Mint+のお役立ちコラム Vol.11
< 女性だけじゃない!「男性更年期」を知ろう >

「更年期」と聞くと、
女性をイメージする方が多いのではないでしょうか。
最近、メディアで「男性更年期」という言葉が
取り上げられるようになってきました。
疾患として明確な定義付けをされていないものの、
女性と同様に、更年期の男性に起こる不調が
注目されています。
今回はパートナーやご家族など
男性のカラダに起こる変化について、
理解を深めていきましょう。

監修:慶應義塾⼤学名誉教授 吉村𣳾典先⽣

なにかヒントがみつかるかも?!

男性更年期障害とは?

男性にもある!「更年期障害」

顔がほてる、汗をかきやすい、イライラする、寝つきが悪いなどといった不調は更年期の女性に多くみられる症状ですが、男性でも同じような症状に悩まされることがあります。これらの症状は「男性更年期障害」によるものかもしれません。

女性の更年期障害の大きな原因は、更年期にエストロゲンという女性ホルモンの分泌が急激に減少することによるホルモンバランスの乱れです。
男性の更年期障害もテストステロンという男性ホルモンの減少やバランスの乱れがきっかけで起こりますが、男性ホルモンの減少は女性ホルモンと比べて緩やかです。このようなテストステロン減少に伴う不調は、「男性更年期障害」のほかに「加齢性腺機能低下症」や「LOH(ロー)症候群」と呼ばれることもあります。

※Late onset hypogonadism

こんな症状があったら男性更年期障害かも?

こんな症状があったら男性更年期障害かも? こんな症状があったら男性更年期障害かも?

更年期、女性と男性の違いは?

日本人女性の平均的な閉経年齢は50.5歳といわれています。この閉経年齢をはさんだ前後5年をあわせた10年間(45〜55歳頃)を、一般に「更年期」と呼んでいます。
この時期にホルモンバランスの乱れから生じる日常生活に支障をきたすような症状が更年期障害です。一般的に閉経後は更年期障害のさまざまな不調が少しずつおさまっていきます。
一方、男性の場合は女性の閉経にあたるような、ホルモンバランスが乱れるきっかけとなるタイミングがありません。テストステロンの分泌量は20代がピークで、その後緩やかに減少していきますが、その減少の度合いには大きな個人差があります。そのため40代以降では、いつでも更年期になりえます。さらに、女性とは違い、時間が経過しても症状が改善しないこともあります。
ただし、テストステロンが低下しても症状には個人差が大きく、症状が起こらない方もいます。
また、最近の研究では、加齢に加えて、肥満や強いストレスがホルモン減少を加速させることもわかってきています。

男女別・加齢と性ホルモン分泌の変化 男女別・加齢と性ホルモン分泌の変化

https://www.aska-pharma.co.jp/media_men/column/testosterone/

まだまだ認知度が低い、男性更年期

2022年に厚生労働省が実施した調査では、「男性にも更年期にまつわる不調があること」に対する認知・理解が低いことが報告されています。特に、当事者となる男性の認知・理解は女性よりも低く、全年代で8割以上の男性が「知らない」または「聞いたことはあるが詳しく知らない」と回答しています。心身の不調があらわれても、「もしかしたら更年期障害かもしれない」と思い当たらず、実は不調に悩んでいる男性が身近にいらっしゃるかもしれません。

性別・年代別 更年期に対する理解 性別・年代別 更年期に対する理解

出典:厚生労働省「更年期症状・障害に関する意識調査」
基本集計結果(2022年7月26日)より作図

知っておきたい、テストステロンの働き

テストステロンは、筋肉や骨をつくる、性機能にかかわるといった働き以外にも、精神面や認知機能などにも深く関わる重要なホルモンです。

テストステロンが影響を与える部位や心身の機能 テストステロンが影響を与える部位や心身の機能

女性の健康にも関わるテストステロン

テストステロンは、女性にとっても無縁な存在ではありません。
女性のカラダでは、卵巣や副腎からテストステロンが分泌されます。女性のテストステロン値は男性の1/10~1/20程度とされていますが、男性と同様、筋肉や骨をつくる、性欲・性衝動、精神面などにおいて重要な働きをしています。

不調を感じたときは、まずは受信してみよう 不調を感じたときは、まずは受信してみよう

男性更年期障害の検査と診断

病院で診察を受けるなら何科?

