2025.06.04
育休復帰日の調整方法に悩んでいませんか?従業員が安心して職場に戻れる環境づくりに難しさを感じている企業も多いのではないでしょうか。
育休復帰日を適切に決めることは、円滑な人材活用と職場環境の整備を行ううえで欠かせない重要な課題です。
この記事では、育休復帰日の決め方に悩んでいる企業に向けて、最適な復帰日の調整方法や考慮すべきポイントについて詳しく解説します。
必要書類の種類や復帰後に利用できる制度なども紹介していますので参考にしてください。
育休復帰日とは、育児休業(育休)を取得していた従業員が職場に戻る初日のことです。さまざまな企業で「育休復帰日」という言葉が使われていますが、法律用語ではありません。
企業にとって、従業員の育休復帰日を適切に設定することは、円滑な人材配置と業務運営を行うために欠かせないものです。
令和4年4月1日から令和5年3月31日までの1年間に育児休業を終了し、復職した女性が取得していた育児休業期間は、以下の通りでした。
12カ月~18カ月未満 | 32.7% |
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10カ月~12カ月未満 | 30.9% |
8カ月~10カ月未満 | 11.4% |
最も多いのは、「12カ月~18カ月未満」で32.7%です。また、同年月日で育児休業を取得し、復職予定だった女性のうち実際に復職した方の割合は93.2%、退職した方の割合は6.8%でした。男性で復職した方の割合は97.3%、退職した方の割合は2.7%という結果となっています。
育休復帰日は、法律で定められた育児休業の取得可能期間を踏まえつつ、従業員の希望や家庭環境、保育園の入園状況などを総合的に考慮して決めることが大切です。
育休復帰日が決まったら、企業側は必要な手続きや書類の準備、職場環境の整備などを行い、計画的に受け入れ体制を整えていく必要があります。
出典:厚生労働省「「令和5年度雇用均等基本調査」結果を公表します」
育休復帰日を決めるにあたって、考慮すべきポイントがあります。最低限押さえておきたいのが、以下の4つです。
● 体調面を考慮する
● 育児時間を考慮する
● 慣らし保育の期間を配慮する
● 社会保険料免除期間を考慮する
特に育休から復帰する社員が女性の場合は、身体的・精神的な状況や子育て環境に配慮した復帰計画が必要です。
育休復帰日を検討する際に忘れずに確認しておきたいのが、従業員の体調面です。特に出産を経験した女性従業員の場合、身体的・精神的に体調が回復しきれていない可能性があります。
個人差はありますが、妊娠前と同じくらいまで体調が回復するには、3カ月から1年ほどかかるといわれることが一般的です。 産後のホルモンバランスの変化や睡眠不足、精神的ストレスなどもあり、すぐに回復できないことがあります。
また、小さな子どもはすぐに体調を崩しやすく、希望どおりに復帰するのが難しい場合もあります。そのため、産後の体調や子どもの状態を考慮し、体調が整ったタイミングで復帰を決めると良いでしょう。
育児・介護休業法では、申し出があれば子どもの看護休暇を取得してもらったり深夜労働の制限を行ったりする必要があると定められています。場合によっては、短時間勤務制度や時差出勤など、段階的な復帰プランを用意することも必要でしょう。
出典:厚生労働省「中小企業のための「育休復帰支援プラン」 策定マニュアル」
女性の従業員の中には、母乳育児をしながら育休から復帰するケースもあります。育休の復帰に合わせてミルクでの育児に切り替えている方もいますが、母乳からミルクへの切り替えは簡単ではないとも言われます。
母乳育児をしている女性が職場から復帰する際、希望があった場合は通常の休憩時間以外に授乳その他の世話をするための育児時間を1日1~2回(1回30分)与えることが労働基準法で定められています。これは、生後1年に達しない子どもを育てている場合に適用されます。
授乳を継続している女性が育休から復帰する場合は、授乳その他の世話をするための育児時間を確保することも、忘れないようにしておきましょう。
