育児休業給付金とは?受給方法と企業ができる経済的支援

2025.06.04

「育児休暇の給付金の種類について知りたい」「企業でできる経済的支援は?」このような疑問をお持ちではありませんか?
育児休業給付金は、従業員の育児と仕事の両立をスムーズに支援するための役立つ手当です。この他にも、企業が実施できる経済的支援は多く存在します。
この記事では、育児休暇の取得者がいる企業へ向けて、育児休業給付金の種類や経済的支援について詳しく見ていきましょう。社員の育児支援と職場環境づくりの参考としてください。

育児休業給付金とは

育児休業給付金とは、従業員が育児休業を取得した際に雇用保険から支給される経済的支援制度のことです。育児休業を取得したいと従業員から申し出があった場合、企業はその申し出を受諾する必要があります。
しかし、育児休業中の賃金の支払いについては特に規定がありません。つまり、企業が何か特別に支援制度を行っていない限り、育児休業に入った従業員は収入源がなくなってしまうのです。
そこで、収入面の不安をできるだけ少なくし、安心して育児休業に入れるように、この育児休業給付金の制度が作られました。育児休業給付金の支給要件は以下のとおりです。

● 1歳未満の子どもを養育するために育児休業を取得している。
● 育児休業を開始する日の前2年間に11日以上働いた月が12カ月以上ある。
● 育児休業を開始した日から起算して1カ月ごとの期間の就業日数が10日以下である。

女性のみが育児休業給付金を受け取れるイメージがあるかもしれませんが、男性の従業員も受給できます。育児休業給付金が支給されるのは、原則として養育している子どもが1歳になる日の前日までです。ただし、一定の要件を満たせば最大2歳まで受給期間を延長できます。

出典:厚生労働省「Q&A~育児休業給付~

育児休業給付金の種類

育児休業給付金には、以下の種類があります。

● 出生時育児休業給付金
● 育児休業給付金
● 出生後休業支援給付金
● 育児時短就業給付金

このうち、出生後休業支援給付金と育児時短就業給付金は令和7年(2025年)4月1日から創設された給付金です。それぞれの給付金を受け取るための条件や金額、期間などについて詳しく解説します。

出典:厚生労働省「育児休業等給付について

出生時育児休業給付金

出生時育児休業給付金は、2022年10月から施行された「産後パパ育休」を取得した従業員に対して支給される給付金です。
この制度は、特に男性の育児参加を促進するために設けられました。受け取るためには、以下の4つの条件を満たす必要があります。

● 子どもの出生後8週間以内に最大4週間(28日間)以内の産後パパ育休(出生時育児休業)を取得している。
● 休業開始日前2年間に賃金支払基礎日数が11日以上ある完全月が12カ月以上ある。
● 休業期間中の就業日数が最大10日以下である。
● 子どもの出生日から8週間を経過する日の翌日から6カ月を経過するまでに労働契約の期間が満了することが明らかになっていない。

給付金の支給額は、以下の式によって決まります。

支給額=休業開始時賃金日額×休業期間の日数(上限28日)×67%

支給の手続きをするためには、「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」と「育児休業給付受給資格確認票・出生時育児休業給付金支給申請書」の2つが必要です。
この他、賃金台帳や労働者名簿、出勤簿、母子健康手帳、医師の診断書なども添付して提出する必要があります。

参考:厚生労働省「出生時育児休業給付金

育児休業給付金

育児休業給付金は、原則、子どもが1歳になるまでの期間、育児休業を取得する従業員に支給される給付金です。最長2歳まで延長できます。対象者は雇用保険の被保険者で、以下の条件を満たすことで支給を受けることが可能です。

● 1歳未満の子どもを養育するために育児休業を取得した被保険者である。
● 休業開始日前2年間に賃金支払基礎日数が11日以上ある完全月が12カ月以上ある。
● 一支給単位期間中の就業日数が10日以下である。
● 養育する子どもが1歳6カ月に達するまでの間に労働契約の期間が満了することが明らかでない。

支給金額は、以下の式で計算できます。

〈育児休業を取得してから6カ月まで〉
育児休業給付金=休業開始時賃金日額×休業期間の日数×67%

〈育児休業を取得してから6カ月以降〉
育児休業給付金=休業開始時賃金日額×休業期間の日数×50%

申請するためには「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」や「育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書」に加えて、賃金の支払いを証明できる書類や母子手帳などが必要です。

出典:厚生労働省「育児休業等給付の内容と支給申請手続

出生後休業支援給付金

出生後休業支援給付金は、両親共に一定期間内に通算して14日以上の育児休業を取得した際に受け取れる給付金です。以下の2つの条件を満たすことで給付金が支給されます。

● 被保険者が「子どもの出生日または出産予定日のうち早い日」から「子どもの出生日または出産予定日のうち遅い日から起算して8週間を経過する日の翌日」までの期間に、同一の子どもについて出生児育児休業給付金が支給される産後パパ育休または育児休業給付金が支給される育児休業を通算して14日以上取得している。
● 被保険者の配偶者が「子どもの出生日または出産予定日または出産予定日のうち早い日」から「子どもの出生日または出産予定日の遅い日から起算して8週間を経過する日の翌日」までの期間を通算して14日以上の育児休業を取得している、または子どもの出生日の翌日に「配偶者の育児休業を要件としない場合」に該当している。

