Mint+のお役立ちコラム Vol.10
< 産婦人科医 吉村先生に聞いてみよう!
素敵にエイジング!
更年期と女性の健康 >

このコラムでは、2023年7月4日に
Mint+×ABC HEALTH LABOの
『「食」からはじめる
女性の健康推進プロジェクト』が
開催した
オンラインセミナーにおいて
参加者の皆さまから寄せられた質問について、
産婦人科医の吉村𣳾典先生と
管理栄養士の高木祐香先生に解説していただきます。

監修:慶應義塾大学名誉教授 吉村𣳾典先生
管理栄養士 ⾼⽊祐⾹先生

悩んだときに読んでみよう

産婦人科医 吉村先生からの解説

Q更年期が来たかどうか、判断する方法はありますか。
A

更年期が訪れる際に、まず始めに感じることが多いのは月経周期の乱れです。一般的に、排卵が正常に行われなくなるために月経が頻繁に起こる(月経周期が短くなる)ようになり、徐々に月経がなくなっていくことが多いようです。中には、更年期の訪れとともに月経がなくなる、という方もいます。更年期かどうか正確に診断するには、産婦人科を受診するとよいでしょう。

Q更年期のつらさを軽減するために、更年期対策として30~40代からできることを教えてください。
A

更年期に備えて、あらかじめ対策をすることはとても大切な考え方です。
実際には、更年期が訪れてから対策を講じる方が多いものの、30~40代位から更年期を意識した生活設計をしていくことが望まれます。
たとえば、自身の月経の状態、つまり生殖機能を正しく把握するために、産婦人科を受診し、対処法や治療法を学んでおくなどの準備が有効です。
更年期になってから対応を始めるのではなく、あらかじめ更年期を意識した生活設計をしていきましょう。

Q10年以上にわたって更年期症状が続いているような気がしています。この症状には別の原因があるのかどうか、調べた方がいいでしょうか?
A

更年期症状が10年も続くという人は少なく、通常であれば長くても5年程度で症状が治まってきます。そのため、10年以上も更年期症状が続くということは、他に内科的な病気が隠れている可能性も考えられます。たとえば、肝臓や腎臓、甲状腺に関わる病気や、貧血、メニエール病、関節リウマチなどとの鑑別が必要かと思います。また、更年期症状の特徴的な症状として、うつ病に似た精神症状が起こることがありますが、中には本当のうつ病を発症している方もいます。

このように、「たかが更年期症状」とは考えずに、産婦人科医と相談しながら内科的なチェックも受けた方がよいでしょう。特に、症状が長引く場合には、早めの受診をおすすめします。

Q健康診断の結果ではどこにも異常がないにもかかわらず、体がだるいと感じる時があります。不調がある時には産婦人科を受診した方がよいのでしょうか?また、医師にはどのように説明すればよいのでしょうか?
A

「不定愁訴」とよばれる「原因がはっきり分からないけれど、なんとなく体調が悪い」という状態があり、お困りの症状にも当てはまるかもしれません。45~55歳位の女性では、この不定愁訴として、複数の症状が同時に起こる場合があります。症状に悩む場合、産婦人科医に相談してみるとよいでしょう。
相談する際には、「いつごろからどのような症状が現れたか」「現在の月経周期」などをお伝えいただくと更年期症状/更年期障害かどうか判断しやすくなります。また、ホルモンの値からもある程度の鑑別ができるため、受診時にエストロゲンや下垂体ホルモンなどといったホルモンの値を測定するための検査をおこなうこともあります。詳しくは、産婦人科医へご相談ください。

Q更年期について、どのようなときに産婦人科を受診すればよいでしょうか?
A

更年期に起こる症状はさまざまです。たとえば冷えや頭痛、肩こりなどといった症状があれば、早めに産婦人科を受診して適切な治療を受けた方が楽になることもあります。
このようにQOL(生活の質)を考えると、何か違和感がある程度でも困りごとがある場合は、早めに受診した方がよいと思います。

