• TOP
  • 企業向けcolumn
  • 少子高齢化社会で求められるエイジマネジメントとは?企業が取り組むべき施策とメリット

少子高齢化社会で求められるエイジマネジメントとは?企業が取り組むべき施策とメリット

2026.10.20

「ベテラン社員の豊富な経験をもっと組織に活かしたい」「従業員の高齢化が進むなかで、持続的に成長できる組織をつくりたい」。こうした課題を抱える企業は少なくありません。
少子高齢化や労働力人口の減少、働く期間の長期化が進むなか、企業には年齢に関わらず従業員が能力を発揮できる環境づくりが求められています。そこで注目されているのが、「エイジマネジメント」です。
エイジマネジメントとは、従業員の年齢やライフステージの違いを踏まえ、一人ひとりが長期的に活躍できる環境を整える人材マネジメントの考え方です。その源流は、フィンランドで発展した「Work Ability(就業能力)」研究にあり、欧州では高齢化する労働力への対応策として体系化されてきました。特に、高齢者だけでなくすべての世代を対象とし、従業員がキャリアを通じて健康や能力、意欲を維持できるよう、予防的かつ包括的に職場環境や能力開発を支援することが重視されています。
日本では、厚生労働省が推進する「エイジフレンドリーな職場づくり」や高年齢者雇用施策などを通じて、高年齢者を含む多様な人材が安全・健康に働き続けられる環境整備の重要性が高まっています。エイジマネジメントは、こうした取り組みを人事戦略や組織運営の視点から発展させ、企業の持続的な成長につなげる考え方といえるでしょう。

厚生労働省「高年齢者の労働災害防止のための指針(エイジフレンドリー指針)」

エイジマネジメントとは?注目される背景

エイジマネジメントは、年齢に関わらず従業員一人ひとりが能力を発揮し、長く活躍できる環境を整えるための考え方です。少子高齢化や働く期間の長期化が進むなか、人材の多様化に対応する経営戦略として注目されています。まずは、エイジマネジメントの意味と必要性について見ていきましょう。

エイジマネジメントの基本的な意味

エイジマネジメントとは、従業員の年齢やライフステージの違いを考慮しながら、それぞれが能力を発揮できる環境を整える人材マネジメントの考え方です。
対象となるのは高年齢者だけではありません。若手社員、中堅社員、ベテラン社員など、すべての世代が持つ強みや課題に応じて、働き方や能力開発、キャリア形成を支援することが目的です。
従来は年齢を基準に役割や処遇を決める考え方が一般的でした。しかし近年は、年齢そのものではなく個人の能力や経験、多様な価値観を活かすことが企業の競争力向上につながると考えられています。
エイジマネジメントは、年齢を制約として捉えるのではなく、多様な世代の人材が能力を発揮できる環境を整え、その知識や経験を組織の力として活かす取り組みといえるでしょう。

なぜ今、エイジマネジメントが求められているのか

エイジマネジメントが注目されている背景には、社会や働き方を取り巻く環境の変化があります。

高齢者雇用対策との違い

エイジマネジメントは、高齢者雇用対策と混同されることがあります。しかし、両者の目的や対象範囲は異なります。
高齢者雇用対策は、主に定年後の雇用確保や再雇用制度の整備など、高年齢者が働き続けられる環境を整備することを目的としています。
一方、エイジマネジメントは、若手からシニアまでのすべての世代を対象とした包括的な人材マネジメントです。年齢による違いを考慮しながら、それぞれの能力や経験を最大限に活かせる組織づくりを目指します。

たとえば、定年後も働ける制度を整備するだけでは、高齢者雇用対策にはなってもエイジマネジメントの取り組みとしては十分とはいえません。シニア・再雇用社員の経験を若手育成に活かしたり、中堅層にリスキリングの機会を提供したりするなど、世代を超えて活躍を支援する取り組みがあって初めてエイジマネジメントといえます。
企業が持続的に成長するためには、年齢による違いを組織の課題ではなく強みとして活かす視点が重要です。その考え方の中心にあるのがエイジマネジメントなのです。

エイジマネジメントを導入する企業のメリット

エイジマネジメントは、高齢化への対応や法改正への備えに加え、年齢やライフステージの異なる従業員が活躍しやすい環境づくりを目指す取り組みです。年齢やライフステージの異なる人材がそれぞれの能力を発揮できる環境を整えることで、企業の持続的な成長や競争力の向上につながります。
ここでは、企業がエイジマネジメントに取り組むことで得られる主なメリットを紹介します。

