2026.10.01
近年、多くの企業で女性活躍推進が重要な経営課題となっており、中でも女性管理職比率の向上は、多くの企業が注力するテーマの一つと考えられます。しかし、女性管理職比率の向上を目指して育成施策を強化しても、十分な成果につながらないケースは少なくありません。
その背景には、アンコンシャス・バイアスやロールモデル不足、ライフイベントとの両立や女性特有の健康課題など、さまざまな要因が存在します。
本記事では、管理職としての活躍が期待される40代から50代の女性が抱える健康課題の一つである「更年期」にフォーカスし、女性管理職育成の重要性や課題を整理するとともに、更年期離職を防ぐために企業が取り組むべき支援策について解説します。
女性管理職の育成は、単なる女性活躍推進施策ではなく、企業の持続的成長を支える経営戦略の一つです。少子高齢化による労働力不足が進むなか、多様な人材が能力を発揮できる組織づくりは企業競争力の向上につながる要素の一つと考えられています。特に女性管理職の育成は、組織の意思決定の質を高めるだけでなく、人材確保や定着率向上、生産性向上などへの良い影響が期待される取り組みです。
ここでは、企業が女性管理職育成に取り組むべき主な理由について見ていきましょう。
意思決定層に多様なバックグラウンドを持つ人材が参画することで、新しい視点や発想が生まれやすくなります。
女性管理職が増えることで、顧客ニーズや市場環境について多様な視点から検討しやすくなり、商品開発やサービス改善の取り組みに活かされる可能性があります。また、多様な価値観を受け入れる企業文化の醸成にもつながるでしょう。
少子高齢化による労働人口減少が進む中、優秀な女性人材の活躍促進は企業にとって重要な課題です。
女性が将来的なキャリアパスを描ける組織は、求職者から前向きに評価される要因の一つとなる場合があります。また、管理職へのキャリア機会が明確になることで、既存社員のモチベーション向上や定着率向上も期待できます。
女性管理職の中には、育児や介護、家庭との両立などさまざまな経験を積んできた人もいます。
限られた時間で成果を出すために培われた業務改善や優先順位付けの考え方は、組織全体の生産性向上に貢献します。女性管理職の活躍は、長時間労働に依存しない働き方を見直すきっかけとなる場合があります。
女性活躍推進の重要性が広く認識されるようになった一方で、多くの企業では依然として女性管理職の比率が伸び悩んでいます。育成プログラムや制度を整備しているにもかかわらず、期待した成果につながらないケースも少なくありません。
その背景には、組織風土や評価制度に残る無意識の偏見、ライフイベントによるキャリア形成への影響、女性本人が抱えるキャリア上の不安など、複数の要因が存在します。まずは女性管理職育成を阻む要因を理解し、課題の本質を把握することが重要です。
「管理職は男性の方が向いている」「重要な案件は男性に任せるべき」などの無意識の偏見が、評価や登用に影響する場合があります。
本人が意識していなくても、このような固定観念が組織内に存在すると、女性社員に十分な成長機会が与えられず、管理職候補層の形成が進みにくくなります。
妊娠、出産、育児などのライフイベントは男女双方に関わるものです。しかし、総務省の「社会生活基本調査」では、家事・育児などに費やす時間は依然として女性の方が長い傾向が示されており、家庭内の役割負担が女性に偏りやすい状況もみられます。
総務省「社会生活基本調査」
こうした状況の中で、休職や短時間勤務の利用によってキャリア形成に必要な経験機会が限られる場合があり、管理職候補層の形成に影響することがあります。
【参考記事】
男性の育児休業取得率はどのくらい?上げるための取り組みも紹介
身近に女性管理職が少ない場合、自分がリーダーとして働く姿をイメージしにくくなります。
また、「家庭と両立できるのか」「責任を果たせるのか」といった不安から、昇進をためらう女性も少なくありません。
女性管理職の育成を考える際、見落とされがちなテーマの一つが更年期症状・障害による健康課題です。企業は管理職候補者の育成や登用に注力する一方で、その世代特有の心身の変化について十分な配慮が行われていない場合があります。
特に40代から50代は、キャリアの充実期であると同時に、更年期や家庭の責任など複数の負担が重なりやすい時期でもあります。こうした状況を理解せずに育成を進めると、貴重な人材の離職や活躍機会の損失につながる可能性があります。
多くの企業では、管理職候補として期待されるのは40代から50代の社員です。この時期は、これまで培ってきた経験や専門性を活かして、より大きな役割や責任を担う機会が増えるキャリアの充実期にあたります。
