Mint+のお役立ちコラム Vol.2
< 月経の悩み解決のヒント >

月経の悩みをひとりで抱えていませんか?
このコラムでは、相談しづらい月経の
お悩みについて解説します。

よしむら先生に教えてもらったよ!よしむら先生に教えてもらったよ!
吉村 𣳾典先生吉村 𣳾典先生

吉村 𣳾典先生

慶應義塾大学名誉教授
福島県立医科大学副学長

月経がない月があり、
気になっています。
月経は必ず毎月なければ
いけないのでしょうか?

月経周期が不規則で悩んでおられる方もいるかもしれませんね。一般に、正常な月経周期は25~38日とかなり幅があるため、月経は「必ず毎月なければいけないもの」ではありません。
もし、月経周期が20日などと短い、あるいは60日などと長い、または周期がいつも安定しない、といった場合は、産婦人科へ相談してみるとよいでしょう。

月経がある動物、
ない動物

月経は、人間やサルなどの限られた哺乳動物にしかありません。多くの野生動物は、経血によって居場所が知られてしまうと、他の動物に襲われる危険が生じてしまうため、月経が起こらないからだの仕組みになっているのです。
ですから、赤ちゃんを妊娠して母乳で育てる哺乳動物にとって、必ずしも月経が必要というわけではないのですよ。

月経痛はあたりまえ?
月経量の「普通」って?
病院に行ったほうがいいのはどんなときですか?

月経痛や月経量を人と比べるのは難しいですよね。「月経痛をがまんするのは仕方ない」「みんなも痛みやつらさをがまんしているに違いない」など、自分ではあたりまえだと思っていることが、実際はそうではない場合もあります。
個人差はあれど、月経痛を抱えている方は少なくないでしょう。その中でも、学校や仕事を休んだりするといった方はもちろん、月経のたびに痛みがあって鎮痛剤を服用しているという方にも産婦人科の受診をお勧めします。つらい痛みをがまんする必要はまったくありません。
また、経血にレバーのような血の塊(かたまり)が混ざっている場合、月経量が「多い」と判断できます。もし500円玉くらいの塊が出るようなことがあれば、受診をお勧めします。
その他にも、月経前に心身の不調が現れる月経前症候群(PMS)といった症状や、立ちくらみやだるさなど貧血のような症状のある場合も、産婦人科医に相談することで、解決できるかもしれません。
月経中に困ったことがあっても、月経期間が終わってしまうと「まぁいいや」「面倒くさい」と感じるかもしれませんが、がまんせずに、そして面倒だと思わずに、一度、産婦人科で診てもらいましょう。受診するタイミングは、月経中でも月経後でも構いませんが、経血が気になる方は月経後のほうがいいかもしれませんね。

月経痛やつらい症状はがまんしなくていいんだね!月経痛やつらい症状はがまんしなくていいんだね!

月経と経済のカンケイ

「仕事をがんばりたいのに月経痛がつらくてがまんできない…」そんな経験がある方もおられるかもしれません。実は、月経痛や月経前症候群のつらい症状により、会社を休んだり、仕事に集中できなかったりすることで、年間約6,000~7,000億円もの経済へのマイナスがあるといわれています。月経のつらさは、女性が社会で活躍するのをさまたげる要因のひとつなのです。女性がイキイキと仕事と向き合うためにも、月経のつらさをがまんせず、適切な治療を受けることをお勧めします。

※ Tanaka E et al.: J Med Econ. 2013; 16(11): 1255-1266

月経について悩んだとき、
誰に相談すればいいですか?

