Mint+のお役立ちコラム Vol.1
< 月経とは >

女性特有の「月経」という現象は、
女性の生涯にわたる健康に影響をあたえます。
このコラムでは、月経について
わかりやすく解説します。

よしむら先生にお話を聞いたよ!よしむら先生にお話を聞いたよ!
吉村 𣳾典先生吉村 𣳾典先生

吉村 𣳾典先生

慶應義塾大学名誉教授
福島県立医科大学副学長

月経は、妊娠するためのからだのしくみ

医学的に、「周期的に起こる子宮からの出血」を月経といいます。いわゆる「生理」と同じものを表す言葉です。

月経はどのようにして起こるのでしょうか

子宮の左右には卵巣があります。卵巣の中には卵子を入れておく袋があり、この袋を卵胞とよびます。この卵胞は、月経時には5~6mm程度ですが、だんだん大きくなって、排卵の前には20mmくらいの大きさになります。この卵胞が大きくなっていく過程で、女性にいちばん必要な女性ホルモンであるエストロゲンが分泌されます。エストロゲンがたくさん出てくると、子宮内膜がだんだん厚くなり、卵胞の中で育った卵子がポンッと外へ出ます。これが排卵です。

子宮子宮

性交渉があり受精卵が着床した場合

排卵の時期に精子が上がってくると、卵管の中で卵子と精子が受精し、受精卵は7日程度で子宮に到達します。その時期には、子宮内膜は増殖期から分泌期に変化し、さらに厚みが増しています。つまり、受精卵が着床できるようなふわふわなベッドになっているのです。
このベッドに受精卵がポッとつくことを、着床とよびます。

着床しなかった場合

受精しなかった、あるいは受精卵が着床しなかった場合、厚くなった分の子宮内膜がはがれて、出血とともに子宮外に排出されます。これが月経です。つまり、着床しなかったので、もうこれ以上、子宮内膜を育てる必要がなくなったわけです。そして、また次の周期が始まります。

常に妊娠に備えるのは哺乳動物の宿命のようなものです。月経が起こることによって、受精卵にとって着床しやすいベッド(子宮内膜)を毎月用意しているのです。

正しい月経周期の目安は、月経が始まってから次の月経が始まるまで25日から38日までとされています。
しかし、月経周期は人によって違いますよね。また、いつも同じ周期で訪れるわけではありません。
月経周期が長い・短いという個人差は、「排卵までの日数が長いか短いか」によって決まります。排卵から月経までの日数はほぼ共通して約14日です。つまり、月経周期が28日の人は、月経の始まりから排卵までの日数が14日、35日の人は21日、ということです。

月経周期と排卵月経周期と排卵

現代の女性は約400~450回もの月経を経験。
この回数の多さが病気の原因になることも

思春期を迎えるころ、女性のからだには脂肪が付き始め、女性らしいふっくらとしたからだつきに変化していきます。それにより、排卵が起こり、月経が訪れます。初めて訪れる月経を「初経」とよびます。そして、加齢に伴う卵巣の機能低下とともに、排卵が止まり、閉経します。日本人女性の平均閉経年齢は、50.5歳です。

戦前の女性と現代の女性を比較すると、現代では栄養状態が改善され、女性の体格がよくなっているため、初経が3年くらい早くなっています。
しかし、閉経の年齢は戦前と変わっていません。すなわち、戦前と現代で、寿命は大きく延びましたが、生殖年齢はほとんど変わっていないことになります。

戦前の日本では、女性は赤ちゃんをたくさん産んでいました。妊娠中や授乳期間は月経がありませんので、生涯にわたる月経の回数は当然少なくなります。
一方、2018年の出生率は1.42人(厚生労働省「人口動態統計」)です。
戦前と比較して、現代の女性では「月経がある期間」が長いといえますね。
こういったことは、みなさん意外とご存知ないのではないでしょうか。

計算してみますと、戦前の女性は100~150回くらいしか月経を経験していません。一方で、現代の女性は生涯で月経を少なくとも400~450回は経験することになります。現代の女性は、月経にさらされている期間が増えているのです。そして、そのために月経前後のつらい症状や病気が増えてきています。