一方で、40代から50代は更年期を迎える女性が多い年代でもあります。さらに、子どもの進学や受験、親の介護の開始など、家庭内での責任も増えやすい時期です。仕事では重要なポジションを任される一方、家庭ではさまざまなライフイベントへの対応が求められるため、複数の課題が同時に発生しやすくなります。
次のフロー図は、女性管理職候補が直面しやすい状況の一例を示したものです。企業が女性管理職育成を進める際には、こうした年代特有の課題等も理解したうえで支援策を検討することが大切です。
更年期症状・障害による影響は本人の健康問題だけにとどまりません。ホットフラッシュや倦怠感、不眠、集中力の低下などの症状は、日常業務やマネジメント業務にも影響を及ぼす可能性があります。
症状によって業務効率が低下すると、本人だけでなくチーム全体の生産性にも影響を与える場合があります。また、欠勤や休職が増加すれば業務の再配分や代替人員の確保が必要となり、組織運営上の負担も大きくなります。
さらに、十分な支援が行われないまま離職につながった場合、企業は長年育成してきた人材や貴重な経験・ノウハウを失うことになります。更年期症状・障害への対応は個人支援の観点だけでなく、人材戦略や経営課題として捉えることが求められています。
| 一般的な更年期症状・障害 | 業務への影響例 |
|---|---|
| ホットフラッシュ(ほてり・発汗) | 会議や商談中に集中しづらくなる、人前でのプレゼンテーションに不安を感じる |
| 倦怠感・疲労感 | 業務効率の低下、長時間の会議や移動が負担になる |
| 不眠 | 睡眠不足による判断力や集中力の低下、ミスの増加 |
| 集中力・記憶力の低下 | 業務の抜け漏れや確認作業の増加、新しい業務習得への負担 |
| めまい・動悸 | 通勤や出張への不安、外出を伴う業務への支障 |
| 気分の落ち込み・不安感 | コミュニケーションの減少、マネジメント業務や意思決定への影響 |
| イライラや感情の起伏 | 部下指導やチーム運営における負担増加 |
| 肩こり・頭痛・関節痛 | デスクワークの継続が困難になる場合がある |
※症状や程度には個人差があり、すべての女性に同じ症状が現れるわけではありません。
出典:厚生労働省「働く女性の心とからだの応援サイト」
厚生労働省「更年期症状・障害に関する意識調査」
厚生労働省「働く女性の心とからだの応援サイト「専門家コラム」
女性管理職や管理職候補者が能力を発揮し続けるためには、個人の努力だけに頼るのではなく、企業による適切な支援が求められます。特に更年期症状・障害は本人の意思や能力とは関係なく心身に影響を及ぼすため、組織としての理解とサポートが重要になります。
近年では、健康経営の観点から女性の健康課題に取り組む企業も増えてきました。ここでは、更年期症状・障害による離職を防ぎ、長期的な活躍を支援するために企業が実施できる具体的な施策を紹介します。
更年期症状・障害に関する知識不足は、本人の孤立や職場での誤解を招く原因となります。周囲が症状への理解を持たない場合、「やる気がない」「以前と比べてパフォーマンスが落ちた」などと受け止められ、本来の能力や状況が適切に理解されないこともあります。
下記のフロー図は、更年期症状・障害に対する理解不足がどのように離職リスクへつながるのか、また適切な教育や研修によって職場環境がどのように改善されるのかを示したものです。
企業は更年期症状・障害に関する情報提供やeラーニングの実施、管理職向け研修などを通じて正しい知識の普及を図る必要があります。また、更年期症状・障害だけでなくアンコンシャス・バイアスについて学ぶ機会を設けることで、健康課題とキャリア形成の両面を支援しやすくなります。
更年期症状・障害には個人差があり、同じ社員でも日によって体調が大きく変化する場合があります。そのため、画一的な働き方のみを前提とした職場では、十分なパフォーマンスを発揮できない可能性があります。
企業には、社員が体調や家庭の状況に応じて柔軟に働ける環境整備が求められます。フレックスタイム制度やテレワーク制度、時間単位で取得できる休暇制度などは、社員が体調に応じて働き方を調整しやすくするための施策の一つです。
また、勤務時間や出社頻度だけではなく成果を重視する評価制度を整備することで、多様な働き方を選択する社員の成果を適切に評価しようとする環境づくりにつながります。
更年期症状・障害は外見から分かりにくいため、本人が一人で悩みを抱え込みやすいという特徴があります。相談先が分からないまま我慢を続けた結果、症状が悪化し、休職や離職につながるケースも少なくありません。
厚生労働省「「更年期症状・障害に関する意識調査」について」
厚生労働省「スマート・ライフ・プロジェクトの調査」