上記のような症状があったり、月経で悩んでいる方は、ぜひ一度、産婦人科にご相談ください。また、学生さんであれば、まずはお母さんに相談してみましょう。そして、お母さんと一緒に産婦人科にご相談ください。
欧米では、初経(初めて訪れる月経)を迎えると、まずお母さんと一緒に産婦人科を訪れ、医師から月経や女性のからだについて説明してもらうそうです。日本では、まだまだ産婦人科に行くことに抵抗がある方や、産婦人科とは「妊娠に関する病院」と思われている方も多いかもしれません。しかし、産婦人科は「月経や女性のからだのあらゆる悩みについて、誰でも気軽に相談に行ける場所」です。なにか困っていることがあれば、気軽に、そして早めに産婦人科へご相談ください。

産婦人科に行ったら
どんな検査、治療を
するのでしょうか?

産婦人科では、問診のほかに、必要に応じて超音波検査、内診などの検査を行います。
超音波検査では、子宮と卵巣の状態を調べます。月経痛や月経量といった悩みの背景には、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症などの病気がある場合がありますので、それらをチェックします。
そのような病気が見つかった場合、まずお薬で経過をみて、症状がおさまらないときには、手術が必要なこともあります。
月経痛(月経困難症)に対しては、LEP(レップ)製剤、黄体ホルモン剤といったホルモン製剤や、鎮痛剤、漢方などのお薬が症状に応じて処方されます。

月経困難症の治療に用いられる主なお薬

LEP製剤:
低用量卵胞ホルモン(エストロゲン)・
黄体ホルモン(プロゲスチン)配合薬
排卵を休ませ、子宮内膜を厚くさせないことで
月経痛を軽減します。
黄体ホルモン(プロゲスチン)剤 子宮内膜を厚くさせないことで
月経痛を軽減します。
その他 痛みの原因となるプロスタグランジンの
産生を抑える鎮痛剤や、
痛み、むくみ、便秘、冷え性などの症状を緩和するために、漢方、ビタミン剤、利尿剤などが
処方されることがあります。

月経に悩む女性に
メッセージをお願いします!

まだまだ日本では月経について「月経痛があるのが当たり前」、「がまんすることが当たり前、美しいこと」、「月経痛で学校や仕事を休むのは甘え」などといった考え方をされることも少なくないと思います。
けれど、このコラムで解説したように、月経によるつらさをがまんする必要はまったくないのです。
また、産婦人科は月経や女性のからだの悩みを気軽に相談できる場所であり、月経のつらい症状は治療で改善できる、といった情報を知らない方も多いでしょう。そのような知識を教育の中で若いうちから知ってほしい。娘を持つ保護者の方たちにも知ってほしい。そして、女性だけでなく、男性にも理解を深めてほしいと思います。
学生の方であれば勉強や体育、社会人の方であればお仕事など、日常生活においてつらい症状に苦しむことなく過ごせる世の中になればと考えています。
少しでも困ったことがあれば産婦人科にお越しください。きっとお役に立てると思います。

吉村 𣳾典先生吉村 𣳾典先生

吉村 𣳾典先生

Profile

よしむら・やすのり/
慶應義塾大学名誉教授 福島県立医科大学副学長
1975年 慶應義塾大学医学部卒業。米国留学等を経て95年より同大学医学部産婦人科教授、現在は同大学名誉教授。日本産科婦人科学会理事長等、数々の学会理事長を歴任。2012年に女性と子どもの未来を考える一般社団法人「吉村やすのり 生命(いのち)の環境研究所」を設立。第2次~第4次安倍内閣で内閣官房参与として少子化対策・子育て支援を担当。これまで3千人以上の不妊症、5千人以上の分娩など数多くの患者の治療を担当。福島県立大野病院問題の解決、HPVワクチンの公的助成や特定不妊治療費助成制度の確立、周産期医療従事者の待遇改善、出産育児一時金や妊婦健診の公的助成の増額など、わが国の周産期医療の危機を救い、女性の健康力増進に貢献。『生殖医療の未来学―生まれてくる子どものために―』など、生殖医学に関する著書多数。

月経の悩みは、
ひとりで抱えずに、
産婦人科の先生に聞いてみよう。

先生がいるよ!先生がいるよ!
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