人材の確保と定着

少子高齢化による人材不足が進むなか、従業員一人ひとりに長く活躍してもらうことは企業にとって重要な課題です。
特にベテラン社員は、長年培った専門知識や業務ノウハウ、社内外のネットワークなど、企業にとって貴重な資産を持っています。エイジマネジメントによって働き続けやすい環境を整えることで、人材流出の抑制や技術・知識の継承促進が期待できます。
また、年齢に関係なく活躍できる職場環境は、従業員の安心感につながるだけでなく、人材の定着や採用活動にもプラスの影響を与えると考えられています。

組織全体の生産性向上

多様な世代が協力しながら働くことで、組織にはさまざまな視点やアイデアが生まれます。
若手社員からベテラン社員まで、それぞれが持つ知識や経験、視点を活かしながら協働することで、課題解決力や業務品質の向上が期待できます。
さらに、従業員の健康維持や働きやすい職場環境の整備は、欠勤や生産性低下のリスク軽減につながる可能性があり、組織全体のパフォーマンス向上に寄与すると考えられています。

従業員のエンゲージメント向上

将来のキャリアに不安を抱えている従業員は少なくありません。
エイジマネジメントによって、年代ごとのキャリア形成や能力開発を支援する仕組みが整うと、従業員は自身の将来像を描きやすくなります。
「年齢を重ねても活躍できる」「会社が長期的な成長を支援してくれる」という実感は、仕事への意欲や組織への愛着の向上につながる可能性があります。その結果、離職率の低下や主体的な挑戦行動の促進にもつながるでしょう。

健康経営や人的資本経営の推進につながる

近年は、従業員を企業の重要な資本と捉える「人的資本経営」が注目されています。
エイジマネジメントでは、能力開発だけでなく、健康維持や働きやすい環境づくりも重要な要素です。年齢とともに変化する健康課題に配慮しながら支援を行うことで、従業員が長期にわたって活躍できる基盤を構築できます。
また、更年期症状や生活習慣病、メンタルヘルス不調などによるプレゼンティーズム(出勤しているものの健康問題によって生産性が低下している状態)への対策は、健康経営の推進につながることが期待できます。
企業が従業員の健康と成長を支援することは、人的資本経営の実践の一つと考えられます。人的資本経営は、人材を資本として捉え、その価値を最大限に引き出すことで中長期的な企業価値向上につなげる考え方であり、健康維持や能力開発に取り組むことは、その基盤となる施策の一つです。

出典:経済産業省「人的資本経営コンソーシアム」

企業イメージと採用競争力の向上

年齢や性別を問わず、多様な人材が活躍できる企業づくりに取り組むことは、人的資本経営やダイバーシティ推進の観点からも注目されています。従業員を大切にする企業文化や健康支援制度、柔軟な働き方の整備は、企業の取組として社内外に発信しやすい要素です。
また、健康経営や人的資本経営に関する取組は、投資家や求職者などのステークホルダーからの関心も高まっています。そのため、こうした取組は企業の魅力向上や人材確保に関する施策の一つとして位置付けられています。

出典:経済産業省「健康経営の推進について」

エイジマネジメントを推進する企業の取り組み

エイジマネジメントを推進するためには、単に定年延長や再雇用制度を整備するだけでは十分とはいえません。従業員が年齢やライフステージに応じて能力を発揮できるよう、健康支援や働き方、人事制度、キャリア開発などを総合的に見直すことが重要です。
ここでは、企業が取り組みやすい代表的な施策を紹介します。

健康管理と健康経営の推進

従業員が長く活躍するためには、心身の健康維持が欠かせません。
健康診断やストレスチェックの実施に加え、産業医や保健師による相談体制の整備、人間ドック費用補助などの支援を行うことで、従業員が自身の健康状態を把握しやすくなります。
また、年齢を重ねるにつれて、更年期症状や生活習慣病、睡眠の質の低下など、さまざまな健康課題が生じる可能性があります。こうした課題に配慮した支援制度は、従業員の働きやすさ向上につながることが期待されます。
企業が健康経営の視点を取り入れながら支援を行うことは、従業員の長期的な活躍を支える基盤づくりにも役立つでしょう。