女性の場合、不調を感じたときには「婦人科」に相談してみようと思う人が多いかもしれません。では、男性はどうでしょうか?

男性更年期障害は、内科や泌尿器科などで診察が受けられます。疲労感、ほてり、動悸、めまいが気になる方は内科、性機能などで悩んでいる方は、まずはかかりつけの医師などに相談してみましょう。

最近では、男性にも更年期があるという事実が少しずつ知られるようになり、メンズヘルス外来や男性更年期外来も増えてきました。男性の更年期症状はストレスやうつと自己判断せず、症状や治療に理解のある医療機関を受診することが大切です。

テストステロン値は血液検査でわかる

医療機関では、問診によって高血圧、糖尿病、脂質異常症などといった既往症の有無や、気になる症状について確認します。同時に、血液検査によるテストステロンの値の検査や、場合によってはその他の検査により、不調の原因が男性更年期によるものか、あるいは別の病気によるものか見極めていきます。

症状のつらさはテストステロン値だけではわからない

テストステロンの値が年齢基準値より低く、心身に強い症状があらわれて日常生活に支障をきたしている場合、男性更年期障害の可能性があります。
ただし、テストステロンの値には個人差があり、数値が低い=症状が重いとは限りません。テストステロンの値が基準値より低くても特に心身の不調がほとんどない人がいる一方で、基準値を満たしているにもかかわらず心身につらい症状があらわれ悩まされている人もいます。

どんな治療法があるの?

生活改善からホルモン補充療法まで

男性更年期障害の治療では、症状の種類や程度に応じたお薬を用いたり生活習慣の改善などを行ったりします。
なお、男性更年期の治療や処方されるお薬は、保険適用にならない場合もあります。

男性更年期障害の治療に用いられる
主な治療方法とお薬

男性更年期障害の治療に用いられる主な治療方法とお薬 男性更年期障害の治療に用いられる主な治療方法とお薬

これらの治療は、開始から半年ほどで効果があらわれる人が多いようですが、個人差があります。

テストステロンの値がさほど減少していない、または症状が軽い場合は、日頃の生活習慣を見直すだけでも効果が期待できることもあります。バランスのよい食事や適度な運動、十分な睡眠をこころがけ、ストレスをためない生活を意識してみるとよいでしょう。

まずは「みんなで知る」ことから

「自分ごと」になりづらい男性更年期

前述のように男性更年期に対する認知は低く、男性更年期の可能性を自ら疑ったことのある人や、男性更年期と診断された人はごく一部であるという調査結果もあります。

男性・年代別 更年期障害の可能性 男性・年代別 更年期障害の可能性

出典:厚生労働省「更年期症状・障害に関する意識調査」
基本集計結果(2022年7月26日)

年齢を重ねると、男女ともに心身の不調を「年だから仕方ない」として我慢しがちになります。特に、男性更年期障害の可能性が高まる世代は、女性と同様に仕事で責任ある立場を任されたり、子どもの進学や親の介護などの心配事が多くなったり、さまざまなストレスにさらされやすいタイミングでもあります。さらに、カラダの不調と生活面のストレスが重なると精神的な症状が悪化してしまう可能性もあります。
年齢や性別に関係なく、皆で男性更年期を理解し、知識をもつことは、男性更年期障害の適切な診断・治療へとつながります。

