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「妊娠」はごく自然に訪れるように
思われがちですが、
実はいろいろなタイミングが
重なり合った奇跡の連続によって
もたらされるものです。
そして、女性とそのパートナーの人生を
大きく変える出来事ともいえます。
そろそろ赤ちゃんがほしいと思っている人も、
「いつかは!」と思っている人も、
正しい知識を身につけておきましょう。
女性だけでなく、男性の皆さんにもぜひ知って
おいていただきたい大切なことです。
生命は、女性の「卵子」と男性の「精子」が出会って妊娠することから始まります。ここでは妊娠のしくみについて詳しく説明します。
卵子を含む卵胞は、月経周期に合わせて成長し、直径20mmほどの大きさに育つと卵子として卵巣から放出されます。これを排卵と呼びます。放出された卵子は卵管に取り込まれ、精子との出会いを待ちます。受精しなかった場合の卵子の寿命は、排卵後約24時間といわれています。
性交により射精された精子は腟、子宮頸管(けいかん)、子宮から卵管へ進み、排卵された卵子を待ちます。 通常、1回の射精で1億個以上もの精子が放出されますが、その中で卵管までたどりつけるのはほんのわずかです。射精後の精子の寿命は3日間といわれています。
卵子と精子が出会い、融合することを受精と呼びます。卵子と結びつくことができる精子はたった1つです。1つの精子が卵子に入り込むと、他の精子は入ることができなくなります。受精卵は、細胞分裂をくり返しながら4~6日をかけて卵管から子宮に移動します。
子宮内へ到着した受精卵が7日目位に子宮内膜にもぐりこむことを着床と呼びます。このとき、子宮内膜は受精卵が着床できるように、ふわふわのベッドのように厚くなっています。受精卵ができてからおおよそ12日後に着床が完了し、妊娠が成立します。
その後、順調に受精卵が成長すれば、着床開始後10日前後で妊娠の反応が出ます。
妊娠が成立している時にあらわれる兆候や症状には、次のようなものがあります。
これらの兆候や症状には個人差があるため、あくまでも目安のひとつとして参考にしてみてください。
「妊娠しているかも?」と思ったら、早めに産婦人科を受診して、子宮外妊娠(子宮内膜以外の場所で着床してしまうこと)などの問題が起きていないかを確認することが大切です。
妊娠しているかどうかは、市販の妊娠検査薬でも調べることができます。最近の妊娠検査薬は精度が向上しており、陽性反応が出れば妊娠している可能性が大きいと考えられます。陽性反応が出た場合、早めに産婦人科を受診するようにしましょう。
産婦人科で赤ちゃんの心拍数が確認でき、妊娠と診断されたら(妊娠5~6週目が目安)、自治体の窓口で妊娠届出書を提出し、母子健康手帳(いわゆる母子手帳)を受け取りましょう。
妊娠前の最終月経が始まった日をスタート(0日)として、妊娠期間を計算していきます。
日数、週数は「満〇(日・週)」で数え、月数は「数え」が使われることが一般的です。
なお、医学的に「妊娠〇ヵ月」と表現される場合の「1ヵ月」は、平均的な月経周期である「28日間」と定義されています。たとえば「妊娠1ヵ月」は「妊娠0~3週の終わり」の4週間(28日)を示します。
出産予定日は、「0週0日」から280日後の「40週0日」と決められています。280日は、1ヵ月=28日間の定義で計算すると、10ヵ月に相当します。
月 | 週 | 日 |
---|---|---|
妊娠1ヵ月 | 0週 | 0~6日 |
1週 | 0~6日 | |
2週 | 0~6日 | |
3週 | 0~6日 | |
妊娠2ヵ月 | 4週 | 0~6日 |
… | … |
どこでもらえるの?