企業は、この法定の育児時間に加えて柔軟な勤務体制を整え、従業員が育児と仕事を両立しやすい環境を整えることが重要です。育休からの復帰日を決める際は、従業員の育児状況を詳しくヒアリングし、必要な育児時間を確保できるよう配慮しましょう。
出典:厚生労働省「中小企業のための「育休復帰支援プラン」 策定マニュアル」
育休期間中は、基本的に子どもを保育園に預けられません。そのため、保育園に初めて登園する日=従業員が職場に復帰する日となることが一般的です。ただし、保育園に預けているからといって初日からいきなりこれまでどおりの仕事ができるわけではありません。
保育園によっては、集団生活に少しずつ適応させるために「慣らし保育」を実施するケースがほとんどです。 初日は1時間、次の日は2時間といった具合に、徐々に預かる時間を長くしていく方法を取ることで、子どもへの負担を最小限にします。
1~2週間程度の慣らし保育の後、通常どおりの時間で子どもを預けられるようになります。慣らし保育の期間中は、会社が定める勤務時間での就労が難しいことが多いため、就労時間には十分に配慮しましょう。
育休から復帰して最初の1~2週間は慣らし保育があることを考え、柔軟な勤務体制の実施も考慮する必要があります。保育園によっては、育休終了前に慣らし保育を始められるところもあるため、復帰日については従業員とよくすり合わせを行うことが大切です。
出典:厚生労働省「育児休業期間終了時における保育所入所の弾力的取扱いについて」
育休中は、一定の条件を満たせば社会保険料が免除されます。ただし、免除されるのは育休期間中のみで、復帰後は支払いの義務が発生します。社会保険料が免除される具体的な期間は、育休等が始まる月が属する月から終了日の翌日が属する月の前月までです。
復帰日が月の途中や月末の場合はその月の保険料が請求されるため、事前の従業員への説明が求められます。場合によっては、従業員が社会保険料の負担が過大にならないように復帰日を調整する必要もあるでしょう。
社会保険料は日割り計算されず、月単位で決まります。例えば、4月15日に育休から復帰すると、4月いっぱい分の社会保険料を支払わなければなりません。育休復帰日を翌月5月1日からにすれば、4月分の社会保険料は免除されます。
従業員側からすると「負担をできるだけ増やしたくない」と考えるのが一般的なので、社会保険料のことも考慮して育休から復帰する日を決めるのが望ましいでしょう。
出典:日本年金機構「令和4年10月から育児休業等期間中における社会保険料の免除要件が改正されました」
育休復帰日を決めるためには、以下のステップを踏みます。
● 復帰日を調整する
● 必要書類を提出する
● 復帰後の制度を説明する
育休からの復帰をスムーズに進めるためには、計画的な準備が欠かせません。ここでは上記の3つのステップについて紹介します。従業員と企業の双方にとって良い職場環境を整えましょう。
育休から復帰するためには、保育園の入所が決まっている必要があります。通常、4月入園に向けて保育園に申し込んでいる場合、1月から2月頃に入園可否の通知が届きます。
そのため、1月から2月頃には保育園が決まったかの確認をし、育休復帰日を話し合って決めるようにしましょう。
育休復帰日が決まったら、業務スケジュールなどを相談し、担当業務やチーム体制を整えておきます。
なお、途中から入園する場合は通知が届いてから入園するまでに1週間程度しか時間がありません。従業員本人も内定が貰えるか分からない状態で過ごしています。
「いつ分かるの?」「いつから復帰できるの?」と急かすことがないよう、従業員を思いやる気持ちをもって復帰日の調整を行いましょう。
育休から復帰する際、「育児休業終了報告書」や「育児休業復帰届」などが必要です。育児休業終了報告書は、当初の予定よりも早く育休から復帰する場合に提出してもらうことになります。
この他、従業員が別の子のために産前産後休業を取ったり、養育している子どもが死亡したりした場合も必要です。なお、育休が終了するよりも前に産前産後休業を開始した場合は、提出の必要はありません。
提出先は事務センターまたは管轄の年金事務所です。提出期限は特に定められていませんが、従業員が育児休業と予定より早く終了する場合は提出する必要があります。