働きやすい職場環境の整備

年齢やライフステージによって、働き方に求める条件は異なります。
例えば、育児や介護との両立を目指す従業員や、体力面への配慮が必要な従業員にとっては、多様な働き方を選択できる環境が重要です。
フレックスタイム制度やテレワーク、短時間勤務制度などの導入は、働き続けやすい環境整備につながる可能性があります。
また、職場の照明や設備の改善、作業負荷の見直しなども、安全かつ快適な職場づくりに役立ちます。

物理的な環境改善の例
● 職場の照明を明るくする
● PCモニターの文字サイズを調整しやすくする
● 通路の段差をなくす
● 重量物を運ぶための補助器具を導入する

公平な人事評価・処遇制度の構築

エイジマネジメントでは、年齢のみを基準に評価や処遇を決定しない仕組みづくりも重要です。
例えば、「シニア社員だから管理職を外れる」「若手だから経験が不足している」といった固定的な考え方は、従業員の意欲に影響を及ぼす可能性があります。
そのため、年齢ではなく役割や成果、保有スキル、後進育成への貢献などを踏まえた評価制度の構築が求められます。
また、定年後再雇用者の役割や処遇を明確化することは、従業員のキャリア形成を支援するうえでも重要です。

年代に応じた能力開発・キャリア支援

働く期間が長期化するなかで、継続的な学習機会を提供することも重要な施策の一つです。
従業員が年齢に関係なく新たな知識やスキルを身につけられる環境を整えることで、変化への対応力向上が期待できます。
また、若手・中堅・ベテランでは抱える課題が異なるため、年代ごとに適した支援を行うことが望ましいでしょう。

キャリア段階に応じた支援策の例

年代 主な課題 支援策の例
若手社員 基礎スキル習得、キャリア形成 OJT、メンター制度、基礎研修
中堅社員 専門性向上、マネジメント力強化 リーダーシップ研修、キャリア面談
ベテラン社員 役割変化への適応、知識更新 リスキリング、セカンドキャリア支援
シニア・再雇用社員 新たな役割への適応 職務設計支援、知識継承プログラム

定期的なキャリア面談を実施し、将来の働き方や目標を共有する機会を設けることも、従業員の主体的なキャリア形成を支援するうえで有効と考えられます。

世代間コミュニケーションの促進

年齢構成が多様化するなかで、世代間の相互理解を深めることも重要です。
価値観や働き方に対する考え方が異なることで、コミュニケーション上の課題が生じる場合があります。一方で、それぞれの世代が持つ知識や経験を共有できれば、組織全体の学習機会の拡大につながる可能性があります。
例えば、若手社員とベテラン社員によるメンター制度やプロジェクト活動、知識共有会などを実施することで、世代を超えた交流を促進できます。
こうした取り組みは、技術やノウハウの継承だけでなく、組織内の連携強化にも役立つでしょう。

従業員に求められるエイジマネジメントへの取り組み

エイジマネジメントは企業が制度や環境を整備するだけでは実現できません。従業員一人ひとりが自身の健康やキャリアに主体的に向き合うことも重要です。ここでは、長く活躍するために従業員自身が意識したい取り組みを紹介します。

主体的な健康維持・増進

長く働き続けるためには、心身の健康を維持することが欠かせません。
年齢を重ねるにつれて、体力の変化や生活習慣病のリスク増加、更年期症状など、さまざまな健康課題が生じる可能性があります。そのため、日頃から健康状態を把握し、自身に合った健康管理を行うことが重要です。
例えば、適度な運動やバランスの良い食事、十分な睡眠を意識するほか、企業が提供する健康診断や健康相談制度などを積極的に活用することも有効でしょう。
健康課題への早期対応は、働きやすさの維持や将来的なキャリア形成を支える土台になると考えられます。

変化に対応するための継続的な学習

技術革新や働き方の変化が進むなか、これまでの知識や経験だけでは対応が難しい場面も増えています。
そのため、年齢に関わらず新たな知識やスキルを学び続ける姿勢が重要です。
企業の研修制度を活用するだけでなく、資格取得やオンライン学習、専門分野の情報収集など、自ら学ぶ機会を持つことで変化への対応力向上が期待できます。
特に近年は、DX(デジタルトランスフォーメーション)やAI活用など、新たな知識を習得する必要性も高まっています。継続的な学習は、将来のキャリアの選択肢を広げることにもつながるでしょう。