Q出産経験の有無によって、更年期症状に違いはあるのでしょうか?
A

更年期は、どんな女性にも訪れます。また、出産経験の有無によって現れる症状の種類や程度に違いはありません。

Q男性の更年期も、女性と同じ年齢、同じ症状なのでしょうか?
A

更年期というライフステージや、その時期に起きる諸問題は女性のみに現れると思っている人が多く、男性の更年期はまだまだ認知されていません。しかし、男性にも更年期は存在し、そのことを男女双方が理解することはとても大切です。
女性の更年期は平均で45~55歳ごろですが、男性の更年期は40歳を超えたらいつでも起こるといわれています。また、女性の更年期症状は4~5年程度で治まることが多いのに対し、男性の症状はなかなか治まりにくいとされています。具体的な初期症状として、なんとなく体調が優れない、突然ほてりや発汗が生じるなどといった血管神経系の症状が多くみられます。精神症状としてうつ状態が現れることもあり、重症化してから医療機関を受診される方も少なくありません。

また、女性の場合は、更年期症状を訴える人は女性全体の2~3割と比較的多く、既に社会的認知も進んでいるため、症状があることを周囲に話したり、医療機関を受診したりすることに対するためらいが少ないと思います。一方で、男性の場合は、更年期の存在を男性自身も知らないために不調の原因が分からない、更年期であることを知ったとしても周囲に話しづらいという現状があります。そのため、症状が重くなってから医療機関を受診する方も多いのです。このように、男性の更年期は大きな問題であるにもかかわらず、あまり社会に認知されていません。これを機会に、男性にも更年期があることを知り、今後ぜひ理解を深めていただきたいと思います。

Q更年期症状の自覚症状はありませんが、症状に早く気づくサインはありますか?また、早く気づくことで症状が重くなるのを防ぐことはできますか?
A

なんとなく体調が優れない、ほてりや冷えがある、冬でも汗をかく、などといった症状は“初期のサイン”といえるでしょう。この段階に産婦人科を受診し、ホルモンの検査や適切な治療を受けることがよいと思います。

吉村先生からのメッセージ

今や、働く女性の1/4が更年期世代であるといわれるほど、更年期の症状に悩む女性が増え、退職や離職を余儀なくされる人も多いといわれています。女性が生涯を通して健康で明るく充実した日々を送るためにも、更年期時代以降のサクセスフルエイジングは大変重要です。また、企業における健康経営の観点からも、更年期の女性をいかにしてケアしていくかは極めて大切になってきます。更年期以降のサクセスフルエイジングのためには、思春期から“生涯を通じた女性のヘルスケア”について学び、理解すること大切であると考えます。

管理栄養士 高木先生からの解説

Q食事で更年期は改善しますか?よい食材を教えて欲しいです。
A

おすすめの栄養素はビタミンEになります。
ビタミンEは女性ホルモンの分泌を調整したり、女性ホルモンの代謝に関わるビタミンで、更年期の症状を緩和する効果も期待されています。
また、強い抗酸化作用や血行促進作用が期待されることから、若返りのビタミンとも呼ばれています。
特に更年期では血液循環などの働きがうまくいかないことで起こる、のぼせや発汗または冷え、肩こり、腰痛などの症状でお悩みの方には、ビタミンEがおすすめです。
ビタミンEを豊富に含む食品としては、アーモンドなどのナッツ類、また、西洋かぼちゃ、ツナ缶、イワシ缶、アボカド、ウナギなどがあります。
調理ポイントは脂溶性ビタミンとなりますので油脂と組み合わせると吸収が高まります。
油を使って調理をしたり、また乳製品や肉、魚など脂質を豊富に含む食材と組み合わせるのがおすすめです。
これらの食品は普段の食事に手軽に取り入れやすいものではないでしょうか。
例えば、アーモンドの場合、サラダのトッピングやおやつで召し上がっていただいたり、アーモンドミルクを利用することも可能です。
また、ツナ缶やイワシ缶などは、油漬けの缶詰を選んでいただくことで脂質もとれますし、トーストに乗せたり、パスタの具材にとアレンジが豊富で使いやすいものです。
アボカドやかぼちゃなどもビタミンEが豊富に含まれます。
前述のとおり、脂溶性ビタミンのため、脂質の多い牛乳や豆乳を使ったスープの具材にしたり、サラダにするときには、オイルやチーズを合わせて吸収率アップを図るということがポイントです。