育児休業復帰届は、日本年金機構や健康保険組合に提出する書類です。復帰後3カ月の給与が産休や育休前と比べて減少している場合に提出します。
育休から復帰したとしても、これまでどおりに就労できるとは限りません。保育園に預けられる時間も限られており、また子どもの体調不良で仕事を休むことも少なくないでしょう。特に小さい子どもを持つ従業員は、子どもの体調不良を理由に、早退したり、休むことがあります。
復帰後も働き続けられるのか悩んでいる従業員は、とても多いものです。そこで、育休の復帰日を決める際に、復職後に利用できる制度の説明も行うようにしましょう。
● 短時間勤務制度
● 残業免除
● 看護休暇
● 時間外労働の制限
● 深夜労働の制限
これらの制度が使えることを従業員に説明し、復職後の不安を少しでも取り除いてあげることが大切です。特に短時間勤務制度については、多くの女性が利用を希望します。
3歳未満の子どもを養育する従業員には短時間勤務制度を利用する権利が法的に保証されているため、企業側もこの点を見落とさないよう注意が必要です。
育休は性別を問わず取得できる制度ですが、以下のように取得できるタイミングに違いがあります。
女性 | 出産の翌日から8週間の産後休業を経て、その後育休を取得できる。 |
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男性 | 出産当日から育休を取得できる。 |
女性は産後休業を終えてから育休に入りますが、男性は出産当日から取得することが可能です。また、通常の育休に加えて「パパ休暇」や「パパママ育休プラス」といった制度もあります。
パパ休暇 | 男性だけが取得できる休暇。子どもが生まれてから8週間以内に育休を取り、8週間以内に育休を終了すれば、再び育休を取得できる。 |
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パパママ育休プラス | 両親が育休を取得すると、育休を取得できる期間が1歳2カ月まで延長される。 |
男女ともに育休の制度は整っていますが、実際に育休を取得する期間には大きな差があります。令和3年度に育休を取得した女性の割合は85.1%でしたが、男性はわずか13.97%しかいません。
育休制度についてよく理解していない従業員がいることも考え、女性だけでなく男性にも十分な説明を行い育休を取りやすい環境を整えることが重要です。
出典:「厚生労働省「「令和4年度雇用均等基本調査」結果を公表します」
当初の予定よりも早く育休から復職したいとの希望が従業員からあった場合、社会保険や育児休業給付金の取り扱いに注意が必要です。従業員が前倒しで育休を終了する場合、「健康保険・厚生年金保険 育児休業等取得者申出書」を提出しなければなりません。
こちらは従業員ではなく、事業主が提出する書類です。この他、従業員が産前産後休暇を取得する場合や、養育している子どもが死亡した場合も提出が必要になります。書類は事業所の所在地を管轄する年金事務所へ郵送、または電子申請、窓口持参にて提出が必要です。
人手が少ない企業にとっては、育休復帰が前倒しになるのは嬉しいことかもしれません。しかし、企業側から育休の期間を短縮してほしいと願い出ると、さまざまな問題が生じる可能性があります。
あくまでも従業員からの申し出を待つスタイルを保ち、希望があればいつでも応じられるような体制を整えておきましょう。
育休復帰日の決め方に迷っている企業は、まず以下のポイントを考慮すると良いでしょう。
● 体調面を考慮する
● 育児時間を考慮する
● 慣らし保育の期間を配慮する
● 社会保険料免除期間を考慮する
これらを考慮したうえで復帰日を調整し、必要書類の準備をして従業員を迎え入れる体制を作る必要があります。
少しでも従業員が復帰しやすい環境を整えたいと考えている企業には、フェムナレッジの活用をおすすめします。100年以上にわたり女性の健康に寄り添ってきた経験と知見をもとに、働きやすい環境づくりのサポートをしています。
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