自身のキャリアプランを考える

働く期間が長くなるなかで、「これからどのような働き方をしたいのか」を主体的に考えることも重要です。
まずはこれまでの経験やスキルを振り返り、自身の強みや課題を整理してみましょう。そのうえで、5年後や10年後の働き方をイメージし、必要な知識や経験を計画的に積み重ねていくことが大切です。
また、キャリア面談や社内公募制度などを活用することで、新たな役割や挑戦の機会を得られる場合もあります。
企業任せではなく、自らキャリアを考え行動する「キャリア自律」の姿勢は、変化の大きい時代においてますます重要になるでしょう。

従業員が実践したい取り組み

取り組み 主な内容 期待される効果
健康維持・増進 運動、食事、睡眠、健康診断の活用 心身の健康維持、働きやすさの向上
継続的な学習 リスキリング、資格取得、研修受講 知識・スキルの更新、変化への対応
キャリア形成 キャリアの棚卸し、目標設定、面談活用 キャリアの方向性明確化、主体的な成長

エイジマネジメントを成功させるためのポイント

エイジマネジメントは、制度を導入するだけで成果につながるものではありません。企業と従業員が共通の目的を理解し、継続的に取り組むことが重要です。
ここでは、エイジマネジメントを組織に定着させるためのポイントを紹介します。

経営層の強いコミットメント

エイジマネジメントを全社的な取り組みとして進めるためには、経営層の理解と関与が欠かせません。

経営トップがその重要性を明確に示し、企業の方針として発信することで、組織全体の理解促進につながります。
また、人事部門だけでなく管理職や各部門が連携して取り組むことで、施策を継続しやすくなるでしょう。

全従業員への情報発信と意識醸成

エイジマネジメントは特定の年代だけを対象とした取り組みではありません。
そのため、「シニア向け施策」という誤解を防ぎ、若手からベテランまでが当事者意識を持てるよう情報発信を行うことが重要です。
施策の目的や期待される効果を丁寧に共有し、世代を超えて理解を深めることで、組織全体で取り組みやすい環境づくりにつながります。

外部の専門家や支援サービスを活用する

社内だけで対応が難しい場合は、外部の専門家やサービスを活用することも選択肢の一つです。
産業医や社会保険労務士、キャリアコンサルタントなどの専門家から助言を受けることで、自社課題に応じた施策を検討しやすくなります。
また、健康支援プログラムやキャリア開発支援サービスを活用することで、自社に適した取り組みにつながる可能性があります。

まとめ

エイジマネジメントとは、高齢者雇用対策にとどまらず、年齢やライフステージの異なる従業員がそれぞれの能力を発揮しながら働ける環境づくりを目指す考え方です。
少子高齢化や働く期間の長期化が進むなか、企業には多様な人材が活躍できる組織づくりが求められています。そのためには、健康管理や働きやすい職場環境の整備、公平な評価制度、キャリア支援などを総合的に進めることが重要です。
また、従業員自身も健康維持や継続的な学習、キャリア形成に主体的に取り組むことで、長期的な活躍につなげることが期待できます。
エイジマネジメントは、企業と従業員がともに取り組むことで、組織の持続的な成長や多様な人材の活躍を支える基盤づくりにつながるでしょう。なお、従業員が長くいきいきと働くためには健康面への支援も重要な要素です。健康経営の取り組みとあわせて推進することで、より働きやすい職場環境の実現が期待されます。

少子高齢化や働く期間の長期化が進むなか、シニア人材の活躍は企業の重要なテーマとなっています。一方で、加齢に伴う体力や認知機能の変化、健康課題への配慮も欠かせません。
フェムナレッジでは、「ビジネス活性化に貢献!ワーキングシニア」と題した動画コンテンツをご用意しています。シニア世代の就業増加の背景や企業にもたらすメリットに加え、加齢に伴う健康課題や労働災害の実態、健康維持のポイント、働きやすい職場づくりの考え方について分かりやすく解説しています。従業員が年齢に関わらず活躍できる職場づくりのヒントとして、ぜひご活用ください。

サービスの詳細はこちら

企業向けColumn一覧

Mint+ フェムナレッジについての
お問い合わせはこちらから

お問い合わせ

Share
このページをシェア!

PAGE TOP