Q大豆イソフラボンのとり過ぎも良くないと耳にしたことがあるのですが、適切な摂取量を教えてください。
A

食品安全委員会では1日の大豆イソフラボンの摂取目安量の上限を70~75mgとしています。
この推奨される量を摂取するには、1日に何をどのぐらいとればいいのか食品で例えると、200mlの豆乳1パックと、絹ごし豆腐1/3丁分で約70.6mgです。
また、大豆の水煮50gと厚揚げ1/2枚分で約75.2mg、納豆は、1パック40〜50グラムのものを、2パック分食べると約73.6mgになります。
普段から大豆製品を積極的に取り入れていれば摂取できそうな量に見えますが、実際にはどれぐらいの量をとれているのでしょうか。
国民栄養調査(平成14年)によると、1日あたりの平均摂取量は18mgで、普段の食生活では十分にとれていない人が多いことがわかっています。
大豆イソフラボンは意識しないと不足しがちな栄養素なので、毎日の食卓に複数の大豆製品を取り入れるようにするとよいです。
大豆イソフラボンを多く含む食品には、大豆や、納豆、豆腐、厚揚げ、豆乳、おからの他、きなこやみそなど使いやすい食品がたくさんありますので参考にしてください。

ホルモンバランスをととのえる食事とは

Q大豆製品を毎日の食事に取り入れるためのおすすめの料理や調理のコツは?
A

簡単で続けやすい方法としては、豆乳や調理いらずの納豆、豆腐の他、大豆入りの副菜を常備しておくと便利です。
大豆製品に置き換える調理テクニックをご紹介します。

1.シチューやグラタン、スープなど水や牛乳を使う料理を豆乳に変える。

2.お肉の一部を豆腐や大豆ミートに変える。
豆腐であれば、豆腐ハンバーグにしたり、厚揚げで豆腐ステーキなどもお勧めです。
また大豆ミートは本物の肉のような食感が楽しめるということで、最近よく目にするようになりました。ミンチやブロックなど形状も選べますので、和・洋・中、さまざまな料理に使えます。

3.からあげ、お好み焼き、パンケーキなどで使う薄力粉をおからパウダーに変える。
大豆製品は大豆イソフラボンや、タンパク質などさまざまな栄養素を含む、便利な食品です。

是非食卓に取り入れていただければと思います。

Qエイジングケアで組み合わせがいい食べ物はありますか。
A

エイジングケアで取り入れたい代表的な栄養素としては、抗酸化ビタミンと呼ばれる「ビタミンA・C・E(エース)」の組み合わせです。
ビタミンA・C・Eは、どれも強い抗酸化作用が期待されるビタミンで、組み合わせることで相乗効果が生まれ、さらに抗酸化力が高まると言われています。
今回のオンラインセミナーでご紹介した「アボカドの豆乳パスタ」はビタミンEを豊富に含む食材を用いたメニューでした。このパスタに組み合わせる場合のアレンジ例をあげますので、食材も含め、参考にしてください。

ビタミンA:レバー、ウナギ、人参、ほうれんそう、モロヘイヤなど
レバーは、ビタミンAが豊富な代表的な食材になります。
レバーが苦手な方は、サラダに人参を入れたり、ほうれんそうをパスタに加えるなど、野菜で摂取することもできます。