支給額は、以下の式で計算できます。

出生後休業支援給付金=休業開始時賃金日額×休業期間の日数(上限28日)×13%

申請は、出生児育児休業給付金または育児休業給付金の支給申請とあわせて行うことが原則です。

出典:厚生労働省「2025年4月から「出生後休業支援給付金」を創設します

育児時短就業給付金

育児時短就業給付金は、2歳未満の子どもを養育するために所定労働時間を短縮して就業した場合に受け取れる給付金です。給付を受けるためには、以下の2つの条件を満たす必要があります。

● 2歳未満の子どもを養育するために、1週間あたりの所定労働時間を短縮して就業する被保険者である。
● 育児休業給付の対象となる育児休業から引き続き、同一の子どもについて育児時短就業を開始したこと、または育児時短就業開始日前2年間に賃金支払基礎日数が11日以上ある完全月が12カ月ある。

給付額は、以下の式で求められます。

育児時短就業給付金=育児時短就業中の各月に支払われた賃金額×10%

申請にあたり、育児時短就業開始時賃金の届出や受給資格確認および支給申請が必要です。原則として書類は被保険者を雇用している事業主が提出しますが、本人の希望があれば被保険者が直接提出することもできます。

出典:厚生労働省「育児時短就業給付の内容と支給申請手続

そのほか企業で実施できる経済的支援の例

雇用保険からの給付金だけでなく、企業独自で実施できる経済的支援の制度も多くあります。これらを適切に利用し、より充実した育児支援体制を構築しましょう。
主な経済的支援には、以下のようなものがあります。

● 扶養手当
● 出産祝金制度
● 出産育児一時金
● くるみん助成金

これらの制度の導入により、従業員の経済的負担を軽減するだけでなく、企業としての福利厚生の充実化にもつながります。

扶養手当

扶養手当とは、子どもを養育する従業員に対して毎月一定額が給与とは別に支給される制度です。一般的には、子どもの年齢や人数に応じて支給額が設定されることが多いでしょう。
例えば、「未就学児1人につき月額10,000円」「小学生1人につき月額8,000円」といった具合です。支給対象となる子どもの年齢は企業によって異なります。
この制度のメリットは、継続的な経済支援により従業員の子育て負担を軽減できることです。特に育児には保育料や食費、医療費などの費用がかさむため、扶養手当により従業員の家計を安定させるサポートができます。
ただし、扶養手当を支給する企業は減ってきているのが現実です。「東京くらし方会議(第2回)」によると、扶養手当などの家族手当を支給している企業は2005年には83.1%であったものの、2021年には74.1%に減少しています。
扶養手当を廃止する代わりに、基本給に組み入れたり他の家族手当を増額したりする企業が増えている状況です。

出典:「東京くらし方会議(第2回)

出産祝金制度

出産祝金制度とは、従業員やその配偶者が出産した際に、企業から一時金として祝い金を支給する制度です。
支給額は企業によってさまざまで、数万円から数十万円程度が一般的です。第一子、第二子と子どもの数に応じて金額を増額する企業や、双子など多胎児の場合に加算する企業もあります。
申請方法は、出生証明書など出産を証明する書類を添えて、所定の申請書を提出するケースが多いでしょう。出産祝金制度のメリットは、出産に伴う初期費用の負担を軽減できることです。
また、企業からお祝いという形で支給されるため、従業員のモチベーション向上にもつながります。

出産育児一時金

出産育児一時金は、健康保険や国民健康保険などの被保険者または被扶養者が出産したときに一定の金額が支給される制度です。支給額は、下表のように定められています。

産科医療補償制度に加入の医療機関等で妊娠週数22週以降に出産した場合 1児につき50万円
産科医療補償制度に未加入の医療機関で出産した場合 1児につき48.8万円
産科医療補償制度に加入の医療機関等で妊娠週数22週未満で出産した場合 1児につき48.8万円

多胎児の場合は、胎児数に応じた金額が支給されます。以前は、産科医療補償制度に加入の医療機関等で妊娠週数22週以降に出産した場合の支給額は1児につき42万円でしたが、令和5年4月1日から50万円に増額されました。
提出する書類は「健康保険出産育児一時金内払金支払依頼書」「健康保険出産育児一時金支給申請書」です。被保険者または被扶養者が妊娠4カ月(85日)以上で出産をした場合に支給を受けられます。

出典:協会けんぽ「子どもが生まれたとき

くるみん助成金

くるみん助成金は、仕事と子育ての両立支援に積極的に取り組む中小企業に対して支給されるものです。この助成金を受けるためには、「くるみん認定」「くるみんプラス認定」「プラチナくるみん認定」「プラチナくるみんプラス認定」を受ける必要があります。
くるみん認定を受けるためには、次のような取り組みを行わなければなりません。

● 労働者の育児休業等の取得を促進するための取組
● 労働者の子育てを支援するための取組
● 労働者の業務負担の軽減や所定外労働の削減などを図るための取組
● その他労働者の職業生活と家庭生活との両立ができるようにするために必要な取組

くるみん認定を取得すると、厚生労働省のWEBサイトに社名が掲載されます。そのため、子育てに協力的な企業であることを、広く社会にアピールすることが可能です。
認定を受けるためには、子育てや育児休業などに関わる取り組みを行っている必要があるため、従業員も働けるでしょう。

まとめ

育児休業給付金とは、従業員が育児休業を取得した際に雇用保険から支給される給付金です。
現在は、4つの育児休業給付金があります。育児と仕事を両立するためには、従業員や企業、政府が連携することが大切です。企業が子育てに専念しやすい環境を整えてあげることも欠かせません。

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