母乳は、出産直後からたくさん出るわけではありません。
出産後に初めてでる母乳を「初乳」と呼びますが、分泌量は少なく、黄味がかった色をしています。
しかし初乳は栄養価が高く、赤ちゃんが健やかに成長するために欠かせない免疫成分を多くふくんでいます。
初乳が分泌される期間は個人差があるものの、おおよそ産後2~3日です。
母乳はその後、1週間ほどで分泌量が増えていきます。
含まれる成分も徐々に変化して、エネルギーや脂質、乳糖などが豊富な「成乳」に移行します。
さらにその量が安定するまでには、2週間から1か月程度かかります。
経産婦の場合は、初産に比べ、初乳は分泌しやすくなります。
産後について
知っておきたいこと
妊娠を経て出産を終えたばかりのママのカラダには、
大きな変化が起きています。
妊娠前の状態に戻るには、およそ6~8週間かかり、
その期間は「産褥期(さんじょくき)」と呼ばれます。
産褥期には、個人差があるものの、産前にはみられなかった
多くの不調やさまざまな症状があらわれることがあります。
今回は、産褥期をできるかぎり健康に過ごすために
知っていただきたいことをまとめました。
母乳に関して
基本的なオハナシ
初乳について。
いつから出るの? 量が安定するのはいつから?

分泌を良くするために
知っておきたいこと
-乳児期(1歳まで)
母乳の分泌をよくするためには、まずできるだけ赤ちゃんにしっかり飲んでもらうことが重要です。
母乳の分泌量には個人差がありますが、左右それぞれの乳房で作られる量は、前回の授乳(あるいは搾乳)時に、「どれだけ排出されたか」によって変わります。
以下に「母乳の分泌を良くするコツ」をまとめました。
①最初は回数を気にせず頻繁に授乳する
母乳を出すためのホルモンは、赤ちゃんに吸ってもらうことで分泌が活発になります。
産後1か月健診までは、思うように母乳が出なくても、赤ちゃんが欲しがるたびに吸わせてみるようにしましょう。
②乳房に母乳がたまったままにしない
乳房の中に母乳をためたままにすると、母乳に含まれる「乳汁産生抑制因子」というたんぱく質の働きで、分泌量が減ってしまいます。
どうしても授乳できないときや、赤ちゃんが飲みきれなかったときも、できればそのままにせずに搾乳して排出するようにしましょう。
手絞りでは、まず石けんと流水で手を洗い、片方の手で母乳を入れる容器を持ちます。
そして乳輪の外側を親指と人差し指の腹で軽くつまみ、外側から乳頭に向かって圧をかけます。
上下左右などさまざまな方向から圧して、母乳が出てくるまで続けます。
自分でうまくできない場合は、搾乳器を使う方法もあります。
③血流を良くする
肩甲骨まわりをストレッチやカイロで温めたり、乳房をやわらかくマッサージするなどして血行を良くすることで、母乳の分泌が活発になります。
母乳育児とミルク育児について
生まれたばかりの赤ちゃんが栄養をとる方法は、大きく
- 母乳だけを飲ませる「完全母乳育児」
- 母乳と粉ミルクや液体ミルクなどを併用する「混合育児」
- 粉ミルクや液体ミルクだけを飲ませる「完全ミルク育児」
の3つに分けられます。
2015年に厚生労働省が発表した『乳幼児栄養調査』では、妊娠中の女性の90%以上が「母乳で赤ちゃんを育てたい」、「母乳が出れば母乳で赤ちゃんを育てたい」と回答していますが、実際には、出産から1か月後に「完全母乳育児」をしている方の割合は約50%、「混合育児」もしくは「完全ミルク育児」で、ミルクを飲ませている方が約50%という結果になっています。
では、母乳とミルクはどのような点が異なるのでしょうか?
①栄養価が高いのはどっち?
母乳とミルク、どちらにも赤ちゃんの成長に必要な乳糖、脂質、オリゴ糖、たんぱく質などが含まれています。
成分が全く同じというわけではありませんが、栄養価に大きな違いはありません。
②成分に違いはある?
母乳は赤ちゃんの成長とともに成分割合が微妙に変化します。
一方、ミルクの成分割合は一定で、母乳には少ないビタミンKやビタミンDが多く含まれています。
国内企業のミルクであれば、栄養が母乳に近づくよう国のガイドラインを基準に製造しているため、どれを選んでも成分に大きな違いはないでしょう。
③母乳を飲ませないと免疫力が低くなるの?
母乳には「ラクトフェリン」という免疫力を高める働きがあるたんぱく質が含まれており、古くから「母乳を飲んだ赤ちゃんは免疫力が高い」といわれてきました。
しかし、現在販売されているミルクには、母乳とほとんど変わらない成分が配合されています。
また、赤ちゃんにはお母さんのおなかの中にいるときにもらった免疫成分があるため、「完全ミルク育児」だからといって極端に免疫力が低くなるわけではありません。
④母乳にはアレルギー予防に効果があるって本当?
厚生労働省が発行している『授乳・離乳支援ガイド』において、以前は「母乳は乳幼児期のアレルギー予防に一定の効果がある」という研究結果を紹介していました。
しかし、2019年の改訂版では、「母乳にアレルギーの予防効果を示す確定的な根拠はない」と明記されています。
このように、母乳にもミルクにもそれぞれの良さがあり、「どちらでなければいけない!」という決まりはありません。
大切なことは、赤ちゃんだけでなく家族みんなが心身ともに元気に、笑顔で過ごせる「環境づくり」です。
ママがひとりで頑張るのではなく、パートナーやまわりの人たちと一緒に、自分たちに合った無理のない授乳や育児方法を見つけてください。