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このコラムでは、女性のための
健康ラボMint+が実施した
「生理(月経)をはじめとする女性ホルモンに
関する男女の意識調査」の
結果をご紹介します。
この調査では、女性の体と健康についての正しい情報について、女性だけでなく男性にも回答いただいています。また、調査結果について産婦人科医の吉村𣳾典先生にコメントをいただきました。
※構成比(%)は小数点第2位以下を四捨五入しています。合計しても必ずしも100%にならない場合があります。
女性の生理について
理解している男性は約4割
生理前・生理中の
つらい症状は男性に知られていない
※女性のスコアが高い順に表示
「生理中に腹痛が生じる」、「症状の有無や程度は、個人差がある」という生理の特徴は男女とも高く認知されていました。しかし、「排卵が起こらなくても生理がくることがある(生理のような出血)」ということは女性でもあまり認知されていないようです。
一方、「生理中だけでなく排卵日前後や生理前などにもつらい症状が起こることがある」、「生理中に腰痛が生じる」といったことへの認知には男女差が大きいことがわかりました。
生理前のつらい症状や生理中の腰痛など、女性特有のつらさは男性にはまだまだ認知されていないようです。
生理に関する情報源の多くは
「学校教育」
生理に関する情報源として、女性は「小学校の授業」、男性は「中学校の授業」と、学校での授業を挙げる方が最も多い結果となりました。一方、男性の約5割は、小中高の「学校教育」のいずれも選択していませんでした。これは、日本人男性の2人に1人は、生理について学校の授業で学んだ記憶がないということを示しています。
また、学校教育以外では、男性は「パートナー」から、女性は「インターネット検索」から生理の情報を得ていることがわかりました。女性のインターネット検索で得た生理の知識が、そのまま男性の知識につながっているという場合も多いかもしれません。
今回の調査で、月経に関する理解度において、「理解している」と回答した男性は4割程度という低い結果となりました。わが国の生殖に関する知識は、先進諸国の中でも低く、これまでの学校教育において、男女共に月経や妊娠のしくみなどの生殖に関する知識を学ぶ機会が非常に少なかったというのが現状です。今回の結果は、将来のわが国における生殖に関する学校教育がいかに重要かということを明示しています。特に男性は、中学校の授業やパートナーから知識を得ている割合が多く、今後は女性と同じように月経に関する正しい知識を学校教育で学んでいくことが大切です。
つらい症状を感じる女性の
割合・パートナーの認知割合
生理痛や更年期障害などの女性ホルモンによるつらい症状について、女性の約7割が「症状を感じる」と回答しました。また、若い世代の方がつらさを感じる割合が高くなりました。具体的な症状として、「腹痛」、「イライラ」、「だるさ」などを感じる方が多いようです。
妻や恋人など女性のパートナーがいる男性のうち、パートナーの女性ホルモンによるつらい症状について7割以上の方が認知していることがわかりました。また、認知している症状として、「イライラ」、「腹痛」、「体がだるい」が上位となり、「八つ当たりされる」と答えた男性もいました。
つらい症状に対する男女の意見
※PMDD:月経前不快気分障害。月経前症候群(PMS)よりもイライラ、気分の変化、不安など、こころの症状が重い状態のこと
女性特有のつらい症状への対処方法
女性ホルモンによる女性特有のつらい症状を自覚する女性は、症状への対処方法として「痛み止めなどの市販薬を飲む」、「休養を取る/安静にする」、「お腹や腰など、体を温める」、「たくさん寝る」、「お風呂にゆっくり入る」など、手軽な方法を選択していることがわかりました。「医療機関に相談する」女性は約1割と少なく、「医療機関で処方される薬(月経困難症の治療薬など)で対処」や「医療機関で処方されるホルモン補充療法」などの積極的な治療を行う女性はわずかでした。
対処方法に対する満足度
つらい症状に対して何らかの対処をしていると答えた女性のうち、「どちらともいえない」、「あまり満足していない」、「満足していない」と現在の対処方法に対して満足しているとはいえない方が半数以上にのぼることがわかりました。
パートナーとうまくいくようにしていること