母子手帳&マタニティマーク
母子手帳(正式には「母子健康手帳」)とは、母子保健法により各自治体が交付する手帳で、各自治体に妊娠届出書を提出するともらえます。この手帳には、妊娠・出産・産後の経過、就学前までの子どもの発育や発達、予防接種などを記録します。各自治体により多少異なりますが、妊娠・出産・育児のアドバイスや、利用できる制度などが書かれていることもあります。
マタニティマークは、妊婦が身につけて妊婦していることを示すことで、周囲の人々が配慮しやすくなることを目的に作られました。キーホルダー以外にもいろいろな形のものがあり、母子手帳とともに交付されたり、駅で無料配布されています。
妊娠中は、ふだんよりもさらに健康に気をつける必要があります。そこで、ぜひ妊婦健康診査(妊婦健診)を積極的に活用してください。もともと健康に自信がある方でも油断は禁物です。妊娠中に、何らかの病気を発症したり、そのまま症状が進んでしまうと、治療が難しくなる場合もあります。元気な赤ちゃんを安全に迎えるためにもきちんと受診しましょう。
また、妊婦健診は、母子の健康状態をチェックするだけでなく、妊娠・出産・育児に関するさまざまな相談ができる場でもあります。日常生活や食事、その他に気になることがあれば、積極的に医師のアドバイスを受けましょう。
妊婦健診は、妊娠初期~妊娠23週は4週間に1回(計4回)、妊娠24週~妊娠35週は2週間に1回(計6回)、妊娠36週~出産までは週に1回(計4回)、合計14回の受診が目安となります。
健診内容は、妊婦の健康と赤ちゃんの発育状態の確認が基本で、母子健康手帳に記載されている項目(子宮底長・腹囲・血圧・浮腫・尿蛋白・尿糖・体重)については、毎回検査を行います。その他、必要に応じて血液検査、子宮頸がん検診、超音波検査などを行います。
妊婦健診は健康保険の適用外ですが、母子健康手帳とともに配付される「妊婦健康診査受診票」を使うことで、公費による助成※が受けられます。
※具体的な助成内容は、お住まいの市区町村によって異なります。
妊娠中の女性のカラダは、どんどん変化していきます。いつ、どんな変化があらわれるのか、また注意することや出産の時期などを知っておくと、体調を管理しやすくなります。
・妊娠糖尿病
妊娠後期になると、赤ちゃんに優先的に糖分(栄養)が供給されるよう、血糖値を下げるインスリンの働きを弱めるホルモンが胎盤から盛んに分泌されるため、血糖値が上昇することがあります。妊娠中にみられる生理的な現象ですが、血糖値が一定レベルを超えると「妊娠糖尿病」と診断され、食事の管理や治療が必要になるため、血糖値の上昇には注意が必要です。
・妊娠高血圧症候群
妊婦の約20人に1人の割合で起こる、「妊娠高血圧症候群」も注意が必要な疾患です。特に、妊娠34週未満で発症した場合は重症化しやすく、妊婦だけでなく赤ちゃんの成長にも大きな影響を与える可能性があります。
・切迫早産
妊娠22週~37週未満に赤ちゃんが出てきそうになっている状態のことを言います。なるべく長く赤ちゃんにお腹の中で成長してもらうために、出産の時期を延ばす必要があります。下腹部痛が続いたり、規則的かつ頻繁にお腹が張ったり、不正出血などがみられる場合には、切迫早産である可能性があります。産婦人科医の指示のもと、安静にすることが大切です。
これらのリスクを防ぐためにも、妊婦健診をしっかりと受け、問題が見つかったら早めに管理・治療を行うことが重要です。
つわり
吐き気、食欲不振、だるさ、頭痛、気分の落ち込みなど、多くの妊婦を悩ませる「つわり」。原因ははっきりしていませんが、「胎盤から出るホルモンの影響」「本人の体質」「ストレス」など諸説あります。早い方は妊娠5週頃にはじまり、妊娠15週を過ぎるとほとんどの方が軽快するようです。また、脱水とも関係があると考えられているため、こまめな水分補給を心がけましょう。「体重が減り続けている」「症状がひどくてつらい」「水分すらとれない」といった場合は、がまんせず産婦人科医に相談しましょう。
貧血
妊娠中は血液量が増加することで相対的に血液が薄まり、貧血状態になりがちです。分娩時の不測の出血によるリスクを高めないためにも、妊娠前からタンパク質や鉄分を含む食事をバランス良くとり、貧血の予防・改善を心がけましょう。
便秘・痔