そのため企業は、健康課題について安心して相談できる環境を整備することが重要です。産業医や保健師への相談体制の整備に加え、社内相談窓口や外部の専門相談サービスを活用することで、社員が早期に支援へつながりやすくなります。
また、企業における健康支援の取組の一例として、オンラインによる健康相談を活用する事例もみられます。時間や場所の制約を受けにくい相談手段として活用できる場合があります。
女性管理職の育成は、研修制度を導入するだけで実現できるものではありません。育成対象となる女性社員はもちろん、上司や経営層も含めて組織全体で取り組む必要があります。
また、昇進機会の提供だけでなく、継続的に活躍できる環境づくりも重要です。ここでは、女性管理職育成を成功に導くために押さえておきたいポイントを解説します。
女性管理職育成を成功させるためには、人事部門だけが取り組むのではなく、経営層・管理職・女性社員本人がそれぞれの役割を果たしながら進めることが重要です。
下記のフロー図は、女性管理職育成を継続的な活躍につなげるための推進体制を示しています。
経営層は女性活躍推進を経営戦略として位置付け、明確な方針や目標を示す必要があります。また、直属の上司は日々の業務を通じてキャリア形成を支援し、挑戦の機会を提供する役割を担います。
さらに、女性社員本人が主体的にキャリアを考えられるよう、メンター制度やキャリア研修などを活用した支援も重要です。このような多面的な取り組みが、管理職登用後の定着や活躍につながります。
女性管理職育成を推進する企業は増えていますが、育成施策だけでは十分とはいえません。管理職としての役割や責任が大きくなる時期に、更年期症状・障害などの健康課題が重なれば、能力があっても十分に力を発揮できない可能性があります。
そのため、女性活躍推進と健康経営を別々に考えるのではなく、相互に連携した取り組みとして進めることが重要です。キャリア形成支援と健康支援を両立させることで、女性社員がライフステージの変化に対応しながら能力を発揮しやすい環境づくりにつながります。
これからの女性管理職育成では、「育てること」だけではなく、「活躍し続けられる状態を維持すること」まで視野に入れた支援が求められるでしょう。
女性活躍推進において重要なのは、女性管理職の人数を増やすことだけではありません。管理職に登用された後も、それぞれの状況に応じて能力や経験を発揮しながら働き続けられる環境を整えることが大切です。
女性管理職は、キャリア形成だけでなく、育児や介護、家庭との両立など多様な経験を積んでいます。こうした経験から培われた調整力やコミュニケーション力、課題解決力は、組織にとって大きな資産となります。
企業は育成・登用・定着を一体で考え、ライフステージの変化に対応しながら働き続けられる環境を整備する必要があります。そのような取り組みは、持続的な女性活躍推進や企業競争力の向上につながる可能性があります。
女性管理職の育成は、企業の持続的な成長や競争力向上に欠かせない取り組みです。しかし、管理職としての活躍が期待される40代から50代は、更年期症状・障害や育児、介護など複数の課題が重なりやすい時期でもあります。
そのため企業には、女性管理職の育成だけでなく、更年期症状・障害による離職を防ぎながら活躍し続けられる環境づくりが求められます。職場の理解促進や柔軟な制度整備、健康支援体制の充実などを通じて、女性が安心してキャリアを築ける組織づくりを進めることが重要です。
女性活躍推進を真に成功させるためには、育成と健康支援を両立させ、管理職への登用から定着・活躍までを一貫して支援する視点が欠かせません。企業がこうした取り組みを継続することで、多様な人材が能力を発揮できる組織の実現につながるでしょう。
◆ 内閣府「男女共同参画白書」
◆ 厚生労働省「女性活躍推進法特集ページ」
◆ 厚生労働省「働く女性の心とからだの応援サイト(更年期)」
◆ 厚生労働省「女性の健康づくり」
女性管理職の育成を成功させるためには、キャリア支援だけでなく、更年期症状・障害をはじめとする女性特有の健康課題への理解を組織全体で深めることが重要です。しかし、健康課題はデリケートなテーマであるため、職場で正しい知識を共有する機会を設けることに難しさを感じる企業も少なくありません。
フェムナレッジでは、更年期症状・障害や月経、妊活、不妊治療、婦人科がんなど、女性のライフステージに伴う健康課題について学べる研修コンテンツを提供しています。管理職や人事担当者、従業員一人ひとりの理解促進を支援し、誰もが安心して働き続けられる職場づくりをサポートします。
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