女性のつらい症状に対し、パートナーとうまくいくよう対処していることについては、「我慢せずどうつらいのかを伝える」(女性)、「つらいことを伝えてもらう」(男性)などの積極的な関与のほか、男女ともに「そっとしておく/しておいてもらう」といった工夫も寄せられ、それぞれのパートナーシップにとって、よりよい対処方法を選択しているようです。
つらい症状への対処法として、医療機関へ行っている人が1割程度と極めて低く、約6割の女性が市販の薬で対処していることが非常に驚きでした。市販薬を飲むことや体を温めることは決して悪いことではありませんが、これらの対処法は根治療法ではありません。思春期から月経トラブルを解決していくことは、将来の骨粗しょう症、糖尿病、脂質代謝異常などの生活習慣病の予防につながるため、月経痛や月経困難症などのつらさを取るためのファーストラインとして、産婦人科医に相談することが大切です。
女性の月経に伴うつらい症状により会社を休んだり、集中できなかったりすることで、年間約6,000億~7,000億円もの経済損失があるといわれています※。こうした症状は、女性が社会で活躍するのを妨げる要因の一つなのです。女性がいきいきと社会で活躍していくためにも、つらい症状をがまんせず、適切な治療を受けることをお勧めします。
※ Tanaka E et al.: J Med Econ. 2013; 16(11): 1255-1266
お互いの理解についての期待
女性の約9割が、パートナーを含めた周囲の人に、女性ホルモンによるつらい症状について理解してほしいと思っていることが分かりました。年代別に見ると、30代女性が95.2%と最も高くなっています。女性にとっての30代は、結婚、出産、仕事、家事、育児などライフステージが大きく変わる時期。つらい症状への理解をより求めたい年代といえそうです。
また、男性の約8割が、女性が抱える女性ホルモンによるつらい症状について理解したいと考えていることがわかりました。
理解を深める上でのハードル
女性ホルモンによるつらい症状について男女共に理解を望んでいますが、現実的にまだまだ十分とはいえません。
女性のつらい症状への理解を広める上でのハードルとして、男女ともに「オープンな話題にしにくい風潮」、「『女性のつらい症状に関心のない男性』が『つらい症状のある女性』を理解しようとしないこと」を挙げる方が多い結果となりました。
つらい症状に対する相互理解への
男女間の認識の隔たり
男女差が大きいのは「女性ホルモンによるつらい症状は大したことではないという考え」となりました。女性は「月経によるつらい症状は大したことではなく、我慢するのが当然だと思われている」「症状のない人には理解してもらえない」と考え、つらさを抱え込んでいるのかもしれません。
女性ホルモンのつらい症状への理解において、男性の約8割が「理解したい」と望んでいるのに、女性の約9割が「理解してほしい」と感じているのは、男性側は「理解したい」という思いがあっても、十分に理解をするための行動までには至らず、女性から見れば「まだまだ理解が足りていない」と感じているからなのです。現代女性の約半分は月経痛で苦しんでいますが、この苦しみが男性には理解されていないというのが現状です。これが男女間のギャップにつながっています。
また、理解したいと望んでいるにもかかわらず、それが難しいのは、正しい情報を発信する医療者側の問題でもあり、社会全体で正しい知識を得ることができるツールや仕組みを作っていくことが非常に大切であると考えます。
吉村 𣳾典先生
Profile
よしむら・やすのり/
慶應義塾大学名誉教授 福島県立医科大学副学長
1975年 慶應義塾大学医学部卒業。米国留学等を経て95年より同大学医学部産婦人科教授、現在は同大学名誉教授。日本産科婦人科学会理事長等、数々の学会理事長を歴任。2012年に女性と子どもの未来を考える一般社団法人「吉村やすのり 生命(いのち)の環境研究所」を設立。第2次~第4次安倍内閣で内閣官房参与として少子化対策・子育て支援を担当。これまで3千人以上の不妊症、5千人以上の分娩など数多くの患者の治療を担当。福島県立大野病院問題の解決、HPVワクチンの公的助成や特定不妊治療費助成制度の確立、周産期医療従事者の待遇改善、出産育児一時金や妊婦健診の公的助成の増額など、わが国の周産期医療の危機を救い、女性の健康力増進に貢献。『生殖医療の未来学―生まれてくる子どものために―』など、生殖医学に関する著書多数。
お互いを理解しあうために、
女性自身も
男性も「女性のカラダ」について
正しく知ることが大切だね。
Mint+の情報も「知ること」の
役に立てたらいいな。