吉村 𣳾典先生吉村 𣳾典先生

月経周期が安定しない、おなかが痛い、
気分がすぐれない…
月経にまつわるさまざまな病気

初経の後、まず初めに起こりやすいのは、月経周期の異常です。
あるときは20日、またあるときは60日などと月経周期が安定せず、いつ月経がくるかわからないような場合は、排卵が起こりにくい、あるいは起こらないといった排卵障害が疑われます。

また、思春期から起こってくる悩みとして月経痛(医学的には月経困難症)があげられます。おおよそ4~5人に1人はなんらかの月経痛に悩んでいるといわれています。月経痛の最も多い原因は子宮内膜症であるといわれています。

さらに、月経前症候群(PMS)月経前不快気分障害(PMDD)といった心身の異常が起こる方も少なくありません。たとえば、月経前になるととても気分が悪くなったり、胸が張ったり、お腹が痛くなって、何だかイライラして、精神的にも落ち着かないというような症状です。
「こういった症状はPMSやPMDDである」、と女性が知ることが大切です。

また、毎月月経にさらされることにより、貧血になる方もおられます。健康診断で貧血といわれたり、月経量が多く立ちくらみやだるさを感じる方は、医師へご相談ください。

月経による痛みや精神的なつらさがあること、そしてそれを我慢することは当たり前…そんな風に思う女性もいるのではないでしょうか。しかし、我慢する必要はありません。月経やそのつらさは他の人とは比べられないですし、当たり前だと思っていても実はそうではないことも多いのです。もしかしたら、それらの症状の中には、子宮内膜症子宮筋腫子宮腺筋症などが隠れている場合もあるかもしれません。つらい症状にひとりで悩まないで、気軽に産婦人科医へご相談ください。

生活習慣病、骨粗鬆症…
将来の健康にも月経は影響している

40~50代を過ぎるといろいろな生活習慣病が現れますが、実は、女性の場合は月経異常がもとになっていることもあるのです。たとえば、排卵障害のある人は、将来、糖尿病や高血圧といった生活習慣病や子宮体がんを発症することが多いといわれています。
また、思春期の無月経などによるエストロゲン不足は、骨粗鬆症など、将来の骨の健康に悪影響を与えるといわれています。エストロゲンは骨量維持に大切な役割をもっており、骨をつくる能力は16~17歳がピークで、20歳を過ぎると骨量はほとんど増えないためです。
月経にまつわるトラブルを解決することは、将来の健康にも影響をあたえるのです。若いころから月経についてしっかり理解し、自身のからだを管理することの大切さを、ぜひ知っていただきたいです。そのためにも若いうちからかかりつけの産婦人科医を持つことをお薦めします。

吉村 𣳾典先生吉村 𣳾典先生

吉村 𣳾典先生

Profile

よしむら・やすのり/
慶應義塾大学名誉教授 福島県立医科大学副学長
1975年 慶應義塾大学医学部卒業。米国留学等を経て95年より同大学医学部産婦人科教授、現在は同大学名誉教授。日本産科婦人科学会理事長等、数々の学会理事長を歴任。2012年に女性と子どもの未来を考える一般社団法人「吉村やすのり 生命(いのち)の環境研究所」を設立。第2次~第4次安倍内閣で内閣官房参与として少子化対策・子育て支援を担当。これまで3千人以上の不妊症、5千人以上の分娩など数多くの患者の治療を担当。福島県立大野病院問題の解決、HPVワクチンの公的助成や特定不妊治療費助成制度の確立、周産期医療従事者の待遇改善、出産育児一時金や妊婦健診の公的助成の増額など、わが国の周産期医療の危機を救い、女性の健康力増進に貢献。『生殖医療の未来学―生まれてくる子どものために―』など、生殖医学に関する著書多数。

月経はいろんなことに影響を
あたえているんだね。
将来の健康のためにも、
月経や自分のカラダのこと、
きちんと考えてみよう。

しっかり考えようしっかり考えよう
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