて、復帰後のサポート体制についても明確に伝えておくことが重要です。企業側は面談でヒアリングした内容をしっかりと考慮し、育休復帰者の希望に沿った職場環境を整備する計画を立てて共有しましょう。面談をするだけで終わらせては意味がありません。復帰後の働き方に面談内容を反映させることが最も重要です。
これにより、育休復帰者の不安を和らげることができます。育休復帰前の面談は、少なくとも復帰予定月の前月には行うことが望ましいです。復帰者から面談の相談がない場合は、企業側から連絡を取り、面談が必要か相談しましょう。
育休復帰者は、復帰する前に「育児休業復職届」または「出勤届(休暇・欠勤・休職)」を提出する必要があります。短時間勤務制度を希望する場合は、「育児短時間勤務申請書」などの提出も必要です。
初めて育休を取得する方の場合、どのような書類の提出が必要なのか把握していない可能性があります。そのため、企業側が主導して必要な書類の提出先や提出期限を説明しましょう。
「育児休業復職届」は、育休の終了と職場復帰を正式に表明する書類です。書式は企業によって異なります。
記入しやすいフォーマットを用意し、必要に応じて記入例を示すなどの配慮をすることが望ましいでしょう。また、「◯◯年◯月◯日に育休から復帰する」との旨は、必ず記載が必要です。
企業は、この情報を元に勤務シフトの調整や業務の引き継ぎ準備を行います。特に、短時間勤務制度を希望する場合は、チームメンバーとの業務分担の調整が必要になるため、余裕をもって「育児休業復職届」を提出してもらうようにするとよいでしょう。
「養育期間標準報酬月額特例」は、3歳未満の子どもを養育する被保険者を対象とした年金制度の特例措置です。育児のために短時間勤務制度を希望したことで給与が減少しても、将来受け取る厚生年金の給付額が減らないようにします。
例えば育休前の標準報酬月額が30万円だった場合、育休復帰後に短時間勤務制度で給与が20万円に減少しても、年金額の計算上は30万円として扱われます。
この特例を利用するためには、「養育期間標準報酬月額特例申請書」を提出しなければなりません。事業主経由で年金事務所に提出します。多くの育休復帰者にとって、この制度は経済的安心感につながる重要なものです。
申請書を提出しておけば、育休復帰後も子どもが3歳に達するまでは、標準報酬月額が育休前の水準で固定されます。養育期間標準報酬月額特例申請書には、被保険者個人番号(基礎年金番号)や養育する子どもの個人番号などが必要です。
記入欄が多い申請書のため、事前に共有しておき申請しやすい状況を整えましょう。
出典:日本年金機構「 6-7:養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置を受けようとするとき」
「育児休業終了時報酬月額変更届」とは、育児休業を終了して仕事に復帰した際に報酬が低下したとき、標準報酬月額を見直すための届出です。この書類を提出することで、社会保険料が改定され、本来支払うべき金額に変更されます。
提出時期は特に決まっていませんが、速やかに提出することが望まれます。育休復帰者は、育児休業終了時報酬月額変更届を企業に提出します。その後、企業が日本年金機構に提出しなければならないので注意しましょう。
現在は、電子申請、郵送、窓口持参の方法が利用可能です。ただし、被保険者以外の方が電子申請を行う場合は、原則として申請者と代理人の両方の電子署名が必要となります。
また、育休中は社会保険料が免除されていましたが、育休復帰に伴い保険料の納付が再開されます。育休復帰者の給与から社会保険料が差し引かれることになるため、復帰前にあらかじめ本人に説明し、収入の見通しを立てられるようにサポートすることも大切です。
育児休業給付金の支給が終了する前に、復職を証明するための書類を提出してもらわなければなりません。育児休業復職届へ記入のうえ提出してもらいましょう。また、予定よりも早く育休から復帰する場合は、育児休業等取得者申出書・終了届も必要です。
書類を受け取ったら、日本年金機構または健康保険組合に提出する必要があります。どちらも提出期限はありませんが、速やかな提出が望ましいとされています。
ある調査によると、育休復帰後に「休業取得前の感覚に戻るのに必要な期間」は、育休の取得期間が長くなるほど、必要な期間も延長する傾向にあります。
育休の期間が1カ月以内の方は「復職後、比較的すぐ」と答えた方が77.2%であったのに対し、1年超えの方ではわずか32.9%しかいません。育休から復帰した従業員が仕事と育児を両立しながら活躍できる環境を整えることは、企業にとって重要な課題といえるでしょう。