妊娠中は、ホルモンや大きくなった子宮の影響で便秘になりがちです。繊維質の多い食事や十分な水分補給を心がけましょう。妊娠中でも使用できる便秘薬もありますので、つらい場合は産婦人科医に相談することをおすすめします。肛門周囲がうっ血し痔になりやすくなります。
赤ちゃんがほしいと思ったとき、おなかの中に宿る未来の赤ちゃんのために、ご自身とパートナーのカラダの状態を見直すことが必要です。妊活の前に、以下のような準備をしましょう。
風疹などの抗体検査
妊娠中に感染すると赤ちゃんの将来に大きな影響を残す風疹ウイルスをはじめ、はしか、水ぼうそう、おたふく風邪などの抗体を持っているかどうか、妊娠前検診を受けてチェックしておきましょう。妊娠後に接種できないワクチンもあるため、感染を心配しながら過ごすことのないように、抗体がない場合には、妊娠前のワクチン接種をおすすめします。また、風疹ワクチンを接種するとその後2ヵ月間は避妊が必要です。
あわせて、妊娠前に治療しておくべき病気にかかっていないかを確認しておくことも重要です。
生活習慣を見直す
1日3食、さまざまな食材を使った栄養バランスの良い食事をとる、適度な運動で心身をリフレッシュして体力アップをめざすなど、日ごろの生活習慣を整えることで、健康なカラダづくりを妊娠前から心がけましょう。
禁煙
喫煙は、流産や早産のリスクを高めるだけでなく、低出生体重児の原因のひとつともいわれています。受動喫煙にも同様のリスクがありますので、喫煙されている方は、ぜひパートナーと一緒に禁煙するようにしましょう。
葉酸をとる
元気な赤ちゃんを産むために、妊娠前から積極的にとりたい栄養素として「葉酸」があります。葉酸は、赤ちゃんの成長や妊婦の貧血予防にかかわる栄養素で、ほうれん草やブロッコリーなどの緑黄色野菜、納豆、いちごなどに多く含まれます。厚生労働省は、妊娠を計画している女性は食事に加えて栄養機能食品(サプリメント)から1日400μg(マイクログラム)のモノグルタミン酸型葉酸を摂取することを推奨しています。
現在の日本では少子化が問題とされる一方で、年間16万件を超える人工妊娠中絶が行われています。実は10代や20代前半などの若い世代だけでなく、40代後半以降の妊娠でも中絶を選択される傾向があり、世代に関係なく避妊は「自分ごと」として正しく知っておきたい情報です。
予期せぬ妊娠で中絶を決断することはカラダと心に大きなダメージを与えることになるでしょう。出産をすると決めた場合も、それまで描いていたライフプランを変更しなくてはならなくなるかもしれません。
妊娠のしくみと避妊について正しく理解して、新しい命を迎えるためのライフプランをパートナーときちんと話し合っておきましょう。
※妊娠数を(中絶数+妊娠数)とし、中絶数/妊娠数で算出
(厚生労働省 平成30年度人口動態統計および
平成30年度衛生行政報告例より作図)
避妊法を選択するときに何よりも大切なのは「効果が高いこと」です。また、使い方や価格なども含めて、自分とパートナーがきちんと正しい方法で実施できるかを考えることも大切です。
避妊法には、お薬を服用する、器具を装着するなど、いろいろな方法があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。違いを理解し、自分のカラダやライフスタイルにあう方法を選択しましょう。
経口避妊薬(OC) | ||
---|---|---|
失敗率※ | 理想的な使用 | 0.3% |
一般的な使用 | 9% | |
主な特徴 | 女性ホルモンが入った錠剤を毎日服用して排卵を抑制する。また、子宮内に精子が入りにくくしたり、子宮内膜を着床しにくい状態にする。医師の処方が必要。 | |
メリット | 女性が自分の意思で使うことができ、正しく服用すれば失敗率が低い。 | |
デメリット | かかっている病気によっては使用できないことがある。副作用が起こることがある。 | |
コンドーム | ||
失敗率※ | 理想的な使用 | 2% |
一般的な使用 | 18% | |
主な特徴 | 男性の性器に装着し、子宮内に精子が入るのを防ぐ。 | |
メリット | 性感染症の予防にも効果がある。 | |
デメリット | 破れたり、外れたりして、避妊に失敗する可能性がある。 | |
IUD(子宮内避妊用具) IUS(子宮内避妊システム) |
||