女性の立場からの向き合いかたも考えよう

男性更年期の症状の中には、精神的な症状や性機能に関する症状など、人には言いにくいデリケートなものがあります。周囲の理解が不十分なままだと、体調が悪くても仕事などを休めない、医療機関を受診しづらいという状況が続いてしまいます。

では、パートナーや家族など身近な男性に更年期障害の可能性が疑われるとき、女性側からはどうアプローチするのがよいでしょうか。まずは、更年期のつらさは女性にだけに訪れるものではないということを理解しましょう。そして、適切な検査・治療のために医療機関の受診をさりげなく促してみるのもよいでしょう。
将来、お互い健康で、より充実した生活を送るためにも一緒に考えていきませんか。

吉村先⽣からのメッセージ

やる気が出ない、集中力が続かない、急に汗をかく、のぼせてしまう、体のどこかが痛い、性欲の低下などの症状を訴える男性はいませんか。
内科の病気が潜んでいることもありますが、男性更年期も疑ってみて下さい。
男性ホルモンであるテストステロンが減少し、さまざまな心身の不調が現れてきます。
女性の更年期障害と異なり、男性の場合は年齢に関係なく、いつでも起こる可能性があり、うつ、イライラなどの精神症状がいつまでたっても消えないことがあります。
内科で診てもらうことも大切ですが、一度泌尿器科で相談することをおすすめします。
更年期障害は女性のみならず、男性にも起こることを知っておいてください。

監修医のご紹介

吉村 𣳾典先生吉村 𣳾典先生

吉村 𣳾典先生

Profile

よしむら・やすのり/慶應義塾大学名誉教授 福島県立医科大学副学長
あすか製薬ホールディングス株式会社社外取締役

1975年 慶應義塾大学医学部卒業。米国留学等を経て95年より同大学医学部産婦人科教授、現在は同大学名誉教授。日本産科婦人科学会理事長等、数々の学会理事長を歴任。2012年に女性と子どもの未来を考える一般社団法人「吉村やすのり 生命(いのち)の環境研究所」を設立。第2次~第4次安倍内閣で内閣官房参与として少子化対策・子育て支援を担当。これまで3千人以上の不妊症、5千人以上の分娩など数多くの患者の治療を担当。福島県立大野病院問題の解決、HPVワクチンの公的助成や特定不妊治療費助成制度の確立、周産期医療従事者の待遇改善、出産育児一時金や妊婦健診の公的助成の増額など、わが国の周産期医療の危機を救い、女性の健康力増進に貢献。『生殖医療の未来学―生まれてくる子どものために―』など、生殖医学に関する著書多数。

よしむら・やすのり/慶應義塾大学名誉教授 福島県立医科大学副学長 あすか製薬ホールディングス株式会社社外取締役
1975年 慶應義塾大学医学部卒業。米国留学等を経て95年より同大学医学部産婦人科教授、現在は同大学名誉教授。日本産科婦人科学会理事長等、数々の学会理事長を歴任。2012年に女性と子どもの未来を考える一般社団法人「吉村やすのり 生命(いのち)の環境研究所」を設立。第2次~第4次安倍内閣で内閣官房参与として少子化対策・子育て支援を担当。これまで3千人以上の不妊症、5千人以上の分娩など数多くの患者の治療を担当。福島県立大野病院問題の解決、HPVワクチンの公的助成や特定不妊治療費助成制度の確立、周産期医療従事者の待遇改善、出産育児一時金や妊婦健診の公的助成の増額など、わが国の周産期医療の危機を救い、女性の健康力増進に貢献。『生殖医療の未来学―生まれてくる子どものために―』など、生殖医学に関する著書多数。

男性と女性の更年期障害は
違う点も多いけど、
つらい気持ちを分かち合って
一緒に解決していこう

男性も女性もステキにエイジング! 男性も女性もステキにエイジング!
Keyword
毎日の私にちょっとプラス
Mint+のお役立ちコラム トップへ
PAGE TOP