ビタミンE:ツナ缶、アボカド、豆乳など

ビタミンC:緑黄色野菜、いも類、果物など
ピーマンやゆでたブロッコリー、ゆでたジャガイモなどをサラダにして、パスタに添えるとビタミンCも摂れて、抗酸化力がアップします。
デザートにグレープフルーツなど柑橘類を付けるのもおすすめです。

高木先生からのメッセージ

出産や更年期などライフステージが変わることで、私たちの体や心には変化が起こります。その変化をネガティブに捉える方もいるかもしれませんが、幸いなことに今の時代は自分に生じる変化を事前に知ることができ、相談できる環境もあります。更年期とは何か、食事や運動など日常生活で取り組める工夫はあるかなど。あなたに必要な正しい知識を身に付け、理解を深めながら、更年期をすこやかに過ごせる生き方を見つけてくださいね。

監修医のご紹介

吉村 𣳾典先生吉村 𣳾典先生

吉村 𣳾典先生

Profile

よしむら・やすのり/慶應義塾大学名誉教授 福島県立医科大学副学長
あすか製薬ホールディングス株式会社社外取締役

1975年 慶應義塾大学医学部卒業。米国留学等を経て95年より同大学医学部産婦人科教授、現在は同大学名誉教授。日本産科婦人科学会理事長等、数々の学会理事長を歴任。2012年に女性と子どもの未来を考える一般社団法人「吉村やすのり 生命(いのち)の環境研究所」を設立。第2次~第4次安倍内閣で内閣官房参与として少子化対策・子育て支援を担当。これまで3千人以上の不妊症、5千人以上の分娩など数多くの患者の治療を担当。福島県立大野病院問題の解決、HPVワクチンの公的助成や特定不妊治療費助成制度の確立、周産期医療従事者の待遇改善、出産育児一時金や妊婦健診の公的助成の増額など、わが国の周産期医療の危機を救い、女性の健康力増進に貢献。『生殖医療の未来学―生まれてくる子どものために―』など、生殖医学に関する著書多数。

よしむら・やすのり/慶應義塾大学名誉教授 福島県立医科大学副学長 あすか製薬ホールディングス株式会社社外取締役
1975年 慶應義塾大学医学部卒業。米国留学等を経て95年より同大学医学部産婦人科教授、現在は同大学名誉教授。日本産科婦人科学会理事長等、数々の学会理事長を歴任。2012年に女性と子どもの未来を考える一般社団法人「吉村やすのり 生命(いのち)の環境研究所」を設立。第2次~第4次安倍内閣で内閣官房参与として少子化対策・子育て支援を担当。これまで3千人以上の不妊症、5千人以上の分娩など数多くの患者の治療を担当。福島県立大野病院問題の解決、HPVワクチンの公的助成や特定不妊治療費助成制度の確立、周産期医療従事者の待遇改善、出産育児一時金や妊婦健診の公的助成の増額など、わが国の周産期医療の危機を救い、女性の健康力増進に貢献。『生殖医療の未来学―生まれてくる子どものために―』など、生殖医学に関する著書多数。

監修者のご紹介

高木 祐香先生高木 祐香先生

高木 祐香先生

Profile

たかぎ・ゆか/フリーランス 料理家・管理栄養士・国際薬膳師
大手料理教室にて料理講師や海外勤務、ヘルスケア事業での経験を経てフリーランスとして独立。
現在は『こころもカラダも幸せにする食を。』をモットーに、栄養学と薬膳の両面からアプローチする食の専門家として、食事で未病(プチ不調)を防ぐ『食養生』の予防医学を提唱。
企業とコラボしたセミナーや料理教室、レシピ開発、メディア出演、事業コンサルなど多岐にわたり活動中。
ホームページ公開中「女性のための“食べるセルフケア”」

更年期の前から、
更年期を意識した生活を
送ることが大切なんだね。
もし気になる症状がでてきたら、
一人で悩まず、
早めに産婦人科に相談することも
大切だね。

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