近年の日本では、少子化が問題視されている一方で、​
望まぬ妊娠により人工妊娠中絶(中絶)という
人工的に妊娠を中断させる行為が​
年間約13万件も行われています。

予期せぬ妊娠で中絶を決断することは
カラダとココロに大きなダメージを与えることになるため​
望まない妊娠を防ぐために必要な「避妊」について​
きちんと知っておきましょう。

※厚生労働省「令和5年度衛生行政報告例の概況」より

自分ゴトとして
『避妊』を正しく知ろう

さきほどもお話しした通り、日本では年間約13万件の中絶が行われています。中絶を選択する割合を年代別で見ると、ティーンズ世代は他の年代に比べ、特に中絶を選択する割合が多いことがわかります。
まだ自分には関係ないと思わず、避妊を「自分ゴト」として​正しく知っておく必要があります。

妊娠のうち中絶を選択する割合

※妊娠数を(中絶数+出生数)とし、中絶数/妊娠数で算出

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厚生労働省 令和5年度人口動態統計および
令和5年度衛生行政報告例より作図

主な避妊方法とその特徴

避妊法には、お薬を服用する、器具を装着するなど、いろいろな方法があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。​​

主な避妊法

特徴やメリット・デメリット​

  経口避妊薬
(OC/ピル)
コンドーム
(男性用)
IUD(子宮内避妊用具)
IUS(子宮内避妊システム)
主な特徴 女性ホルモンが入った錠剤。毎日服用して排卵を抑制する。​医師の処方が必要。 男性の性器に装着し、子宮内に精子が入るのを防ぐ。 産婦人科で子宮内に器具を挿入してもらい、受精卵の着床を防ぐ。
メリット 女性が自分の意思で使うことができ、正しく服用すれば避妊率が高い。 性感染症の予防にも効果がある。 女性の意思で装着できる。一度装着すれば数年間にわたって効果が持続する。
デメリット 副作用が起こる可能性がある。​かかっている病気によっては使用できない。 男性の協力が必要。​
破れたり、外れたりして、避妊に失敗する可能性がある。
産婦人科医に挿入してもらう必要がある。
出産経験のない女性には不向き。​脱落する場合がある。
失敗率 理想的な
使用
0.3% 理想的な
使用
0.2% 理想的な
使用
IUD:0.6%
IUS:0.2%
一般的な
使用
9.0% 一般的な
使用
18.0% 一般的な
使用
IUD:0.8%
IUS:0.2%
経口避妊薬(OC/ピル)
主な特徴 女性ホルモンが入った錠剤。毎日服用して排卵を抑制する。​
医師の処方が必要。
メリット 女性が自分の意思で使うことができ、正しく服用すれば避妊率が高い。
デメリット 副作用が起こる可能性がある。​
かかっている病気によっては使用できない。
失敗率
理想的な
使用
0.3%
一般的な
使用
9.0%
コンドーム(男性用)
主な特徴 男性の性器に装着し、子宮内に精子が入るのを防ぐ。
メリット 性感染症の予防にも効果がある。
デメリット 男性の協力が必要。​
破れたり、外れたりして、避妊に失敗する可能性がある。
失敗率
理想的な
使用
2.0%
一般的な
使用
18.0%
IUD(子宮内避妊用具)
IUS(子宮内避妊システム)
主な特徴 産婦人科で子宮内に器具を挿入してもらい、受精卵の着床を防ぐ。​
メリット 性感染症の予防にも効果がある。
デメリット 産婦人科医に挿入してもらう必要がある。​出産経験のない女性には不向き。​脱落する場合がある。​
失敗率
理想的な
使用
IUD:0.6%​
IUS:0.2%
一般的な
使用
IUD:0.8%​
IUS:0.2%

※その避妊法を1年間使用して避妊に失敗する確率

理想的な使用
各避妊法を正しく続けて使用しているにも関わらず妊娠してしまった確率​

一般的な使用
各避妊法を使用しているにも関わらず妊娠してしまった確率
(経口避妊薬については、のみ忘れを含めた場合の失敗率)

Hatcher, RA et al.: Contraceptive Technology: Twentieth Revised Edition. New York. Ardent Media. 2011より改変

避​妊について考える
ということ

たとえ1回の性交であっても、妊娠する可能性があります。
妊娠はいろいろなタイミングが重なってもたらされる神秘的なできごとです。妊娠を知ったとき、よろこびを感じる人は多いと思います。​
その一方で、妊娠した女性と相手の男性の人生に大きな影響を及ぼし、生き方を変える大きなイベントでもあります。

いま妊娠することはどういうことなのか、女性だけでなく男性も一緒に考え、避妊についても知っておきましょう。​​

また、腟内で射精をしなければ妊娠しないと思う方もいるかもしれません。しかし、腟外射精は避妊法ではありません。​
射精の前でも分泌物に少量の精子が含まれているため、妊娠の可能性があります。意図しない妊娠を防ぐには、男性任せにせず、女性が主体的に避妊をすることも大切です。​

避妊について考えることは、私たちのカラダや、その先の人生に関わるとても大切なことです。
いざその場になると、流れに任せてしまったりコントロールできないこともあるかもしれません。
恥ずかしい気持ちもあると思いますが、​授かるかもしれない命の重さを考え、たった1回でも妊娠の可能性があるということを忘れずに行動するようにしましょう。

避妊できなかったかも…
そんなときどうしたら良い?

意図せず避妊対応ができずに性行為を行った場合や、コンドームが破れるなど、避妊がうまくできなかった場合、「緊急避妊」という方法があります。​
避妊に失敗して、不安な気持ちで次の生理を待つのではなく、妊娠を防ぐ最後の手段として使用できます。​

性犯罪に巻き込まれてしまう可能性も少なからずあるため、緊急避妊という選択肢は覚えておくようにしましょう。

一般的な緊急避妊の方法は、「緊急避妊薬の服用」です。​

緊急避妊薬

緊急避妊薬はアフターピルともよばれ、医療機関でのみ処方されるお薬です。
主に性交後72時間(3日)以内に服用する必要があります。

なお、排卵日付近(妊娠しやすい時期)の性交による妊娠を、緊急避妊薬で阻止できる確率は8~9割程度。
他の避妊法に比べると効果は低く、通常の避妊法としては不向きです。

人口妊娠中絶

日本では、妊娠満22週未満でかつ特別な理由があれば、中絶が法律(母体保護法)で認められています。中絶には、手術によって胎児を母体の外に出す方法だけでなく、経口の中絶薬を用いる方法もあります。

ただし、中絶は身体的負担だけでなく、精神的なダメージも大きいため、妊娠を望むまではしっかり避妊をすることが大切です。​

自分のカラダと将来に関わる​
大切なこと

避妊を正しく知ろう​

監修 : 吉村 𣳾典 先生
慶應義塾大学名誉教授