2026.09.14
毎年受診する健康診断。結果が返ってきても、「異常なしだったから問題ない」「少し数値が高いが経過を見よう」と考え、深く確認しないままになっている方も少なくないのではないでしょうか。
健康診断は、病気を見つけるためのものと思われがちですが、本当の価値はそれだけではありません。
大切なのは、病気になる前の「未病」のサインに気づき、自分の生活習慣を見直すきっかけにすることです。そして、その気づきを実際の行動につなげていくことが、将来の健康維持につながります。
この記事では、健康診断をより有効に活用するために知っておきたい「未病」と「行動変容」の考え方について解説します。
未病という考え方が注目される背景には、日本人の平均寿命と健康寿命の差があります。
健康寿命とは、日常生活を制限されることなく健康に生活できる期間を指します。平均寿命が延びても、病気や介護が必要な期間が長ければ、本人や家族の負担は大きくなることが考えられます。
そのため近年は、病気になってから治療するだけではなく、病気になる前の段階で健康状態の変化に気づき、生活習慣を改善することの重要性が高まっています。未病は、そのための重要な考え方の一つといえるでしょう。
厚生労働省が推進する「健康日本21(第三次)」でも、健康寿命の延伸や生活習慣の改善が重要な目標として掲げられています。健康づくりは病気の治療だけでなく、日頃の生活習慣や予防的な取り組みが重要であることが示されています。
出典:厚生労働省「健康日本21(第三次)」
未病とは、「発病には至っていないものの、健康な状態から離れつつある状態」を指します。自覚症状がなくても検査で異常が見られる場合や、反対に不調を感じていても検査では異常が見つからない場合などが含まれます。
例えば、
• 血圧が少しずつ高くなっている
• コレステロール値が上昇している
• 血糖値が前年より高くなっている
• 腹囲が増えている
といった変化は、病気ではなくても将来のリスクを示すサインかもしれません。
未病というと、「健康診断で異常があった人だけが気にするもの」と思われがちですが、そうではありません。現在は健康だと思っている人でも、運動不足や睡眠不足、ストレスの蓄積などによって、少しずつ健康状態が変化している可能性があります。だからこそ、定期的に自分の状態を確認し、小さな変化に気づくことが大切です。
高血圧症や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病は、ある日突然発症するわけではありません。
多くの場合、数年単位で少しずつ進行します。
病気になってから治療を始めるよりも、未病の段階で生活習慣を見直したほうが、身体的にも経済的にも負担を抑えやすくなります。健康診断は、そのための大切な機会といえます。
健康診断の結果を見る際、多くの人は基準値から外れた項目だけを確認します。
しかし、重要なのは複数の項目を関連づけて見ることです。
例えば、
• 血圧
• 血糖
• 脂質
は互いに関係しています。
健康診断の結果を見る際は、一つの数値だけではなく複数の項目をあわせて確認することが大切です。血圧や血糖、脂質などは相互に関連しており、複数の項目に変化が見られる場合は将来的な生活習慣病リスクが高まる可能性があります。
厚生労働省のe-ヘルスネットでも、特定健康診査は高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を早期に発見し、予防や改善につなげることを目的としています。
出典:厚生労働省「健康日本21アクション支援システム ~健康づくりサポートネット~」
もう一つ大切なのが、過去の結果との比較です。
昨年、一昨年の結果と並べて確認することで、
• 数値が上昇傾向にある
• 徐々に基準値上限へ近づいている
• 老化や生活習慣の影響が現れている
といった変化に気づくことができます。また、今回の結果だけではなく、過去の結果と比較して変化の傾向を確認することも重要です。
健康診断の結果で「再検査」や「要精密検査」の判定を受けた場合は、医療機関で詳しい検査を受けることが推奨されます。
健康診断の大きな役割の一つは、自覚症状が現れる前の体の変化に気づくことです。再検査や要精密検査の判定は、現在の健康状態をより詳しく確認するための重要な機会といえるでしょう。
検査の結果、特に異常が認められない場合でも、自身の健康状態を客観的に把握することにつながります。また、必要に応じて生活習慣の見直しや適切な治療につなげることで、将来の健康維持にも役立てることができます。
女性の体は、月経・妊娠・出産・更年期など、ライフステージによって大きく変化します。
そのため、20代や30代では問題がなかった数値でも、40代以降になると変化が現れることがあります。
特に更年期前後は、自律神経の乱れや体重増加、脂質代謝の変化などが起こりやすくなるため、毎年の健康診断結果を継続的に確認することが重要です。
「去年と比べてどう変化したか」という視点を持つことで、自身の体の変化に早く気づくことができます。
また、働きながら家事や育児、介護など複数の役割を担う女性も少なくありません。そのため、自身の体調変化や健康管理が後回しになりやすい傾向があります。毎年の健康診断は、自分自身の健康状態を定期的に確認し、変化に気づくための貴重な機会といえるでしょう。