育休復帰者が無理なく働き続けられる仕組みづくりは、貴重な人材の流出を防ぎ、組織の多様性を保つことにつながります。ここでは、育休復帰者が働きやすい環境を整えるためのポイントを3つ見ていきましょう。
出典:厚生労働省「3.育児休業等取得による新たな課題 ~職場復帰、継続等」
育児と仕事を両立する難しさは、実際にやってみないと分からないものです。育休復帰者も、復帰してからはじめて「こんなに大変なのか」と痛感することが多いのではないでしょうか。
しかしながら、企業側のサポートがあれば、育休復帰者が働きやすいと感じる環境を作ることが可能です。タイムマネジメントや業務の見える化、ジョブシェアリング、ペア制などを実施することが、育児と仕事を両立しやすい職場環境作りに役立ちます。
ジョブシェアリングはフルタイムで働く労働者1人分の仕事を2人以上で分担すること、ペア制は同時に2人で仕事を行うことです。
これらの体制を整えて、業務を円滑に行えるようにしましょう。また、育休復帰者の業務量や内容も適切に調整することが求められます。特に育休復帰直後は、育児と仕事の両立に慣れるまでの期間であることに配慮する必要もあるでしょう。
育休復帰者が働きやすい環境を整えるためには、多様な働き方の選択肢を用意することが重要です。最も一般的なのは「短時間勤務制度」でしょう。子どもが3歳に満たない従業員から短時間勤務制度の申し出があった場合は、企業がこれを断ることはできません。
基本は、1日の所定労働時間を5時間45分から6時間にすることとなっていますが、従業員の希望にできるだけ合わせることが大切です。
この他、フレックスタイム制度も効果的です。コアタイムを設けつつ出退勤時間を柔軟に調整できるため、保育園や幼稚園の送迎にも対応しやすくなります。
さらに近年では、在宅勤務制度やリモートワークを利用する方も増えてきました。個人の負担を減らすためにジョブペアリングを導入している企業もあります。一人の業務を複数人で分担することで、個人の負担を軽減するものです。
育休復帰後は、育休前に積み上げたキャリアやポジションの維持が困難だと感じる方が少なくありません。育休から復帰した後も、キャリアやポジションを失わず働き続けるために役立つのが、「メンター制度」です。
メンター制度とは、豊富な知識や経験を持つ社内の先輩が、後輩社員に対して行う個別支援活動のことを指します。業務面はもちろんのこと、仕事上の悩みや不安に対する心理的なサポートを受けることも可能です。
育休から復帰した社員に対して、育児と仕事を両立しながらキャリアを築いてきた先輩社員をメンターに割り当てます。育休復帰者は、自分と同じような経験をした先輩社員にいつでも相談できるようになるため、不安や焦りを溜め込むことなく働けるようになる点がポイントです。
2025年4月1日から、育児・介護休業法が改正されました。育児に関して大きく変わった点は5つあります。
1. 子どもの看護休暇の見直し
2. 所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大
3. 短時間勤務制度(3歳未満)の代替措置にテレワークを追加
4. 育児のためのテレワーク導入
5. 育児休業取得状況の公表義務適用拡大
2017年の育児・介護休業法により、最長2歳まで育休を取得できるようになり、2022年には男性の育休取得がこれまでよりも容易になりました。
2025年の改定では、子どもの看護休暇が「看護等休暇」に名称が変更され、小学校3年生修了まで取得できるように変更となっています。
残業の免除も3歳未満の子どもを養育する者から小学校就学前の子どもを養育する者へと適用が拡大されました。
テレワークの導入や、男性の育児休業等取得率、育児休業等の育児目的休暇の取得率の公表義務の対象も拡大され、これまでよりも子どもを持つ方が働きやすい環境が整えられることが期待されています。
出典:厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」
育休復帰をスムーズにするためには、復帰者が働きやすい環境を整えておくことが重要です。育児と仕事の両立は簡単なものではなく、両立が難しいと判断した従業員がやむを得ず会社を去る決断をしてしまうこともあります。
離職を防ぐためにも、復職前面談の実施や必要な手続きのサポートを行い、育休復帰者が安心して職場に戻れる環境を作りましょう。
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