ウイルス性肝炎

ウイルス性肝炎とは、肝臓がウイルスに感染することで炎症が起こる疾患です。
肝炎ウイルスは主に4種類(A、B、C、E型)存在し、それぞれ特徴が異なります。いずれもウイルス感染による自己免疫反応によって肝臓の細胞が障害されます。
これら肝炎ウイルスのほかに、EBウイルス(ヘルペスウイルスの一種で、日本人の多くは抗体を持っています)による感染などでも肝炎になる場合があります。

A型肝炎ウイルス

貝類や海外旅行での飲食によって感染します。日本は衛生環境が良くワクチンもあることから、大流行することはないと考えられています。急性肝炎の原因になりますが、劇症化する症例は少なく、治癒して慢性化することはありません。

A型肝炎ウイルスの治療

慢性化することはなく、ほとんどが自然治癒します。食欲不振などに対するお薬の投与を行うことがあります。
肝臓に負担を与えないように糖類中心の低カロリー食が推奨されています。

B型肝炎ウイルス

輸血や出産、刺青、性交渉、針刺し事故などにより感染します。日本では1986年(昭和61年)にワクチンが導入されたため、若年者の感染は減少しています。また、2016年10月よりユニバーサルワクチネーションが始まったことから今後はさらに感染は減少すると予測されます。出産後、乳児期に感染するとキャリアになり、慢性肝炎、肝硬変、肝がんへと進展する場合があります。
成人で感染した場合は急性肝炎となり、一部は劇症化しますが、大部分は治癒します。しかし、外国由来のウイルス感染ではキャリアになる場合があります。

B型肝炎ウイルス

B型肝炎ウイルスの治療

インターフェロンや核酸アナログ製剤を用いて、ウイルスの活動を抑え、肝臓がさらに障害されることを予防します。現在の治療法では、ウイルスを完全に排除することは困難とされているため、肝硬変や肝がんなどのさらに重い疾患に進展させないことが治療の目標となります。

C型肝炎ウイルス

輸血や血液製剤、刺青により感染します。ワクチンはありません。感染しても肝炎は重症化せず、急性肝炎としての自覚症状がない場合もあります。劇症化は稀です。約30%ではウイルスが排除されますが、約70%はキャリアになり、慢性肝炎に移行します。肝硬変や肝がんに進展する原因のもっとも大きな要因となっています。
(※現在医療現場で使用されている輸血用血液や血液製剤は厳密な検査が行われているため感染は報告されていません)

C型肝炎ウイルス

C型肝炎ウイルスの治療

C型肝炎ウイルスの治療

近年、C型肝炎ウイルスに対するおくすりは急速に進歩しています。医師の指導のもと正しい治療を選択することで経口薬(直接作動型抗ウイルス薬)によってウイルスを90%以上排除できるといわれています。
これらの新しいおくすりにより、ウイルスの完全な排除が治療の目標となります。
なお、経口薬を使用しない場合には、注射薬(インターフェロン)を用いることもあります。

E型肝炎ウイルス

豚、猪、鹿などの動物が保有するウイルスにより人にも感染します。患者は従来は発展途上国に多いと考えられてきましたが、最近では日本でも感染が確認されています。ワクチンもないため、生肉を食べないことが唯一の予防策となります。

E型肝炎ウイルスの治療

慢性化することはなく、ほとんどが自然治癒します。食欲不振などに対するお薬の投与を行うことがあります。

監修:埼玉医科大学 消化器内科・肝臓内科 教授 持田 智 先生

※ここでの情報はあくまで基本の情報であり症状は人それぞれで違う場合もあります。不安な点は主治医、肝臓専門医等に相談してください。