女性は更年期以降、女性ホルモンの変化に伴ってコレステロール値や血圧に変化が現れる場合があります。更年期には脂質代謝にも変化が生じることから、それまで問題のなかった人でも数値が上昇することがあります。
こうした変化は緩やかに進むことも多いため、毎年の健康診断結果を確認し、変化の兆候を見逃さないことが大切です。
女性にとってもう一つ重要なのが骨密度です。
骨量は20代頃にピークを迎え、その後は徐々に減少します。特に閉経後は骨量の減少が進みやすく、骨粗しょう症のリスクが高まります。
健康寿命を延ばすためには、血液検査の数値だけでなく、骨の健康にも目を向けることが重要です。
なお、骨密度測定は一般的な定期健康診断の必須項目には含まれておらず、通常の健診では実施されない場合が多くあります。そのため、更年期以降の方や骨粗しょう症が気になる方は、自治体の検診や医療機関などで骨密度測定を受けることも検討するとよいでしょう。
厚生労働省も女性の健康支援の一環として骨粗しょう症予防に関する情報発信を行っており、若年期からの骨量維持や更年期以降の骨密度管理の重要性を啓発しています。
出典:厚生労働省「「みんなで女性の健康を考えよう」特設Webコンテンツ 「骨粗しょう症予防 骨活のすすめ」公開について」
行動変容とは、人が新しい習慣を身につける、健康的な行動へ変わっていくなどの過程を指します。
健康診断の結果は、自身の健康状態を客観的に把握し、生活習慣を見直す機会となります。
実際に、
「運動を始めよう」
「食事を見直そう」
と感じた経験がある方も多いでしょう。
こうした意識の変化を具体的な行動につなげ、継続していくことが、健康づくりにおいて重要な要素の一つです。
行動変容に関する考え方は、健康づくりや生活習慣改善の分野で広く活用されており、人が行動を変える際には段階的なプロセスを経るとされています。
出典:厚生労働省「健康日本21アクション支援システム ~健康づくりサポートネット~」
健康診断の結果をきっかけに生活習慣を見直そうとした際、
・ 毎日1時間運動する
・ 完全に禁酒する
・ 間食を一切やめる
など、高い目標を設定してしまうケースがあります。
しかし、生活習慣を急激に変えようとすると、負担が大きくなり継続が難しくなることもあります。
行動変容においては、まず無理なく実践できる範囲から取り組みを始め、継続しながら習慣化していくことが重要とされています。
健康のために運動や食事改善を始めても、途中でやめてしまった経験がある人は少なくありません。しかし、それは必ずしも意志が弱いからではありません。大きな目標を立て過ぎたり、生活スタイルに合わない方法を選んだりすると、誰でも継続は難しくなります。大切なのは完璧を目指すことではなく、自分が続けられる方法を見つけることです。
例えば、
• 昼休みに10分歩く
• 野菜を一品追加する
• エレベーターではなく階段を使う
といった小さな取り組みでも十分です。
こうした成功体験を積み重ねることで、「継続できるという実感」という自信が生まれ、習慣化につながります。
極端な食事制限ではなく、まずは野菜を増やす、甘い飲み物を減らすなど、取り組みやすいことから始めてみましょう。
運動習慣は継続が重要です。
まずは10分程度のウォーキングから始める方法もあります。続けることで自然と活動量は増えていきます。
睡眠不足は生活習慣病のリスクにも関係します。
就寝時間を少し早める、寝る前のスマートフォン利用を控えるなど、睡眠環境を整えることも立派な行動変容です。
近年では、身体的な健康だけではなく、社会とのつながりやコミュニケーションも健康維持に関係すると考えられています。
家族や友人との交流、趣味の活動、地域コミュニティへの参加などは、心身の健康維持にも役立ちます。
健康診断は、単に異常の有無を確認するためのものではありません。
その結果には、
• 未病のサインを見つける
• 将来の健康リスクを知る
• 行動変容のきっかけを得る
という大きな価値があります。
届いた結果を見て終わりにするのではなく、
「前年と比較してどのような変化があったか」 「今からできることは何だろう」
と考えてみてください。
未病の段階で気づき、小さな行動変容を積み重ねることが、将来の健康につながる第一歩です。
監修者
小林 惇平
鳥取大学医学部卒業。
急性期病院で総合内科として修練した後、現在は慢性期病院でリハビリや在宅医療を中心に診療に従事。
健康診断の結果は、自分自身の健康状態を知るための貴重なデータです。しかし、結果票を受け取るだけでは、未病への気づきや行動変容につながらないことも少なくありません。
大切なのは、数値の意味を理解し、自分の健康課題を知り、日々の生活の中で無理なく行動に移していくことです。
フェムナレッジでは、女性特有の健康課題だけでなく、更年期や健康診断の活用、行動変容など、働く人の健康リテラシー向上を支援する研修動画コンテンツを提供しています。動画を通じて基礎知識を学び、自分自身の健康を見つめ直すきっかけづくりに活用できます。
また、健康診断の結果をどう読み解き、どのように行動につなげればよいのかを学べるコンテンツも提供しており、「知る」だけで終わらない健康づくりをサポートしています。
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