失敗率※ | 理想的な使用 | IUD 0.6% IUS 0.2% |
一般的な使用 | IUD 0.8% IUS 0.2% |
|
主な特徴 | 産婦人科で子宮内に器具を挿入してもらい、受精卵の着床を防ぐ。 | |
メリット | 一度装着すれば数年間にわたって効果が持続する。 | |
デメリット | 産婦人科医に挿入してもらう必要がある。出産経験のない女性には不向き。 | |
リズム法(オギノ式、基礎体温法など) | ||
失敗率※ | 理想的な使用 | 0.4% |
一般的な使用 | 24% | |
主な特徴 | 月経周期や基礎体温から排卵日を予測し、その時期の性交を避けることで妊娠を防ぐ。 | |
メリット | お薬を服用する、特別な器具を使うなどの手間がない。 | |
デメリット | 排卵の時期はずれることも多く、あくまで予測なので、確実ではない。 |
避妊法 | 失敗率※ | 主な特徴 | メリット | デメリット | |
---|---|---|---|---|---|
理想的な使用 | 一般的な使用 | ||||
経口避妊薬 (OC) |
0.3% | 9% | 女性ホルモンが入った錠剤を毎日服用して排卵を抑制する。また、子宮内に精子が入りにくくしたり、子宮内膜を着床しにくい状態にする。医師の処方が必要。 | 女性が自分の意思で使うことができ、正しく服用すれば失敗率が低い。 | かかっている病気によっては使用できないことがある。副作用が起こることがある。 |
コンドーム | 2% | 18% | 男性の性器に装着し、子宮内に精子が入るのを防ぐ。 | 性感染症の予防にも効果がある。 | 破れたり、外れたりして、避妊に失敗する可能性がある。 |
IUD (子宮内避妊用具) IUS (子宮内避妊システム) |
IUD 0.6% IUS 0.2% |
IUD 0.8% IUS 0.2% |
産婦人科で子宮内に器具を挿入してもらい、受精卵の着床を防ぐ。 | 一度装着すれば数年間にわたって効果が持続する。 | 産婦人科医に挿入してもらう必要がある。出産経験のない女性には不向き。 |
リズム法 (オギノ式、 基礎体温法など) |
0.4% | 24% | 月経周期や基礎体温から排卵日を予測し、その時期の性交を避けることで妊娠を防ぐ。 | お薬を服用する、特別な器具を使うなどの手間がない。 | 排卵の時期はずれることも多く、あくまで予測なので、確実ではない。 |
※その避妊法を1年間使用して避妊に失敗する確率
理想的な使用:各避妊法を正しく続けて使用しているにも関わらず妊娠してしまった確率
一般的な使用:各避妊法を使用しているにも関わらず妊娠してしまった確率
(経口避妊薬については、のみ忘れを含めた場合の失敗率)
(Hatcher,RA et al.:Contraceptive Technology:Twentieth Revised Edition.New York.Ardent Media.2011より改変)
この他にも、「腟外射精で妊娠していないから大丈夫」と思う方もいるかもしれません。しかし、男性任せになってしまうこと、射精の前であっても分泌液の中に少数の精子が含まれていることから、実は効果の高い方法とは言えません。
避妊せずに性交した場合や、コンドームが破れるなど避妊に失敗した場合に用いる避妊法として「緊急避妊」があります。不安な気持ちで月経が来るのを待つのではなく、妊娠を防ぐ最後の手段として使用することができます。
緊急避妊の一般的な方法は、緊急避妊ピルの服用です。
緊急避妊ピルは、アフターピルとも呼ばれ、医療機関でのみ処方されるお薬です。無防備な性交の後、主に72時間(3日)以内に服用します。日本では主に黄体ホルモン剤が使用されています。
なお、排卵日付近(妊娠しやすい時期)の性交による妊娠を緊急避妊ピルで阻止できる確率は8~9割程度です。
他の避妊法に比べると効果は低く、通常の避妊法としては不向きです。
緊急避妊はあくまで最終手段として、きちんと確実な避妊をすることが大切です。
日本では妊娠満22週未満でかつ特別な理由があれば、手術によって胎児を母体の外に出す「人工 妊娠中絶」が法律(母体保護法)で認められています。ただし、人工妊娠中絶は身体的な負担が大きいだけでなく、自分のカラダから新しい命をつむことによる精神的なダメージはとても大きいものです 。